開業10年、恋愛ブランクも10年。

開業10年、恋愛ブランクも10年。

仕事だけが積み上がっていく日々

司法書士として独立してから10年が経ちました。気づけば節目の年。自分で選んだ道とはいえ、10年という時間の重みはなかなかに骨に沁みます。案件数は増えたし、手続きの流れも板についた。けれど、その10年で積み上がったのは「仕事」ばかりで、人との繋がりや心の潤いはどこかに置き忘れてきた気がします。恋愛?ああ、そんなの…というのが正直な気持ちです。

気がつけば開業10年という節目

地元で開業して、最初の3年くらいはがむしゃらに働きました。集客も大変だったし、事務所の経費もプレッシャーでした。でも5年、8年と経つにつれ、だんだんと仕事は安定していきました。10年を迎えた今、事務所の看板にも重みが出てきた気がします。けれど、その節目に立って、ふと「で、俺は何を残してきたんだろう」と考えるのです。

「おめでとう」より「お疲れさま」が染みる

10周年を誰かに祝ってもらったわけではありません。祝いの花もなければ、記念パーティもありませんでした。唯一、「あれ?もう10年なんだ、すごいね」と言ってくれたのは、隣の行政書士の先生だけ。正直「おめでとう」よりも「お疲れさま」のほうが、心に優しかったです。疲れてるんですよ、実際。見えない戦いを10年も続けてきたわけですから。

恋愛はどこで止まってしまったのか

最後に誰かとちゃんと付き合ったのは、開業する前でした。独立を機に距離ができて、別れてしまったのが最後。そこからずっと、「今は仕事が忙しいから」と言い訳して過ごしてきました。でも、ふとスマホのアルバムを見返すと、そこには誰も写っていない空白の時間が続いているんですよね。

10年前のLINE履歴が最後の証人

ある日、ふと思い立って昔のLINEを遡ってみました。最後の「元カノ」とのやり取りは、10年前。「お互い頑張ろうね」で終わっていました。それが、僕の恋愛の終点。未読も既読もない、止まったままの履歴が、僕の“あの頃”を証明していました。そこから再スタートを切ることもなく、ただただ時間だけが流れていったのです。

恋より仕事が優先…だったのか?

当時は「仕事が忙しくて、恋愛どころじゃない」と本気で思っていました。でも今振り返ると、忙しいからではなく、逃げていたんじゃないかと思うのです。誰かと向き合うことが面倒で、怖くて、だからこそ“仕事”を理由にしていた。恋愛を後回しにしたつもりが、気づけば「永遠に未着手」の状態でした。

「今は忙しいから」の先延ばし癖

開業したばかりの頃は、朝から夜まで動きっぱなしで、確かに恋愛どころではなかった。でも、少し余裕が出てきた頃も、誘いを断り続けてきたのは自分でした。「今はタイミングじゃない」「もうちょっと落ち着いたら」そんな言葉を繰り返して10年。いつが“ちょうどいいタイミング”なんて、きっと一生来ないのかもしれません。

気づいたら予定表が全部「業務」

スケジュール帳を見ても、書いてあるのは「登記締切」「お客様訪問」「法務局」…そんな予定ばかり。プライベートの予定なんて皆無です。誰かと食事に行くこともなければ、趣味の時間も取れない。自分の人生が「ただの職務記録」になっていることに気づいたとき、ゾッとしました。

同業者と話しても、恋愛の話題は出ない

司法書士同士の会合でも、恋愛や家庭の話になることはあまりありません。既婚者は子どもの話をしているけれど、独身同士だと「最近忙しいね」「登記、複雑になってきたよね」で終わり。仕事の話ばかりが支配する世界に、僕もどっぷり染まっていたんだなと思います。

事務員との距離感は?

現在、事務所には女性の事務員さんが一人います。とても真面目で丁寧な方ですが、年齢も違うし、当然ながら仕事上の距離感は保っています。たまに「この人、どんな休日を過ごしているんだろう」と気になることはあっても、そこから一歩踏み出す勇気はありません。

雇う立場、でも人間としては近くなりたい

所長としての自分と、ただの45歳の男としての自分。そのギャップに戸惑う瞬間があります。雇う立場だからこそ、節度を守らねばならない。でも、人として「誰かと仲良くなりたい」という欲求もゼロではない。けれども、間違った接し方をすれば職場の空気が壊れてしまう。そのリスクを考えて、何もしないまま日々が過ぎていきます。

でもそれを口に出せるほど若くはない

「寂しい」とか「恋愛したい」とか、そんな感情を堂々と口に出せる年齢でもなくなってきました。若い頃なら「飲みに行こうよ」と軽く言えた。でも今は、下手をすればセクハラやパワハラと誤解されかねない。そんなことを気にしてしまう自分にも、少し悲しくなります。

距離感を間違えると職場が地獄化する恐怖

だからこそ、常に距離感に気を使っています。少しでも誤解を招いたら、たった二人の事務所は一瞬で崩壊します。仕事は好きです。でも、人間関係が崩れると働く意味が揺らぎます。その恐怖があるから、何も言えず、何も始まらず…そんな閉じた空気の中で、また一年が過ぎていくのです。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。