司法書士だって人間ですから
司法書士と聞くと、「堅実」「冷静」「ミスしない」といったイメージを抱かれることが多い。でも実際には、僕たちだって人間。朝起きられない日もあるし、ミスをして落ち込むこともある。特に地方で一人事務所をやっていると、毎日が孤独との戦い。僕は元野球部で、それなりに根性もある方だと思うが、それでも「今日はやめたい」と思う日が何度もある。それでもやめられないのは、結局誰かの役に立っていると信じているから。今回はそんな「司法書士だけど人間な自分」を、少しだけさらけ出してみたい。
朝起きるのがつらい日もある
毎朝6時に目覚ましをかけてはいるが、正直ベッドから出るのは至難の業だ。とくに月曜の朝。気づけば、アラームを止めて二度寝していることもしばしば。案件が詰まっていると分かっていても、体が動かない。司法書士とはいえ、365日完璧ではいられない。人間らしさなんて要らないという顔で他人に接していれば、当然そのしわ寄せは自分に来る。だからこそ、朝の15分だけは「人間である自分」を許している。
予定が詰まりすぎて布団から出たくない
ある月末、登記申請が3件、遺産分割協議書の作成が2件、そして法務局への問い合わせが立て込んだ週があった。その週の月曜、布団の中で「今日はキャンセルしてしまおうか」と真剣に思った。もちろんそんな勇気はなく、なんとか起きて出勤したけれど、結局一日中イライラしながら業務をこなすことになった。誰にも迷惑はかけていないかもしれないけど、自分の心はすり減っていた。
スーツに着替える手が止まる朝
「今日こそネクタイじゃなくてパーカーで出所してしまおうか」と思ったことがある。もちろん実行したことはない。でも、ネクタイを締める手が止まって、鏡に映る自分を見てため息をつく時間が増えた。特に冬はつらい。温かい布団の誘惑と、冷たいワイシャツのギャップに心が折れる。そんな朝にも、「司法書士らしく見せなければ」という見栄が僕を動かす。
クライアントの期待が重すぎて
「全部お任せします」「先生に任せれば安心です」。そんな言葉をかけられて喜んでいた時期もあった。でも今は、その言葉がプレッシャーにしか感じられないときがある。任せてもらえる信頼はありがたい。でも、それが「何も考えず丸投げ」に聞こえてしまう瞬間がある。特に、自分の専門外に近い相談をされたときには、内心焦る。
「全部お任せします」のプレッシャー
ある相続案件で、「誰が相続人かすら分からないので全部任せます」と言われた。戸籍を集めてみたら、想像以上に相続人が多く、遠方にも散らばっていた。そのたびに電話や郵送、調整が必要になり、結局ほぼ一人で親族全体を取りまとめるような立場になった。「プロなんだから当たり前でしょ?」と言われればそれまでだけど、僕も万能ではない。時には「ここまで僕がやるの?」と疑問が浮かぶ。
専門家である前に一人の労働者なんです
「先生なんだからできて当然」と思われることがある。確かに資格を取った責任はある。でも、僕だって労働者。時間も体力も有限だし、誰かに「それは大変でしたね」と言ってもらえるだけで救われることもある。実際、事務員に愚痴をこぼそうとしたとき、言葉が喉まで出かかって止まった。「この人にまで気を遣わせるわけにはいかない」と思ってしまった。
事務員さんの前では笑顔で
うちの事務所には一人だけ事務員さんがいる。彼女はとても有能で、僕が忘れていた案件の期日も覚えてくれている。でも、どれだけ大変でも、僕はなるべく笑顔でいようと心がけている。なぜなら、経営者の顔が暗いと、職場の空気が一気に沈むから。でも、時々その「笑顔」自体が自分の首を締めているように感じる。
愚痴りたいけど言えない日常
「先生も大変ですね」と言われても、「いや、ほんとに大変なんです」とは返せない。相手に気を遣わせるくらいなら、黙って我慢したほうがマシ。でも、夜ひとりでコンビニ弁当を食べているとき、「誰かに話したかったな」と思うことがある。SNSで吐き出すのも苦手だし、かといって飲みに行く友人も少ない。
優しさと無言のストレスの狭間
「無理しないでくださいね」と言われるたび、「無理してないように見えるなら成功だな」と思ってしまう。たぶん、僕は見栄っ張りなんだと思う。誰かの前では「しっかりして見られたい」。でも、そのしっかりの裏で自分が削られていく。そんな日常が続くと、「俺、何のためにこの仕事してるんだっけ?」とふと思う瞬間がある。