年末調整の季節が来ると気が重くなる理由
年末が近づくと、どうしても気が重くなる。年末調整の時期だ。毎年のことなのに慣れることはなく、書類を見ただけで頭が痛くなる。司法書士という肩書きがある以上、税金関係にも詳しいと思われがちだが、実のところ年末調整は専門外。なのに、「それくらいできるでしょ?」という空気が漂うのがつらい。加えて、年末にかけては登記の仕事も詰まり気味。あれもこれもやらなきゃと焦るだけで、結局夜中に書類を見つめてため息をつく羽目になる。
本業と無関係な事務作業に追われる虚しさ
年末調整の作業は、登記や法律とは全く関係ない。正直、司法書士の資格を持っている意味がここでは全く生かされない。給与計算、保険料控除、源泉徴収の調整……どれもこれも「なんとなくやってきた」知識で回しているが、自信はない。たまに事務員に「これどうすればいいですか?」と聞かれても、こっちが聞きたいくらいだと思う時がある。そんな日々が続くと、自分は何のために司法書士になったんだっけ、とふと考えてしまう。
税務署の用語がやたら難解なのも原因か
とにかく言葉が難しい。たとえば「給与所得控除後の金額」って何?とか、「乙欄・甲欄」とか、漢字が並ぶだけで拒否反応が出てしまう。税務署から届く通知や書類も、読み解くだけで時間がかかる。専門の税理士さんならスラスラできるのかもしれないが、こちとら年に一度のイベントだ。毎年リセットされてしまって、去年の記憶が役に立たない。だからこそ余計にしんどく感じるのだ。
事務員一人の事務所では逃げ場がない
うちは事務員が一人しかいない。これがありがたい反面、年末調整の時期は二人でパニック状態になる。どちらかが詳しければまだいいが、結局ふたりで「うーん、どうだったっけ?」と首をひねりながら進めることになる。大きな事務所なら総務や経理の部署があるのかもしれない。だが地方の小さな司法書士事務所では、そういう余裕はない。逃げ場がないからこそ、自分でやるしかないというプレッシャーがのしかかる。
結局、最後は自分でやるしかない現実
相談できる相手がいない。ネットで調べても情報が古かったりバラバラだったりで、かえって混乱する。税務署に電話してもつながらないし、ようやくつながったかと思えば「それは税理士さんに相談を」と言われる。だったら最初から頼んだ方が早いのかもしれないが、こんな小さな事務所に外注の余裕はない。結局、夜な夜な資料とにらめっこしながら、細かい数字を電卓で何度も叩いている自分がいる。
年末調整が精神的にこたえる瞬間
年末調整は、ただの事務作業というだけでなく、精神的にもじわじわと効いてくる。特に、「これで合ってるのか?」という不安が拭えないまま作業を進めなければならないのがストレスだ。ミスすれば従業員の税金に影響が出るし、なにより信用問題にもなる。だから慎重にならざるを得ないのだが、その慎重さがまた負担を増やす。逃げられない緊張感がずっと続くのだ。
封筒を開けるだけでため息が出る
毎年11月になると、税務署からの封筒が届く。開ける前から「またか…」とため息が出る。封筒の厚みを感じた時点で、今年も例のアレか、とわかってしまう。開封しても中身は昨年と似たような書類なのに、やる気は一向にわいてこない。書類の束を見るだけで、もう気力が削られていく。結局、机の上に積んで数日放置してから、ようやく重い腰を上げるのが毎年の恒例になっている。
ちょっとしたミスが取り返しのつかない恐怖に
記入ミスや控除の間違いがあると、従業員にとっては給与や還付額に直結する問題になる。これが本当に怖い。一度、生命保険料控除の金額を打ち間違えて、事務員に謝らなければならなかったことがある。大事にはならなかったが、あのときの冷や汗は忘れられない。ミスがあれば訂正申告を出さなければならないし、手間も信用も失ってしまう。だからこそ、「ちょっとぐらい…」と思っても気を抜けない。
専門家なのに無力感を覚える瞬間
