給料日がただの通過点になる月もある

給料日がただの通過点になる月もある

給料日に感じる虚しさはどこから来るのか

給料日という言葉には、本来ワクワクや安堵感が伴うはずだ。しかしこの仕事を続けていると、給料日が“通過点”に過ぎない月が出てくる。通帳に数字が増えても、それは束の間のことで、すぐに右から左へと消えていく。特に経営者として、事務所の維持やスタッフの給与を優先せざるを得ない立場だと、自分のための給料ではなく「事務所の流動資金」くらいの感覚になってしまうのだ。

入金通知が嬉しかったのは昔の話

開業して間もない頃、はじめて自分の口座に報酬が振り込まれたときは、素直に嬉しかった。銀行アプリの通知が鳴った瞬間、「やった、ついにここまで来たか」と思えた。もちろんその金額は大したことなかったが、自分で稼いだという実感がそこにあった。でも数年経つと、その通知がただの「中継点のお知らせ」に変わってくる。喜びよりも、次の支払いのことが先に頭をよぎるのだから、皮肉な話だ。

独立直後の給料日は特別だった

司法書士として独立して初めての給料日は、まるで甲子園に出場したときのような感覚だった。達成感と希望に満ちていたし、何に使おうか考える時間も楽しかった。カレー屋に寄って、ご褒美のカツカレーを食べたことを今でも覚えている。あの時は、給料に夢があった。けれど今では、その夢はどこへ行ったのか…とふと考える瞬間がある。

気づけば通帳は一時預かり所

月末に近づくと、スタッフの給与や事務所の家賃、各種支払いがずらりと並ぶ。振込まれたお金が一瞬だけ通帳に立ち寄って、また別の場所へ旅立っていくような感じだ。「預金」ではなく「預かり金」に近い。特に忙しい月は、報酬よりも支出が上回ることさえある。通帳の数字を見ても、増えた喜びより「これもすぐ消えるんだよな」という冷めた気持ちが勝ってしまう。

支出が先に浮かぶ司法書士の給料日

普通なら「給料日=ご褒美」だけど、事務所を経営していると「給料日=支払い日」になる。カレンダーに「25日」と書かれているだけで、胃がキリキリしてくる月もある。しかもそれが税金や保険料の納期限と重なると、もう軽くイベントだ。給料日というより「強制資金移動日」。そんな感覚になることも、地方で一人事務所を回していると現実にあるのだ。

振込と同時に飛んでいくお金たち

実際のところ、給料日に事務員さんの給料を振り込み、自分の分も形だけ入金するけれど、そこから光熱費、印紙代、サーバー代、雑費などの支払いが立て続けに発生する。ひどいときは、1日で7件の引き落とし通知が届いたこともある。まるで「お金が生まれてすぐ社会に放り出されていく」ようなスピード感だ。

事務員さんの給与日が「本当の給料日」

事務所としては、まず事務員さんにちゃんと給料を支払うことが最優先だ。それが滞るわけにはいかない。だから、月末のメインイベントは「自分の給料」ではなく「彼女の振込」。終わってから「あ、俺も少し残ったな」という程度で、自分の生活は“おまけ”のような位置づけになる。経営者って、案外そういうもんだ。

税金納付日と重なると余計に悲しい

6月の住民税、12月の固定資産税、3月の所得税。これらが給料日と見事に重なると、「何のために働いたんだろう…」という感情が襲ってくる。しかも司法書士は外注業務も多いから、誰かに頼んだ分の支払いも待っている。「請求書は生きてる証拠だ」と無理やり前向きに解釈してみても、通帳残高を見て溜息が出る月がある。

自分のために使えない現実

経営者である以上、自分の生活は後回しになりがちだ。とはいえ、何か買い物でもすれば気分も晴れるのでは…と考えることもある。だが実際には、「また出費が増える」という考えが先行して、手が止まる。自由に使えるはずのお金なのに、心理的には“使えないお金”になってしまうのだ。

お金はあるのに「使う元気」がない

変な話だが、「疲れているときほどお金を使わない」。これ、実感としてある。仕事でクタクタになって帰ってきて、せっかく給料日なのにスーパーの半額惣菜で済ませてしまう。コンビニに寄る元気すらない日もある。財布にはある程度の現金が入っているのに、使いたい気分になれない。これって、結構深刻な“感情の欠乏”だと思う。

欲しいものより、壊れた家電が先

先日も給料日明けに「たまには革靴でも新調しよう」と思っていたら、まさかの冷蔵庫が故障。買い換えるとなれば、革靴どころじゃない。給料が入ったタイミングと、壊れるタイミングってなぜか絶妙に重なる。結果として、自分の欲しいものはまた後回し。こんなことの繰り返しで、自分の“ご褒美感覚”がどんどん薄れていく。

独身でもお金が余るわけではない

よく「独身だから自由にお金使えていいですね」と言われるが、実際はそうでもない。一人暮らしだからこそ、家賃も水道光熱費も全部自分持ち。外食すればそのまま一人分の出費。子どもがいない分、教育費はないけど、交際費や急な修理費用などの“変動費”が地味に効いてくる。独身=余裕がある、というのは幻想に近い。

給料日を前向きにするための小さな工夫

そんな中でも、ちょっとした工夫で「給料日が嬉しい」と思える瞬間を作ることはできる。大きな贅沢ではなく、小さなご褒美を自分に与えること。それが“通過点”でなく“区切り”としての給料日を取り戻す鍵になる。

一食だけ「好きなものを食べる」贅沢

例えば、給料日には必ず「ちょっと高い焼肉弁当を買う」と決めている知人がいる。私も最近は、近所の寿司屋で1人前だけ頼むことにしている。たったそれだけでも、「よし、また今月も頑張ったな」と思える。満腹になるのではなく、心が少し満たされる。それだけで給料日に対する気持ちが変わるから不思議だ。

使い道を決めずに1万円だけ残す

すべての出費を把握して計画通りに使うのも大切だけど、1万円だけ“用途未定”として財布に残しておく。これだけで「何かに使える自由」が生まれる。そのまま何も使わなければ、翌月は2万円に増える。そんなちょっとした“お楽しみ資金”が、次の給料日までのモチベーションになるのだ。

誰かの「ありがとう」で救われる瞬間

どれだけ給料日に意味を感じられなくても、誰かから「本当に助かりました」と言われたとき、それが心の報酬になる瞬間がある。通帳には記録されない“価値”がそこにはあるのだ。そういう意味では、この仕事は金額だけでは測れない面白さもある。

報酬より感謝が心に残る日もある

先月、ある依頼者から遺言書作成のお礼として小さな和菓子をいただいた。報酬の振込より、その和菓子の温かさに胸を打たれた。給料日が通過点でも、誰かにとっては「大切な助け手」だったという実感。それがあるだけで、また来月も頑張れる。そう信じたい。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





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