登記が通った日それだけで少し救われた気がした

登記が通った日それだけで少し救われた気がした

なぜこんなことで涙が出そうになるのか

登記が無事に完了しただけの一日だった。何か特別な手続きでもなく、難解な案件でもない。ただ、きっちりと書類を整え、法務局に出して、それが受理された。それだけのことなのに、なぜかその知らせを受けた瞬間、目の奥がじんわりと熱くなった。こんなふうに心が揺さぶられるのは、日々のプレッシャーと疲れが積み重なっていたからかもしれない。

ただの登記ひとつに過ぎないのに

自分でもよくわからなかった。「通って当然」と言われる世界の中で、何百回目かの“当然”がいつもより重く心に響いた。お客様にとっては一つの通過点。だけど自分にとっては、無言の信頼を形にする仕事だった。だからこそ、通っただけで泣きそうになるくらい、こっちの気持ちは張り詰めていたのかもしれない。

肩の力が抜ける瞬間はいつもささやか

司法書士という仕事は、成功しても大きく取り上げられることはない。手続きがスムーズに終わるほど、「あたりまえ」で済まされる。だけど、そんな「あたりまえ」の裏に、どれだけの調整や確認があるか知ってるのは自分だけ。だからこそ、肩の力が抜けるのは、ほんの一言「ありがとう」とか、書類が通ったという通知だけなのだ。

成功の実感よりも安堵が先に来る

喜びというよりは「ホッとした」という感情のほうが近い。まるでランナーがゴールしたとき、歓喜より先に足を止めて膝に手を置くような、そんな瞬間。何かを勝ち取ったというより、また今日も無事にやりきれたという実感。それでも、そういう“ささやかな安堵”が、この仕事の原動力なのかもしれない。

日々の業務に心がすり減る理由

司法書士の仕事は、派手さがない。人の人生の節目に関わる大事な業務でありながら、主役にはなれない。特に地方では、感謝されるどころか「まだ?」と催促の電話がかかってくることもある。資料集めに奔走し、書類不備に頭を抱え、時間に追われる毎日。その積み重ねが心を静かにすり減らしていく。

感謝されにくい職種だからこその孤独

登記が終わっても、誰も拍手はしてくれない。成功しても、依頼人から「それで?」と平然と返されることも多い。人の期待に応えることが仕事ではあるけれど、その期待の重さが時に心を締め付ける。感謝されることが少ないからこそ、孤独は深く、誰にも相談できない疲れだけが残っていく。

数字で評価されない世界に生きる

売上や成果で評価される職業ではない。もちろん数字は必要だけれど、それだけで語れる仕事ではない。どれだけ丁寧に対応しても、誰にも気づかれないまま終わることがほとんど。だからこそ「数字ではなく、自分自身の誠意」で勝負するしかない。それが報われない日々をさらに苦しくする。

「ちゃんとできて当然」の重圧

司法書士という肩書きには、妙な期待がつきまとう。「ミスは許されない」「法律をすべて把握していて当然」…そんな無言の圧が、日々の業務に影を落とす。人間だからミスもする。だけどその一つが命取りになることもある。だから常に張り詰めている。誰にも気づかれないまま、今日もプレッシャーと共に机に向かう。

褒められないことが当たり前の仕事

この仕事で「よく頑張ったね」と言われた記憶はほとんどない。どれだけ複雑な案件を処理しても、それが“仕事だから”と片付けられる。責任だけが重くのしかかり、誰かに弱音を吐けるような雰囲気でもない。気づけば「自分の存在って必要なんだろうか」と、そんな考えがよぎることさえある。

失敗すれば叩かれる理不尽さ

成功しても何も言われない。けれど、ひとたびミスがあれば、その責任はすべて自分に返ってくる。しかもそれが法律関係となれば、社会的信用にもかかわる。だからこそ、ミスは絶対に許されない。でも、完璧なんてありえない。だから、怖い。いつも心のどこかで怯えながら、目の前の書類と向き合っている。

それでもやめられない理由

それでもこの仕事をやめられないのは、ほんのわずかな「救い」があるからだ。何百件のうちの一件でも、心から「ありがとう」と言ってくれる人がいれば、それだけで報われる気がする。その一言が、張りつめた心をほどいてくれる。しんどいけれど、そんな瞬間があるからこそ続けていける。

たまに届く「ありがとう」の重み

依頼人から届いた一通の手紙。「あなたのおかげで安心して暮らせます」――そんな言葉を読んだとき、泣きそうになる。電話越しに涙声で「本当に助かりました」と言われたとき、胸がいっぱいになる。仕事は大変だ。でも、誰かの不安を取り除けるということは、こんなにも尊い。

その一言でまた一日がんばれる

心が折れそうなとき、その言葉を思い出す。机の引き出しにそっとしまってある手紙、LINEの履歴、ボイスメッセージ。全部、宝物だ。「今日も頑張ろう」と思えるのは、そういう小さな感謝があるから。逆に言えば、それがなければもう辞めていたかもしれない。

登記が通った瞬間の不思議な感覚

通った瞬間、なぜか胸がじんとした。誰にも見られていないはずなのに、泣きそうになった。多分、それは「頑張ってきたね」と自分自身に言ってあげたかったんだと思う。評価されなくても、自分だけはわかっている。地味で報われにくいけど、間違いなく意味のある仕事。それを噛みしめた。

自分を認めてもらえた気がした

何かを勝ち取ったわけではない。でも、「これは俺がやった仕事だ」と誇れる何かがそこにある。それがあるから、まだ踏ん張れる。人に認められなくても、自分で自分を認める。それだけで、少し救われる気がする。

報われない日々の中のご褒美

たった一通の完了通知、それが今の自分にとってはご褒美だった。派手な成果も、大きな成功もないけれど、誰かの役に立てた。そう実感できたことが、何よりもうれしかった。涙が出そうになるほどに。

同業者に伝えたいこと

もしこの記事を読んでいるあなたが、同じ司法書士であるなら、ひとつだけ伝えたい。「あなたの頑張りは、きっと誰かを支えている」。直接感謝されなくても、その仕事は確かに価値がある。あなたがいたから救われた人がいる。そのことを、忘れないでほしい。

一件の登記で報われることもある

どんなに地味な案件でも、誰かにとっては人生の分岐点。通った登記は、あなたの誠実さの証だ。それだけで誰かの不安が消え、生活が前に進む。そんな「一件」が、あなた自身をも救う瞬間があるかもしれない。

日々の小さな達成を大切にしてほしい

派手な結果を求めなくてもいい。毎日の小さな「完了」を、自分でしっかり感じてほしい。それが、やりがいにつながっていくから。報われないように見える日々に、実は救いが隠れている。どうか、それを見失わないで。

頑張っているあなたへ

孤独に耐えながら、それでも誠実に働き続けるあなたへ。この仕事は厳しい。でも、その分やさしくなれる。誰よりも人の不安や困りごとに寄り添える。それって、すごいことだと思う。今日もあなたは、ちゃんと役に立っている。

しんどい時ほど人に優しくなれる

苦しさを知っているからこそ、やさしくなれる。他人の小さな悩みに気づける。それは、あなたがこの仕事を通じて得た強さ。しんどい時ほど、誰かに優しくしてみて。自分の心も、少しずつ軽くなるから。

孤独な戦いに意味を見いだせるように

この孤独な戦いが、どこかで誰かの助けになっている。そう思えたら、それだけで十分意味がある。登記が通った、それだけのことで涙が出そうになるあなたは、今日もちゃんと人のために頑張ってる。それでいい。それが、司法書士の誇りだと思う。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。