誰も悪くないはずなのに苦しさが消えない
毎日、手続きをこなし、書類を整え、登記を完了させていく。それは誰かの人生の節目に関わる、大切な仕事だとわかっている。それでも、どこか心が重たい。依頼人はいい人ばかりで、事務員も真面目に働いてくれる。なのに、ふとした瞬間、息が詰まるような感覚に襲われる。「誰も悪くない」はずなのに、なぜこんなにも苦しいのか。その理由がわからないこと自体が、さらにしんどさを増幅させていく。
正しさだけでは救われない現実
司法書士の仕事は、「正しくあること」が大前提だ。登記の内容、法的な判断、期日までの処理。それらをきっちり守ることが求められる。でも、心の中までは正しさではどうにもできない。例えば、相続登記の手続きを終えた後、依頼人がぽつりと「これで、やっと終わったね」と笑った時、こちらの胸が締めつけられるような感覚に陥る。笑顔の裏にある寂しさや、言葉にならない感情が伝わってきて、それを抱えたまま次の案件に進まなくてはならない。
「手続きは完璧」でも心はどこか荒れている
事務所の中では、完璧な仕事をしているつもりだ。補正もほとんどなく、書類の不備も少ない。法務局から戻ってくる登記識別情報を見るたびに、「今日もひとつ終わった」と思う。でも、そのたびに、どこか自分の中に空洞が広がっていく気がする。もしかしたら、淡々と「正しさ」だけを追い続けて、感情を置き去りにしてきたのかもしれない。ミスのない仕事と、心の平穏は必ずしも比例しないのだ。
納得しても納得できない感情のややこしさ
依頼人の事情を聞いて、書類を作って、役所を回る。理屈では納得している。問題ない。けれど、夜、机に突っ伏してふと湧いてくる感情がある。「これで本当によかったのか？」という漠然とした不安。たとえば、親族同士が揉めた末に成立した遺産分割協議。手続きとしては問題ないが、人の気持ちまでは整理できない。誰も間違っていないし、誰も悪くない。それでも「これで良かったのだ」と言い切れない自分がいる。
依頼人も悪くないし自分も悪くないはずなのに
登記が終わって感謝されることもある。笑顔で帰られる依頼人を見ると、少し救われる。でもそのあと、机に戻った自分はなんだか空っぽだ。とくに揉めたわけでもないし、嫌なことを言われたわけでもない。ただ、終わったという事実が虚しさを運んでくる。そこに誰かを責めたい気持ちはない。ただ、どこにもぶつけようのない感情だけが残る。
それでも「疲れた」と言ってはいけない空気
独立して司法書士事務所をやっていると、「愚痴を言わない人」に見られることが多い。強い人、自信のある人。実際はそんなことない。事務所に戻って、無言でパソコンに向かいながら「今日はもうしんどいな…」と心の中で呟いている。けれど事務員さんにはそれを言えないし、依頼人にももちろん言えない。だからこそ、自分の中でためて、ためて、いつか爆発しそうになる。
自分だけがモヤモヤを飲み込んでいる気がして
事務所で黙々と仕事をしていると、たまに「自分だけがこのモヤモヤを感じてるのでは？」と思う時がある。周りは淡々と日々をこなしているように見える。でも、自分はどこかで引っかかっている。これは仕事の悩みというよりも、生き方そのものに関わる問いのような気がしてならない。そんな漠然とした重さに、どう向き合えばいいのか分からないまま、また次の案件に手を伸ばしてしまう。
静かなストレスが積もっていく日常
激務というわけではない。徹夜するような仕事も滅多にない。けれど「静かなストレス」が毎日少しずつ積み重なっていく。書類作成、電話対応、補正、申請、説明、確認。どれもルーティンのようでいて、どこか神経をすり減らす作業ばかりだ。1日に何人かの依頼人と話し、それぞれの事情を聞く。その積み重ねが、知らないうちに自分を少しずつ削っていく。
「仕事は好きだけどしんどい」矛盾とどう向き合うか
