遅れた報告ほど心を重くするものはない
言わなきゃと思いながら、つい先延ばしにしてしまった報告。それが後々、自分の首を絞めることになるのはわかっているのに、つい「今じゃないかも」と口を閉じてしまう。司法書士という仕事は「正確さとタイミング」が命。小さなズレが、大きなトラブルの元になる。でも、正直に言えば、日々の業務の中でどうしても後回しになってしまうことがある。言い訳になるけれど、ひとりで仕事を抱えていると、報告の優先順位が下がってしまうのだ。
あの時伝えていればよかったという後悔
思い出すだけで胃が痛くなる出来事がある。ある相続登記の案件で、書類の不備に気づいていたのに、忙しさを理由に顧客への報告を3日遅らせてしまった。結果、提出が間に合わず、顧客からはきついクレームを受けた。怒鳴られることはなかったが、冷たい目と「早く言ってくれれば…」という一言に、胸が締め付けられた。たった一言を早く伝えるだけで、関係は壊れなかったかもしれないのに。過ぎた時間は戻らない。報告のタイミングを逃すことの重みを痛感した瞬間だった。
相手の表情が変わる瞬間が怖い
一番怖いのは、報告を遅らせたことで信頼を失ったと感じる瞬間だ。こちらが「すみません、実は…」と切り出した途端、相手の表情が変わる。無言になる、眉がぴくりと動く、目をそらす。何気ない変化でも、こっちは敏感に察してしまう。元野球部だった頃、監督に遅刻の理由を言った時の、あの無言の時間を思い出す。叱られるより怖いのは、黙って失望されること。司法書士として、信用が仕事の土台である以上、この「表情の変化」は思った以上にこたえるのだ。
気づいていたのに言わなかった理由とは
なぜ、すぐに言えなかったのか。忙しさ? タイミング? 実のところ、「怒られるかもしれない」という子どもじみた恐れが大きかったのだと思う。相手にどう思われるか、面倒な展開になるのではないか、そんな気持ちが先に立って、口をつぐんでしまった。でも、これはプロとして恥ずかしいことだ。むしろ早く伝えた方が、傷は浅く済むのに。頭ではわかっている。わかっているのに、つい…というのが本音だ。未熟さと向き合うのは本当にしんどい。
忙しさを言い訳にしていないか
毎日毎日、仕事に追われている。朝から夕方まで登記の確認、電話対応、事務員とのやり取り。時間がいくらあっても足りない。だから、「報告は後でまとめて」なんて考えてしまう。でも、ふと気づくとその「後で」が致命的になることもある。仕事が立て込んでいるからといって、報告を怠れば、信頼を失う。言い訳に忙しさを使うのは簡単だが、それが積み重なっていくと、取り返しがつかなくなることを何度も経験してきた。
あとでまとめて言えばいいは本当に正解か
ついつい「後でまとめて言おう」と考えてしまうのは、効率的だと思い込んでいるからだ。事務員にもまとめて指示を出した方がいいと考えていた時期がある。でも実際は、細かい報告や確認をその場でしておいた方が、ミスが減るし、混乱も起きにくい。先延ばしは、感情的にも後で気まずくなる元凶だ。「あの時ちょっと言っておけばよかった」――それを何度思ったことか。まとめることが効率とは限らない。むしろ、細切れでも即時報告の方が安全なのだ。
急ぎの仕事と重要な仕事の見極めが難しい
「急ぎの案件があるから」と他の報告を後回しにしてしまう。これが曲者だ。急ぎの業務に気を取られ、重要な伝達が抜ける。そして、あとから「なんで報告してないの?」となる。自分の中での優先順位が、必ずしも他人にとっての優先とは限らない。特に司法書士の仕事では、依頼者の感覚とズレるとトラブルになる。重要な報告こそ、早めに済ませるべきなのに、それが一番後回しになりやすいという皮肉。日々反省してばかりだ。
自分の処理能力の限界と向き合う時間
結局のところ、自分の限界と向き合うしかない。1人で何でもやろうとすると、どうしても抜けが出る。事務員がいても、最終的な責任は自分にある。だからこそ、自分の容量を冷静に見つめる必要がある。忙しいから仕方ない、ではなく、「これ以上は無理」と言える勇気も必要だ。野球部時代、無理なスライディングでケガをした経験があるが、それと同じ。無理は長続きしない。仕事もまた、持久戦なのだと日々痛感している。
信頼を築くのは一言のタイミング
信用される人とそうでない人の差は、実は「早めの一言」に尽きる。何かトラブルの芽を見つけたとき、迷わず報告できるかどうか。その一瞬の判断が、信頼の礎になる。逆に、言わずにやり過ごそうとすると、あとで「なぜ言わなかったのか」と責められる。これは仕事に限らず、人間関係全般に言えることだろう。報告のタイミング、それが日々の信頼貯金に影響を与えていると、ようやく最近になって身に染みてわかってきた。
報告の遅れが生む誤解と不信感
たとえば、登記手続きの進行状況を報告しなかったせいで、依頼者に「放置されているのでは?」と思われてしまったことがある。こちらは進めていたつもりでも、相手には見えないのだ。報告がなければ、「やってない」と思われても仕方ない。それが数日続けば、疑念は確信に変わる。報告を怠ったことで、不信が生まれ、謝っても関係が冷えたままになることもある。仕事のスキル以前に、こうした信頼のほころびが一番の損失になる。
小さなことほど早めに伝えるべき理由
「この程度なら報告しなくてもいいか」という気のゆるみが、後でとんでもない波紋を広げる。以前、登記の細かい補正依頼を先送りにしたことで、全体の手続きに支障が出たことがあった。相手からすれば、「なんでこんな簡単なことをすぐに言ってくれなかったの?」という話になる。些細なことこそ、信頼の試金石だ。大きな問題が起きる前に、小さな火種をつぶす。面倒でもその積み重ねが、安心感を生むのだと思う。
無言の気まずさをどうやって回避するか
遅れた報告をするとき、何より気まずいのが、相手の沈黙だ。何も言われないのに責められている気持ちになる。だからこそ、言いにくいことほど、なるべく早く、正直に伝えるようにしている。完璧に説明できなくても、「今こういう状況で…」と素直に言えば、相手も少しは納得してくれる。無言の壁を破るには、こちらが最初の言葉を出すしかない。気まずさを恐れて沈黙すれば、それは何倍にもなって返ってくる。それだけはもう経験済みだ。