ただの着信音で心臓が跳ねるようになった日

電話が鳴るたびにビクッとしてしまう日常

最近、本当に困っているのが「電話の着信音に過剰反応してしまう」ことです。正直なところ、自宅にいてもスマホが鳴ると、体が反射的に固まってしまう。まるで、音に対して身体が「またか！」と先に反応してしまうんですね。これ、職業病なんでしょうか。司法書士をやっていると、電話の内容は大体が「問題発生」の報せか、「急ぎ」の連絡。たまに嬉しい話もありますが、大抵は胃が重くなる話です。休みの日にまでビクッとしてしまうのは、さすがに自分でもちょっとおかしいんじゃないかと思ってきました。

鳴ってほしくない。けど鳴らないのも不安

電話が鳴れば「嫌な予感」がする。でも、逆に一日中鳴らないとそれはそれで「仕事が来ていないんじゃないか」と不安になる。この矛盾した気持ちに挟まれて、心が休まる瞬間がない。ある日、午前中ずっと電話が鳴らなかった日がありました。その日は気分が晴れるどころか、「今日、何か忘れてる？」「登記の申請漏れとかないよな…？」と不安で集中力が全然保てない。これはもう、電話の鳴る音が仕事のペースメーカーみたいなものになってしまってる証拠ですよね。

「電話が鳴る＝トラブルかクレーム」な感覚

最初はそうでもなかったんです。でも、経験を重ねるほどに「電話が鳴る＝何か問題が起きた」という図式が出来上がってしまいました。例えば、登記の書類に不備があって法務局から問い合わせが来るとか、依頼者から「話が違う」と怒られるとか、急ぎの相続案件で「今すぐ来てほしい」と言われるとか。そんな経験が積み重なってくると、鳴る音そのものがもう警告音にしか聞こえなくなる。昔は着信音を好きな音楽に設定してましたけど、今は無音かデフォルトの「ピリリ…」です。それ以上の刺激はいらない。

静寂もまたプレッシャーになる矛盾

電話が鳴らない日は、確かに静かでありがたい…はずなのに、心のどこかで「なぜ今日は何も来ないんだ？」と不安になってしまう。まるで、爆弾処理班が「静かすぎる…逆に怖い」と呟くシーンみたいな感覚。以前、連休明けにまとめて問い合わせが殺到したことがあって、それがトラウマになっているのかもしれません。静けさは一時的な嵐の前触れにしか思えない。そんな思考に支配されてしまっている自分に、ふとした瞬間に気づいて「なんだかなぁ…」とため息をつく。そういう日々です。

昔は電話なんて平気だったのに

司法書士になりたての頃は、むしろ電話対応は楽しみのひとつでした。「お、誰からだろう」「何か勉強になるかも」とすら思っていたんです。知らないことばかりだったから、どんな電話も新鮮でした。でも、10年以上経った今では、「またアレかも」「面倒な依頼だったらどうしよう」と身構えるようになってしまった。悪い意味で慣れてしまったのか、いい話よりも悪い話の方が印象に残りやすいのか…。昔の自分には戻れそうにありません。

新米時代は、電話＝学びのチャンスだった

新人時代の私は、とにかく吸収したいという気持ちが強くて、電話を取るのもワクワクしていました。上司がいなくても自分で答えて、調べて、メモを取って。失敗して怒られることもありましたけど、それすらも「成長の一歩」として前向きに捉えていた気がします。電話が仕事の入り口だったんですよね。今となっては、その扉の向こうに地雷があるような気持ちで受話器を取っていますが…。

気づけば「着信恐怖症」のような状態に

気づけば、電話が鳴ると一瞬息が止まり、鼓動が速くなるような状態になっていました。スマホも事務所の固定電話も、すべてが「何かの報せ」に聞こえてしまう。まるで、自律神経が勝手に緊急モードに入るような感じです。これはきっと精神的な蓄積が原因なんだろうなと思います。自覚はあっても、仕事を辞めない限りは逃げられない。そんな無力感も抱えています。

職業病というには、ちょっと切ない

「それ、職業病じゃない？」と軽く言われることがあります。確かに、司法書士を長くやっていれば、ある程度はそういう感覚が身につくものかもしれません。でも、それだけで済ませていいのか…というモヤモヤも残ります。単なる仕事の影響だけじゃなく、積もり積もった神経のすり減り。これを「病」と呼ぶのは簡単だけど、当人にとってはもう少し根が深い話だったりします。

「また何か起きたのか？」と身構えてしまう

電話の第一声が「すみません、ちょっと急ぎで…」だったりすると、それだけで「ああ、また何かあったのか」と瞬時に頭が回転し始めます。自然と体が警戒モードになる。しかも、こちらがどれだけ丁寧にやっていても、相手の怒りや不満がぶつけられることもある。だからこそ、電話が鳴ると条件反射で構えてしまうようになる。まるで、犬の吠え声に反応してしまうトラウマ持ちみたいな感じです。

