登記完了通知より欲しいのは人の気配

登記完了通知より欲しいのは人の気配

忙しさの先にある静けさがつらい夜

一日中バタバタと動いて、ようやく事務所のシャッターを閉めると、急に音が消える。あの瞬間が苦手だ。世間は「静けさは癒し」と言うが、司法書士の「静けさ」は違う。あれは「空っぽ」だ。誰にも話しかけられず、誰も待っていない。ふと立ち止まると、自分が機械のように働いていたことに気づく。人の温もりを感じる余地がない。そんな夜にLINEのひとつでも来れば、どれほど心がほぐれるだろうか。

事務所を出ると誰にも会わない

自宅と事務所の往復は、都会のそれとは違って、誰かにばったり会うこともほとんどない。地方に事務所を構えていると、便利さと引き換えに「人と出会う偶然」が極端に減る。事務員も先に帰っているし、帰り道にはコンビニすらない。何か話したくても話せない。スーパーで「袋いりますか?」と聞かれる、その一言が今日初めての“会話”だったこともある。これが日常になると、気づかないうちに心がすり減っていく。

スマホを見ても通知は業務連絡ばかり

ポケットの中でスマホが震えるたび、期待してしまう。「もしかして誰かが飲みに誘ってくれた?」…そんなわけがない。ほとんどはクライアントからの書類確認や、役所からのメール通知。LINEのアイコンが開かれることはめったにない。グループLINEで既読スルーされるのにも慣れた。通知音に喜びを感じなくなってから、ずいぶん経った。業務連絡は大事だ。だけど、人として必要なのは、それだけじゃない。

あの人からの一言LINEが欲しくなる理由

以前、たまたま仲良くなった女性から「お疲れさま」と一言LINEが届いた日があった。たった一文。でも、その夜は妙に眠りが深かった。そのメッセージがあっただけで、自分が誰かに気にされている気がした。司法書士という職業は、感謝されることがあっても、関係が続くことは少ない。仕事が終われば“関係も完了”。だからこそ、何気ないやりとりが特別になる。登記完了通知よりも、心に残るのはその一言なのだ。

登記完了通知が唯一の会話だった日

ある日、朝から登記申請の処理に追われ、電話対応に押され、昼飯もコンビニのおにぎり一個で済ませて、ようやくパソコンの前に座った時に、「登記完了」の通知が届いた。それが、その日唯一の“誰かからのメッセージ”だった。人間として扱われていない気がして、急にむなしくなった。仕事はうまく回っている。けれど、感情は空っぽだった。

「完了しました」の通知に空しさを感じる

「完了しました」「受領されました」…こんな無機質な言葉が、日々の成果を示す通知となっている。それが私の仕事の結果だし、トラブルなく進んでいる証でもある。でも、それが唯一の“返事”だと思うと悲しくなる。成果は確認できても、誰も「よく頑張ったね」とは言ってくれない。役所からの通知で喜ぶ年齢でもない。それよりも、誰かの“生きた言葉”が欲しかった。

誰かと喜びを分かち合いたい気持ち

学生時代、野球部で試合に勝ったときは、みんなで抱き合って喜んだ。たとえ打てなくても、チームが勝てば自然と笑顔になれた。いまは違う。登記が無事終わっても、自分一人が事務所で「よし」と言うだけだ。分かち合う相手がいない勝利ほど、むなしいものはない。「この案件終わったら焼き鳥行こうか」なんて言える相手が一人でもいたら、どんなに違っただろう。

成果を語る相手がいないという現実

何をどれだけ片づけたところで、話す相手がいなければ、すべて“通過点”になってしまう。自分で完結させ、自分で片づける。その繰り返しに慣れてしまったから、気づけば感情の起伏が少なくなっていた。お祝いすることも、愚痴をこぼすことも減っていくと、人間味まで削れていくように思える。LINEの通知一つでさえ、感情を取り戻すきっかけになることがあるのだ。

モテない男のLINE未読問題

誰かからLINEが来るかもしれない、という期待を捨てきれずに、スマホをつい開いてしまう癖がある。でも、画面には「新着なし」。そんな日々が続くと、通知音にすら反応しなくなる。「そもそも誰かとつながっていたい」と思うことが間違いなんじゃないか、とさえ考える。でも、やっぱり、ちょっとだけ誰かを待っている。

期待するだけ損なのに開いてしまう

モテない歴も長くなれば、LINEの期待値も下がってくる。だけど、飲み会のあとや誰かの誕生日のあと、ふと「今日は何か来てるかも」と思ってしまう。たいていは通知ゼロ。未読すらない。たまに来たと思えば、「〇〇さんのLINE登録キャンペーン」だったりする。分かってる。期待するほうが悪い。でも、それでも開いてしまうのが人間だ。

スタンプひとつに救われる夜もある

昔、気になる女性におつかれスタンプを送ったら、数時間後に「ありがとー」とだけ返ってきた。それだけのやりとりなのに、その夜は胸が温かかった。たった一個のスタンプ、たった一言の返事。それだけで、その日は少し違う日になる。司法書士として、誰かの人生を支えていても、自分の心はスタンプ一つで支えられているんだな、と思った夜だった。

野球部時代の仲間のグループLINEがつらい

グループLINEに久しぶりに参加したら、結婚報告や子どもの写真、キャンプの話題が飛び交っていた。自分だけが違う世界にいるような気がした。「まだ独身かよ」と冗談半分でいじられたあと、通知が止まった。たぶんみんな、気を遣って話題を変えたんだろう。それが逆に、余計に刺さった。既読にするだけで、返事はできなかった。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