カレンダーに書かれたのは全部他人の予定だった日

カレンダーに書かれたのは全部他人の予定だった日

カレンダーに書かれたのは全部他人の予定だった日

忙しいだけの毎日と空白のカレンダー

誰かの予定に追われる日々

朝から晩まで「予定」で埋まっているのに

それは全部「自分以外」のためのものだった

僕のデスクの上には、いつも分厚いカレンダーが置いてある。司法書士という仕事柄、登記や相続、成年後見といった予定がぎっしりと書き込まれるのは日常だ。だがある日、ふと気がついた。色とりどりに記された予定。それらはすべて「誰か」のものだった。

名前だけが躍る依頼主たちの予定

自分の時間がどこにもないことに気づく瞬間

全ページに、他人の名前がある。なのに、「自分の名前」がひとつもない。まるで「カツオの夏休みの宿題」を手伝わされる波平のように、終わらない作業だけが延々と続く。僕はただの事務処理機械なのかもしれない。

依頼人の予定にひそむ違和感

サトウさんが見つけたカレンダーの妙

消されていた一行と書き直された日付

予定表に記された「名義変更」のワナ

「先生、これ……なんか変じゃありません?」
サトウさんが指さしたのは、再来週の金曜日に書かれた「名義変更」。ただの予定の一つだと思っていたが、赤線で一度消され、再び書き直されていた。しかも、日付は本来の死亡日と一致していない。これは立派な虚偽登記だ。

事件の始まりは一本の電話だった

深夜の電話と震える声

カレンダーを握りしめたままの遺体

予定に取り残された被害者の空白

「すみません、兄が……死んでいたんです。名義が変わっていて、家が、家が……」
その声は、まるで誰にも相談できずに震えている子供のようだった。遺体が発見された現場には、「登記完了」と書かれた紙片が握られていたという。どこまでも皮肉な話だ。予定通りに、殺された。

司法書士シンドウの地味すぎる推理

書類の矛盾から読み解く真実

「やれやれ、、、」何でこうなるんだか

手続きミスが暴いた本当の動機

登記原因証明情報の提出日と、死亡診断書の日付が矛盾していた。筆跡も本人のものではない。「やれやれ、、、」とため息をつきながら、事務所の棚から古い委任状を引っ張り出す。そこには、依頼人の弟の名前が、うっすらと重なっていた。

カレンダーの余白に書かれた小さな未来

サトウさんが記した一行のメッセージ

はじめて書かれた「シンドウの予定」

それは誰のためでもない自分自身のために

「先生、来週の金曜、空けといてください」
「……何かあるのか?」
「はい。スリランカカレー、予約しました」
カレンダーに、自分の名前が書かれたのは何年ぶりだろう。小さな字で「スリランカカレー(シンドウ)」と記されていた。予定が他人のものばかりだった日々に、ぽつんと現れた一つの“私”の予定。それはきっと、人生の“再登記”だった。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