なぜこの仕事を選んだのか、今さら振り返る夜
時々ふと思うんです。「なんで司法書士になったんだっけ?」って。忙しさに追われる日々の中で、初心を思い出すことなんてほとんどありません。でもふと事務所のソファに座って、静かな夜に一人になると、過去の自分がぼんやり浮かび上がってくる。あのとき何を考えていたのか、何を信じていたのか。今とはまるで違う景色がそこにはありました。
きっかけは些細なことだった
大学時代、特に夢もなく、ただ法律の講義が面白かった。それだけの理由でこの道に入ったようなもんです。周囲には「志が高くて真面目だね」なんて言われたけど、そんな立派なもんじゃない。司法書士という仕事が、なんとなく「堅実そう」で「独立できる」という響きに惹かれただけ。今思えば、もう少し現実を知ってから決めてもよかったなと思うこともあります。
法律に興味があった…はず
最初は確かに六法に触れるのが楽しかった。民法の条文を読み解いて、頭の中でパズルのように組み立てていく感覚。それが快感でした。でも、それが「仕事」になった瞬間、責任やプレッシャーに変わっていく。好きだったものが、いつしか重荷になる。そんな感覚、ありませんか?
自営業に憧れていたあの頃
自由に働けるっていう幻想、ありますよね?私もそうでした。朝ゆっくり起きて、好きなときに働いて…なんて思ってたけど、実際はその真逆。独立したら全部自分でやらなきゃいけない。休日も仕事のことが頭から離れない。こんなに「自由じゃない自由」があるとは、思ってもみませんでした。
事務所の運営は楽じゃない
この仕事、ただでさえ業務の幅が広いのに、経営まで抱えると心が擦り切れます。田舎でやってると、集客も人材確保も簡単じゃない。事務所を開け続けるために、ひとつひとつ手作業で積み重ねていくような感覚です。コンビニでコーヒーを買って帰る時間が、唯一の「仕事じゃない時間」だったりします。
スタッフ一人、経営も実務も自分で
事務員さんを一人雇ってはいますが、実質はほぼワンオペ。登記のチェックも郵送手配も電話対応も、気づけば全部自分でやってる。昼休憩に一人でカップ麺をすする時、なんとも言えない孤独が胸に来る。誰かに「大変ですね」って言われたいわけじゃない。でも、誰にも気づかれないのは、やっぱり寂しいです。
事務員との気まずい沈黙
特に会話があるわけじゃないけど、静かな事務所に二人きりだと、ちょっと気を遣います。雑談を振っても、返事がそっけなかったりして、あ、今タイミング悪かったかな…って余計に気を使ってしまう。こういうの、経営者としては本当は堂々としていた方がいいんでしょうけど、どうにも小心者でして。
誰にも任せられない、という不自由
結局、自分でやるのが一番確実なんですよね。人に任せてミスが出るくらいなら、自分で夜中に作業してしまう方がマシだと感じてしまう。でもそれって、自分の首を絞めてるだけだってわかってはいるんです。でも、任せる勇気が出ない。それが今の自分の限界です。
依頼人との距離感に悩む日々
登記は感情が絡まないと思われがちですが、そんなことはありません。相続や離婚、家族の問題が関係する依頼も多く、こちらまで引きずられることもあります。依頼人の前では冷静でいなきゃと思いつつ、帰りの車でどっと疲れが押し寄せてきて、何度ため息をついたかわかりません。
感情移入しすぎて疲弊する
「先生、もうこれで安心できますか?」と聞かれると、つい「大丈夫ですよ」と言ってしまう。でも、内心は「まだ登記官がどう判断するかわからないのに…」と不安でいっぱい。依頼人の不安を受け止めるのも仕事ですが、それに応えることが自分の不安になる。それが一番つらいです。
ドライに割り切るのが下手な性格
もっと割り切ってやれたらいいんでしょうけど、性格的にできないんです。泣いてる依頼人に対して「それは制度上ムリです」と冷たく言い放つことができない。優しさなのか、弱さなのか、自分でもよくわからなくなります。でも、そんな自分だからこそ、この仕事を続けている気もします。
モテない司法書士のぼやき
「先生ってモテそうですね」なんて言われたこと、一度もありません。そもそも、日々の仕事に追われて、異性との接点がないんです。出会い系アプリを開いたこともありますが、プロフィールの職業に「司法書士」と書いても、誰もピンと来ないんですよね。
「先生」なのに恋愛では平社員以下
依頼人からは「先生」と呼ばれても、プライベートでは名前すら覚えてもらえない。「あー、あのなんとか士の人ね」くらいの扱いです。スーツを着ていても、疲れた顔では魅力も何もない。気づけばもう何年もデートなんてしていません。もうちょっと普通の人生、送れると思ってたんですけどね…。
休日は事務所とコンビニの往復だけ
休みの日くらいどこかに出かければいいのに、気力が湧かない。家にいても落ち着かず、気づけば事務所に来て書類の整理をしている。コンビニでサンドイッチを買って、駐車場で一人で食べてるとき、なんともいえない虚しさを感じます。「誰かに会いたい」と思っても、連絡する相手が思い浮かばないんです。
司法書士である前に、一人の人間として
どれだけ「先生」と呼ばれても、悩んだり傷ついたりする自分は変わらない。法律の世界で生きていても、人間関係の不器用さには勝てない。愚痴ばかり言ってしまう日もあります。でも、そうやって今日も仕事を終えられたなら、それで十分じゃないかと、少しだけ自分を褒めてあげたいのです。