登記の締切・相続の混乱・依頼人の苛立ち

「登記が間に合わないかもしれません」「相続人の間で意見が割れてしまって」など、電話の内容は大抵、すぐに判断を迫られるものばかりです。以前、ある相続案件で親族がケンカになってしまい、連日のように「どうなってますか？」と電話が来たことがありました。もうその番号が表示されるだけで、憂鬱になったのを覚えています。対応は業務の一部と頭ではわかっていても、心はついてこないことが多いんです。

電話が悪いんじゃない、積もった疲労だ

そもそも、電話が悪いわけじゃない。問題は、自分が処理しきれていないこと、抱え込みすぎていることにある。疲労が蓄積していて、心の余裕がないから、音にまで反応してしまう。そう分かっていても、じゃあどうやって休めばいいのか。休んでいる間にも電話は鳴るし、誰かが代わりに取ってくれるわけじゃない。結局、自分が受けるしかない。そんな状況に、ただただうんざりしてしまうのです。

周囲にはなかなか理解されない

この感覚、なかなか人には理解されません。「電話が怖い？ そんな大げさな」と笑われることもあります。でも、日々、重たい連絡や感情を背負っていると、ただの着信音が「戦闘開始の合図」にすら聞こえるようになるんです。職場でそんな話をしても「また愚痴ってる」と思われるのがオチ。だからこそ、余計に孤独を感じてしまうんです。

「そんなに大変なの？」と軽く言われて

「そんなに大変なの？」って聞かれるたびに、「そうだよ！」と叫びたくなります。どんな仕事も大変な面はあるとは思います。でも、司法書士という職業は、法律と人間関係と時間に常に追われる職業です。トラブル処理係でもあるし、期限との戦いでもある。だからこそ、電話一本が「時限爆弾」に見えてしまうことだってあるんです。

誰にも言えずにひとりで背負う感覚

事務員さんに言っても気を遣わせるだけだし、友人には「考えすぎ」と言われて終わる。そうやって、どんどん言葉を飲み込んでいくうちに、「まあ、こんなもんだよな」と諦めるようになってしまいました。けれど、それでも心のどこかでは、誰かに「わかるよ」と言ってほしい自分もいます。この文章も、そんな自分の小さな声なのかもしれません。

どうやってこの電話地獄と向き合うか

完全に逃げることはできない。だったら、少しでもマシな方法を探していくしかありません。最近は、自分なりに電話対応のストレスを減らす工夫を試しています。完璧ではないけれど、多少は心が軽くなった気がしています。

電話を“鳴らさない”工夫はできるのか

まず取り組んだのは、「そもそも電話を鳴らさせない」工夫でした。これは賛否あると思いますが、業務案内に「可能な限りメールでのご連絡をお願いします」と一文加えました。意外と多くの依頼者がメールで済ませてくれるようになったのです。急ぎの案件は電話が必要ですが、それでも「なんでもかんでも電話」の状況からは少し解放されました。

メールに誘導する案内文を作ってみた

メールでのやりとりに誘導するため、テンプレート的な案内文を事務所のホームページに掲載しました。「登記の進捗確認などは、なるべくメールでお願いいたします」と書くだけで、電話の件数が少し減りました。最初は抵抗感がありましたが、思い切ってやってみてよかったと思っています。

事務員さんに頼みすぎて申し訳なくなる

とはいえ、電話はゼロにはなりません。結局、私が外出している間などは、事務員さんに対応をお願いすることになります。「また負担をかけてるな…」という申し訳なさと、「でも、助かる…」という感謝が混ざり合って、なんとも言えない気持ちになります。少人数の事務所って、こういう気持ちを毎日噛みしめる場所でもあるんですよね。

それでも鳴るものは鳴る

どれだけ工夫しても、電話は鳴る。完全に防げるものではありません。だったら、せめて「受け止め方」を変えていくしかないんじゃないかと最近は思い始めています。簡単じゃないけど、今のところはそれが現実的な道です。

受話器を取るときの心構えを変えてみた

受話器を取るときに、まず深呼吸するようにしました。心の中で「これはただの音だ」と唱える。そんな簡単なことでも、少しだけ気持ちが落ち着く気がするから不思議です。恐怖の正体は“予測できないこと”にあると聞いたことがあります。だからこそ、「どうせ何か言われる」と思って臨んだ方が、ダメージは少ない。そんな風に自分を訓練しています。

深呼吸と覚悟と、少しのあきらめ

最終的には「どうせ今日も電話は鳴るし、何かしら起きる」と思っておくことが、一番心の防御になるのかもしれません。完全に防ぐのは無理でも、「動じない準備」はできる。だから私は、今日も深呼吸してから受話器を取るのです。そして思います。「今日も一日、なんとか乗り切れますように」と。