自分の仕事は嫌いじゃない。というより、誇りを持っている。それなのに、最近「しんどいな」と思うことが増えた。好きな仕事で疲れてしまうという矛盾。たとえば、野球が好きだったのに、毎日走らされて嫌になるような感覚。仕事も同じで、好きだからこそ真面目に向き合ってしまって、それが逆に自分を追い込んでいるのかもしれない。難しいけれど、その矛盾を抱えながらやっていくしかないのだ。
使命感と疲弊感のあいだで揺れる気持ち
司法書士としての責任感は常にある。「この登記が遅れたら依頼人に迷惑がかかる」と思うから、多少無理してでも動く。でもそれが続くと、心の余裕がどんどん削れていく。使命感は心を支えるけど、ときに刃にもなる。優しさや真面目さが、自分を傷つけることもある。その事実を受け入れるには、まだ少し時間がかかりそうだ。
感謝されるたびに重たくなる心もある
依頼人に「本当に助かりました」と頭を下げられる。その瞬間は確かにうれしい。でも、その言葉が心に深く刺さることもある。「ちゃんとやらなきゃ」「もっと頑張らなきゃ」と、自分で自分を縛りつけてしまうからだ。感謝の言葉がプレッシャーになってしまうなんて、申し訳ないと思う。でも、それが正直なところだ。
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誰も悪くないはずなのに苦しさが消えない
毎日、手続きをこなし、書類を整え、登記を完了させていく。それは誰かの人生の節目に関わる、大切な仕事だとわかっている。それでも、どこか心が重たい。依頼人はいい人ばかりで、事務員も真面目に働いてくれる。なのに、ふとした瞬間、息が詰まるような感覚に襲われる。「誰も悪くない」はずなのに、なぜこんなにも苦しいのか。その理由がわからないこと自体が、さらにしんどさを増幅させていく。
正しさだけでは救われない現実
司法書士の仕事は、「正しくあること」が大前提だ。登記の内容、法的な判断、期日までの処理。それらをきっちり守ることが求められる。でも、心の中までは正しさではどうにもできない。例えば、相続登記の手続きを終えた後、依頼人がぽつりと「これで、やっと終わったね」と笑った時、こちらの胸が締めつけられるような感覚に陥る。笑顔の裏にある寂しさや、言葉にならない感情が伝わってきて、それを抱えたまま次の案件に進まなくてはならない。
手続きは完璧でも心はどこか荒れている
事務所の中では、完璧な仕事をしているつもりだ。補正もほとんどなく、書類の不備も少ない。法務局から戻ってくる登記識別情報を見るたびに、「今日もひとつ終わった」と思う。でも、そのたびに、どこか自分の中に空洞が広がっていく気がする。もしかしたら、淡々と「正しさ」だけを追い続けて、感情を置き去りにしてきたのかもしれない。ミスのない仕事と、心の平穏は必ずしも比例しないのだ。
納得しても納得できない感情のややこしさ
依頼人の事情を聞いて、書類を作って、役所を回る。理屈では納得している。問題ない。けれど、夜、机に突っ伏してふと湧いてくる感情がある。「これで本当によかったのか？」という漠然とした不安。たとえば、親族同士が揉めた末に成立した遺産分割協議。手続きとしては問題ないが、人の気持ちまでは整理できない。誰も間違っていないし、誰も悪くない。それでも「これで良かったのだ」と言い切れない自分がいる。
依頼人も悪くないし自分も悪くないはずなのに
登記が終わって感謝されることもある。笑顔で帰られる依頼人を見ると、少し救われる。でもそのあと、机に戻った自分はなんだか空っぽだ。とくに揉めたわけでもないし、嫌なことを言われたわけでもない。ただ、終わったという事実が虚しさを運んでくる。そこに誰かを責めたい気持ちはない。ただ、どこにもぶつけようのない感情だけが残る。
それでも疲れたと言ってはいけない空気
