感情をしまうのが上手くなっただけで楽になったわけじゃない

感情をしまうのが上手くなっただけで楽になったわけじゃない

感情をしまうことが当たり前になってしまった

いつからか、自分の感情を押し殺すのが習慣になっていた。司法書士という職業柄、感情的になったり感傷的になったりすることが、どこか「弱さ」のように思われている気がして、自然と感情をしまい込むようになっていた。依頼者の前では冷静沈着、声を荒げることなく丁寧な対応を求められる。気づけば、怒ることも泣くことも、自分の中で禁止していた。けれど、それは「慣れた」だけであって、本当は何も解決されていなかった。

無意識に感情を隠す日常

電話一本で心が乱れることもある。理不尽な言い方をされると、胸の中がざわつく。でも「そんなことで動揺してる場合じゃない」と自分に言い聞かせて、感情を隠して話し続ける。事務員にも気を遣わせたくないし、毎日穏やかに仕事が進むように自分の中の波は見せないようにしている。けれど、感情ってしまい込めばしまい込むほど、澱のように心の奥に溜まっていく。

泣かない癖も笑わない癖もいつのまにか身についた

人前で泣くのは恥ずかしいこと。そう思っていた。でも、笑うことまで減っていたとは気づかなかった。以前はちょっとした冗談で笑えていたのに、今は「はいはい」って受け流すばかり。感情を出すことが怖いのかもしれない。泣いてしまえば崩れてしまいそうで、笑ってしまえば気が緩むような気がして、結果どちらも出さなくなっていた。自分を守るための防御だったのかもしれない。

強くなったわけじゃなくて慣れただけだった

感情をしまうのが「大人の対応」だと思っていた。でも本当は、感情を整理する術を知らないまま、大人になってしまっただけだった。強くなったんじゃない。慣れただけ。自分の気持ちにフタをして、その上から仕事のスケジュールを積み重ねて、いつのまにか何を感じてるのかもわからなくなっていた。

仕事では感情を出す余地がない

司法書士の仕事は信頼が命だ。だからこそ、感情的な言動は慎まなければならない。依頼者の不安に寄り添うことは大切だけど、こちらが感情を出しすぎると逆効果になることもある。日々の業務の中で、感情の起伏を抑えることに長けてしまった結果、気づけば自分自身の本音がどこかに行ってしまったような感覚になっていた。

お客様の前ではいつも冷静でいなければいけない

「司法書士さんが取り乱したら、私たちが不安になるじゃないですか」。そう言われたことがある。その通りだと思った。だからどれだけ心の中で「それは違う」と思っても、「そうですね」と微笑む。怒鳴られても平気なふり。感情を見せることで信頼を損なうくらいなら、しまい込んだ方がましだと、ずっとそうやってきた。

怒りも焦りも見せられない司法書士の顔

不動産の決済現場で、予定と違う登記内容を指摘されたことがある。こちらに落ち度はなかったが、場を荒立てるわけにもいかず、平静を装った。内心は「このタイミングで言う?」と腹が立っていたが、そんな顔ひとつ見せずに処理を進めた。感情よりも、業務を円滑にこなすことの方が大事。そう刷り込まれていた。

電話を切った後にため息が漏れる毎日

感情を抑えて話した電話の後、机に突っ伏してため息をつく。言い返したかった言葉をグッと飲み込んだことで、心にモヤモヤだけが残る。そんな日が何日続いたんだろう。電話のコール音が鳴るたび、心がちょっとだけざわつくようになっていた。

しまいこんだ感情が溜まりすぎている

しまい込んだ感情は、消えてなくなるわけじゃない。ずっと心の奥に、蓄積されていく。普段は何事もないように見えても、ふとした拍子にあふれそうになる時がある。例えば、夜中にふと目が覚めた時や、何気ないテレビ番組のワンシーン。感情が詰まりすぎて、出口を求めているような感覚だ。

休日に急に涙が出る理由はきっとそこにある

ある日曜日、なんの前触れもなく、ふと涙が出た。特に悲しいことがあったわけでもない。ただ、静かな部屋で一人だったというだけ。普段押し込めていた感情が、外に出るチャンスを得たんだと思う。しまった感情にも限界がある。その時、初めて「俺、全然楽になってないんだな」と気づいた。

感情を整理する時間がもう少し必要なのかもしれない

忙しい日常の中で、自分の感情に目を向ける時間を取るのは難しい。でも、たとえ5分でも「今日はどうだった?」と自分に問いかける時間を作ることで、少しずつ心が軽くなる気がする。感情を押し込むばかりじゃなくて、ほどよく出して、ほどよく整える。そんなバランスが必要なのかもしれない。

感情をしまうのが正解じゃないと気づいた

感情をしまうことは一つの手段かもしれないけど、それがすべてじゃない。出せる場所があること、受け止めてくれる人がいること、それが生きていく上でどれだけ大切なことか。無理に感情を消そうとしなくていい。自分のままを受け入れることが、結果として一番の強さになる気がしている。

隠し続けるよりも少しだけ吐き出す勇気

誰かに弱音を吐くのは、決して恥じゃない。昔の自分なら「それは甘えだ」と思っていたかもしれない。でも、今ならわかる。感情を少しだけ出せることは、生きるための技術だ。独身だろうが、モテなかろうが、誰かに聞いてもらえるだけで、ふっと軽くなることがある。

それが自分を守る一歩になることもある

強がって、感情を押し込めて、何とか踏ん張って生きてきた。でも、もう少しだけ楽になってもいいんじゃないかと思う。感情をしまうのが上手くなった分、出すことも上手くなっていきたい。それがこれからの自分を守る手段になると信じて。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