司法書士という資格を持っていても、年末調整にはあまり役に立たない。税金のこととなると、急に自信がなくなってしまう。普段は依頼人に堂々と説明しているのに、自分のことでモタモタしているのが情けない。周囲からは「先生だからこういうのも得意でしょ」と言われがちだが、実情は真逆。わからないことだらけで、ただただ不安と格闘している。資格のプライドが傷つく瞬間でもある。
登記の知識は役に立たない年末調整の世界
登記や不動産、相続などの知識が豊富でも、年末調整の作業にはまったく応用できない。似たような法律用語も出てくるが、それぞれの意味合いがまるで違う。たとえば「控除」ひとつとっても、税の文脈になると勝手が違う。だからといって放置はできないし、誰かが代わってくれるわけでもない。この「知っているようで知らない」感じが、無力感を生むのだ。
司法書士だからって全部できると思われてる
一番困るのは、周囲の期待とのギャップだ。「先生なんだからできるでしょ?」という言葉は、ありがたいようで実はプレッシャーになる。たとえば知人に「年末調整ってどうやるの?」と軽く聞かれても、内心ドキッとする。こちらも手探りでやっている身だから、簡単に説明できる自信がない。なのに、答えられないと「え、意外」と言われてしまう。専門職であることが、時に重荷になる瞬間だ。
せめてこれだけはラクにしてほしい
年末調整がつらいのは、内容の難しさだけでなく、手続きの煩雑さにも原因がある。紙の書類、電子申告、提出期限、控除証明書の添付……どれも中途半端に手間がかかる。せめて、もっとシンプルに、直感的にできる仕組みが整ってほしいと願う。年末はただでさえ慌ただしいのだから、余計なストレスを減らしてくれたら、どれほど助かるか。
ネット提出の壁とマイナポータルの複雑さ
電子申告が主流になってきたとはいえ、マイナポータルやe-Taxの操作はわかりづらい。ログインIDやパスワード、マイナンバーカードの読み取りなど、ひとつひとつの手順でつまずいてしまう。毎年「去年どうやったっけ?」と手探りで進めるのが現状だ。入力画面も親切とは言えず、書類のどこを見て何を入力するのか迷うことも多い。結局、紙でやったほうが早いんじゃないかという気分になってしまう。
書式変更のお知らせに気づかない地獄
年末調整のたびに、書式が微妙に変わっていることがある。だがそのお知らせに気づかないまま、昨年の書式で書類を作ってしまい、あとで全部やり直しになることも。そうなると時間だけでなく精神的にもダメージが大きい。お知らせが届いていても、日々の業務に追われて見逃すのが現実。自分の責任と言われればそれまでだが、せめて大事な変更点はもっと目立つように通知してほしいものだ。
愚痴を言いながらも続ける理由
毎年「もう嫌だ」と思いつつ、年末調整をやめるわけにはいかない。事務員が安心して働けるように、最低限の責任は果たさなければならないし、自分の事務所を守るためにも避けては通れない作業だ。確かにしんどい。でも、愚痴を言いながらも続けることで、少しは気持ちがラクになる。そうやってやり過ごすしかないのだ。
小さな事務所だからこそ見える責任の重さ
職員が一人しかいない小さな事務所では、所長である自分が何でもやるしかない。面倒な作業も、見逃せない責任もすべて自分の肩にかかってくる。それがつらい一方で、この小さなチームを守らなければという思いも強くなる。事務員の生活を守るのも、依頼人の信頼を裏切らないのも、結局は自分次第なのだと思うと、逃げられない重圧を感じる。でも、その重さこそが仕事の本質なのかもしれない。
誰も代わってくれないなら、せめて笑い話に
どうせ誰も代わってくれないなら、いっそ笑い話にしてやろうと思うこともある。「今年もやらかしたなあ」と笑って言えるようになれば、少しは気が楽になる。何年か後には、この苦労も「そんなこともあったな」と語れるのだろうか。そう信じて、今日もまた、書類と格闘する夜が始まる。