独立して司法書士事務所をやっていると、「愚痴を言わない人」に見られることが多い。強い人、自信のある人。実際はそんなことない。事務所に戻って、無言でパソコンに向かいながら「今日はもうしんどいな…」と心の中で呟いている。けれど事務員さんにはそれを言えないし、依頼人にももちろん言えない。だからこそ、自分の中でためて、ためて、いつか爆発しそうになる。
自分だけがモヤモヤを飲み込んでいる気がして
事務所で黙々と仕事をしていると、たまに「自分だけがこのモヤモヤを感じてるのでは？」と思う時がある。周りは淡々と日々をこなしているように見える。でも、自分はどこかで引っかかっている。これは仕事の悩みというよりも、生き方そのものに関わる問いのような気がしてならない。そんな漠然とした重さに、どう向き合えばいいのか分からないまま、また次の案件に手を伸ばしてしまう。
静かなストレスが積もっていく日常
激務というわけではない。徹夜するような仕事も滅多にない。けれど「静かなストレス」が毎日少しずつ積み重なっていく。書類作成、電話対応、補正、申請、説明、確認。どれもルーティンのようでいて、どこか神経をすり減らす作業ばかりだ。1日に何人かの依頼人と話し、それぞれの事情を聞く。その積み重ねが、知らないうちに自分を少しずつ削っていく。
仕事は好きだけどしんどい矛盾とどう向き合うか
自分の仕事は嫌いじゃない。というより、誇りを持っている。それなのに、最近「しんどいな」と思うことが増えた。好きな仕事で疲れてしまうという矛盾。たとえば、野球が好きだったのに、毎日走らされて嫌になるような感覚。仕事も同じで、好きだからこそ真面目に向き合ってしまって、それが逆に自分を追い込んでいるのかもしれない。難しいけれど、その矛盾を抱えながらやっていくしかないのだ。
使命感と疲弊感のあいだで揺れる気持ち
司法書士としての責任感は常にある。「この登記が遅れたら依頼人に迷惑がかかる」と思うから、多少無理してでも動く。でもそれが続くと、心の余裕がどんどん削れていく。使命感は心を支えるけど、ときに刃にもなる。優しさや真面目さが、自分を傷つけることもある。その事実を受け入れるには、まだ少し時間がかかりそうだ。
感謝されるたびに重たくなる心もある
依頼人に「本当に助かりました」と頭を下げられる。その瞬間は確かにうれしい。でも、その言葉が心に深く刺さることもある。「ちゃんとやらなきゃ」「もっと頑張らなきゃ」と、自分で自分を縛りつけてしまうからだ。感謝の言葉がプレッシャーになってしまうなんて、申し訳ないと思う。でも、それが正直なところだ。
それでも仕事を続ける理由
それでも、自分はこの仕事をやめたいとは思わない。たしかに苦しい。でも、ふとした瞬間に「やっていてよかった」と思える瞬間がある。依頼人の笑顔、手続きを終えてホッとした顔、安心した声。その一つ一つが、自分の背中を押してくれる。しんどさと感謝が混ざり合って、自分の今があるのだと思う。
ふとした瞬間に思い出す依頼人の笑顔
ある高齢の依頼人が、手続きを終えたあとに「こんなに親切にしてもらえると思ってなかった」と涙ぐんで言ってくれたことがある。そういう瞬間が、ずっと記憶に残っている。小さなことかもしれない。でも、あの言葉に支えられて今も仕事を続けている気がする。人のためになるという感覚は、何よりの原動力になる。
誰も悪くないからこそ自分を責めすぎない
この仕事に「明確な敵」はいない。だからこそ、苦しさの行き場が自分に向いてしまう。けれど、自分を責めすぎないようにしたい。疲れたら休んでもいいし、愚痴ってもいい。司法書士だって人間だ。完璧じゃないし、弱さもある。それを認めることが、少しずつ自分を救っていく一歩になるのかもしれない。
愚痴も弱音も自分の一部として受け入れる
最近は、「まあ今日は文句の一つでも言っとくか」と思えるようになってきた。誰かに言えなくても、自分の中で「しんどいよな」と認めてあげるだけでも少し楽になる。それもまた、優しさの一つだと信じたい。今日も一人の事務所で、書類と格闘しながら、そんなふうに自分を励ましている。
