連休明け、スマホに残る不在着信の恐怖
休み明けの朝、スマホの通知音で目が覚める。カレンダーは火曜日。昨日までの連休が夢だったように現実が襲ってくる。画面には「不在着信3件」「留守番電話2件」。それだけで、心拍数が上がり、布団の中で固まってしまう。何かトラブルがあったのではないか。いや、きっとあったのだ。そう思い込むのは、司法書士という職業病かもしれない。
3件の着信、2件の留守電、それだけで胃が痛い
着信履歴の数字は、ただの数字ではない。1件1件に“問題の種”が詰まっているようで、確認ボタンを押す指が震える。経験上、留守電が2件以上あるときは、だいたい何かしら面倒なことが起きている。実際、以前は登記申請の書類にミスがあり、連休中に補正期限を過ぎかけていたこともあった。あの時も、連休明けの朝だった。
「至急ご連絡ください」——この一言に詰まった不安
「至急ご連絡ください」という言葉ほど、曖昧でいて破壊力のある言葉はない。用件を具体的に伝えず、急ぎだけを強調されると、こちらの頭は勝手に最悪の事態を想像し始める。依頼人が怒っているのか、法務局からの指摘か、それとも…考えれば考えるほど不安になる。何があったのか知る前から、すでに疲れてしまうのだ。
たった一言、でも地雷のような破壊力
「留守電、聴くのが怖い」なんて、他の職業の人には笑われるかもしれない。でも我々にとっては、たった一言がその日一日の空気を変えてしまう。予定していた業務がすべて後回しになり、謝罪や対応に追われることもある。いっそ留守電機能を切ってしまおうか、と何度も思ったが、それすらできない現実がある。
連休前に仕込んだ“爆弾”が頭をよぎる
「あれ、ちゃんと送ったっけ?」「あのメール、返信来てなかったな」——連休中は意識して忘れようとしていたことが、留守電通知を見た瞬間に雪崩のように押し寄せてくる。終わっていたはずのタスクが、未処理の地雷のように思えてくる。心が休まるはずの連休が、むしろ負債を増やして帰ってくるような感覚だ。
あの未提出書類、届いてなかったら…?
連休直前、慌ただしく郵送した書類。投函した時は「これでよし」と思ったのに、いざ休み明けになると「本当に届いたか?」「中身にミスはなかったか?」と不安になる。郵便事故もあるし、こちらの確認不足もある。昔、書類の中に誤ってメモ用の紙を同封してしまい、依頼人から怒りの電話があったことを思い出す。
「先に処理しておけばよかった」と思っても遅い
どんなに後悔しても、過去は変えられない。「連休前に無理してでも対応すべきだった」と思うことが多すぎて、今では連休が来るたびに不安しかない。事前に動いてもトラブルは防げないし、何かしら出てくる。結果、「どうせ怒られるなら、いっそ休まないほうが楽だった」と考えるようになってしまう。
事務員さんに電話チェックをお願いするのも怖い
ありがたいことに事務員さんが1人いてくれる。でも、朝一番で「先生、留守電が…」と顔をしかめて報告に来られると、その時点で気分が地に落ちる。彼女には悪気がないのはわかっている。でも、「◯◯さんから怒ってましたよ」という言葉が、心にズシンと響く。まだ聴いていないのに、もうダメージを負っている。
「◯◯さんから怒ってましたよ」と言われた時の絶望
その一言がどれだけ人の心を折るか、言った本人は気づかないものだ。もちろん悪気があって言っているわけではない。けれど、すでに疲れている身には、その一言が重い。「またか」「何がいけなかったんだ」と自問自答を始める。別に重大なミスがあったわけでもないのに、怒られることが前提になっている現状がつらい。
“良かれと思って”は通じない、それがこの世界
「ちゃんと対応したつもりだった」「前回もこのやり方だった」——そう思っていても、相手にとっては納得いかないことがある。良かれと思ってやったことが裏目に出る。この仕事は、とにかく「説明」と「確認」の連続。だが、それでも行き違いや誤解は防ぎきれない。人が相手である以上、正解などないのかもしれない。
留守電の内容を聞く前にトイレに駆け込む
「ああ…聞くの怖いな」と思った瞬間、胃がキリキリと痛み出す。お腹の調子も悪くなり、トイレに駆け込むのは恒例行事。身体は正直だ。まだ内容を知らない段階でここまで反応するのだから、もはや条件反射に近い。これはストレスが慢性化している証拠でもある。
気持ちを整えても、内容は変わらない
深呼吸して気持ちを整えても、留守電の内容はすでに録音されている。どんなに冷静になっても、再生ボタンを押す瞬間の恐怖は消えない。結果、スマホを持ったままウロウロ歩き回ったり、意味のない片付けを始めたりしてしまう。聴くしかないと分かっていながら、先延ばしする自分が情けなくもある。
それでもやっていくしかない、今日もまた
どれだけ嫌でも、逃げられないのがこの仕事。クライアントの信頼があるからこそ、連絡がくる。トラブルが起きるのも、こちらに期待しているからこそ。そう思うようにして、スマホを耳にあてる。1件目の留守電を再生しながら、「これも仕事のうち」と自分に言い聞かせる。そんな朝が、また始まった。