司法書士の未来はどこへ向かうのか俺たちは何に耐えているのか

司法書士の未来はどこへ向かうのか俺たちは何に耐えているのか

司法書士の未来はどこへ向かうのか俺たちは何に耐えているのか

朝一番の電話に怯える日々

朝イチの電話。事務所の電話が鳴る音が、いつの間にか恐怖の合図になっている。新しい依頼かと思いきや、たいていは「◯◯ってどうやるの?」「それって無料で聞いてもいい?」といった無料相談のような問い合わせ。こちらが忙しかろうが、お構いなし。断れば冷たい人、受ければ時間泥棒。なんの覚悟もなくかかってくるその1本の電話に、いちいち振り回されるのが司法書士の日常だ。

依頼じゃない電話の多さに消耗する

午前中のうちに鳴る電話の半分以上は業務外。近所の不動産屋から「ちょっと教えて」と気軽に聞かれ、相続人調査の話にまで発展して30分が消える。しかも仕事になるわけでもなく「ありがとう、また今度頼むわ」と言われて終わり。こういう電話が続くと、やってられない気持ちになる。「誰のために働いてるんだろう」と、ふと自分の存在意義まで疑ってしまうこともある。

登記じゃなくて愚痴を聞かされる時間

昔からの知り合いや親族に近いお客さんからの電話では、気づけば登記の相談より人生相談の方が長くなる。離婚の愚痴、兄弟との確執、最近の体調不良まで話題は多岐にわたり、なぜかこちらが励ます側にまわっている。そういう会話を嫌いなわけじゃない。でも、心のどこかでは「今月、売上どうすんの…」と冷や汗がにじむ。優しさと現実の間で、いつも気持ちが揺れている。

稼げてるのかと聞かれて答えに詰まる

飲み会や親戚の集まりで、「司法書士って儲かるの?」と聞かれることがある。昔は笑顔で「まあまあですね」と返していたが、最近はどう答えていいのか本当に迷う。確かに開業直後は夢があった。自分の力で稼いでいく喜びも感じていた。でも今は、その頃とは状況が違う。価格競争、ネット登記、業務の重責…。稼ぎよりも「どれだけ心をすり減らさずに1日終われるか」を考える日が増えた。

開業当初と今の報酬感覚の違い

開業したばかりの頃は、「この仕事1本でこんなに報酬もらえるんだ」と感動すらあった。数万円の報酬でも、すべて自分の力で得たと誇らしかった。でも今、その感覚はすっかり鈍っている。同じような業務が、今ではネットで半額以下。報酬の相場が下がり続ける一方で、顧客から求められる精度とスピードは年々上がっている。このままじゃ、心も懐も先細っていくばかりだ。

報酬単価は下がり続けるのに責任は増える

法改正や制度の変更があるたびに、責任の範囲が増えていくのに、それに見合う報酬はついてこない。しかも、ちょっとしたミスでも「士業なんだからちゃんとやってよ」と責められる風潮。責任だけはプロ扱い、でも価格は便利屋感覚。このバランスの悪さが、精神的にじわじわと効いてくる。書類1枚の重みを、もう少し世の中が理解してくれたら…と思わずにはいられない。

誰も知らない司法書士の孤独

この仕事、実はとても孤独だ。お客さんとのやりとりはあっても、同業者と話す機会はほとんどない。愚痴を吐ける仲間もいなければ、悩みを共有できる相手もいない。毎日、誰かのために働いているのに、ふと気づくと「自分のことをわかってくれる人」が誰もいない気がして、妙に寂しくなる。そんな時、声をかけてくれる誰かがいたら、どれだけ救われるだろうと思う。

相談相手がいない業務のつらさ

登記の内容に迷ったとき、ちょっと確認したいときに、気軽に相談できる相手がいないのが一番つらい。同じような境遇の仲間が近くにいればいいけれど、地方ではそれも難しい。下手にネットで聞けば知識不足を笑われることもあるし、恥をかくくらいなら独りで悩んだ方がマシだと感じてしまう。だけど、その我慢が積み重なると、いつの間にか心がすり減っていることに気づく。

元野球部でもメンタルは折れる

学生時代、野球部で鍛えたメンタルには自信があった。どんな厳しい練習でも耐えてきたし、根性だけはあると思っていた。でも、司法書士の仕事は別の意味できつい。誰にも見えないところでのプレッシャー、責任の重み、孤独との闘い。それに耐えられる強さは、筋トレや精神論ではどうにもならない。「こんなはずじゃなかった」と何度つぶやいたかわからない。

飲みに誘える相手がいない現実

仕事終わり、誰かと飲みに行って愚痴でもこぼしたい。そんな気持ちになる日もある。でも、周りにそんな相手はいない。唯一の事務員さんには気を遣うし、地元の友達も忙しい。結局、コンビニで缶ビールを買って、事務所でひとり乾杯。「まあ、今日もなんとか乗り切ったな」と独り言をつぶやいて、次の日もまた黙って机に向かう。それが今の、リアルな日常だ。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。