電子署名の名前漢字が違うとどうなるか誰も教えてくれなかった件

電子署名の名前漢字が違うとどうなるか誰も教えてくれなかった件

電子署名の名前漢字が違うとどうなるか誰も教えてくれなかった件

雨上がりの午後。静まり返った事務所の中で、俺――司法書士のシンドウは、いつものように書類の山と格闘していた。相棒のサトウさんは、あいかわらず書類の確認を電光石火で終え、すでに次の登記の下調べに入っている。

「先生、これ……また“齊藤”じゃなくて“斎藤”になってますよ」

彼女の声は平坦だが、その奥に微かな嘲りが混ざっていた。そう、またか。登記義務者が提出した電子署名付きの書類。そこに記された名前の漢字が、本人の戸籍の字と微妙に違っている――。

やれやれ、、、これで今月何件目だ。

謎は名前にあり

俺が司法書士になってから幾星霜。電子署名の仕組みが普及するにつれ、「本人の名前が電子署名に正確に記されていない」ケースが増えてきた。とくに旧字体と新字体の混同が多い。

犯人の正体

この件において「犯人」と言えるのは、大抵パソコンの自動変換だ。たとえば「齊藤」と入力しようとしても、変換候補の最初に「斎藤」が出てきてしまう。結果、そのまま電子署名に使用されてしまう。

アヤしい手続きの裏に潜む罠

こういうミスは、ある意味“完全犯罪”に近い。誰も意図していないが、誰も気づかないまま処理が進むのだ。だが、それを見逃すわけにはいかないのが、我ら司法書士の宿命というわけだ。

電子署名に潜む黒幕

この書類の真犯人は誰か? いや、厳密に言えば“本人”。しかしその手に凶器(キーボード)を持たせたのは、電子署名という制度そのものだった。

サトウ探偵の推理

「訂正はできます。でも、いったん署名を破棄して、新しい電子署名を再取得してもらわないと無効です」

サトウさんが冷静に言い放つ。まるで探偵マンガの終盤で、犯人を追い詰めた名探偵のようだ。

崩れる犯人のアリバイ

依頼人が青ざめる。「えっ、でももう契約は結んだし……」

ここで俺が割って入る。

「契約書はともかく、登記申請となると……法務局は甘くないっすよ。名前の一字違いは“別人”って扱われます」

法務局という検察官

法務局は厳格だ。まるで被告人の肩書一つで判決が変わるように、漢字の一文字で判断が分かれる。「齊」と「斎」、この二文字の間には、深くて暗い谷がある。

解決編 電子署名を再取得せよ

「じゃあ、新しく作り直してもらって、それを再度添付するってことで……」

「そうなりますね」と、サトウさん。

やり直しの儀

あとは依頼人に事情を説明し、丁寧に訂正を依頼するだけだ。……いや、それがいちばん骨が折れる。

依頼人は語る「名字が違うのは親のせい」

「うちの戸籍、旧字で登録してあって、僕自身はずっと“斎藤”で通してるんですけど……」

うん、よくあるパターンだ。だが電子署名は、戸籍上の名前であることが前提。正式な書類ほど“通称”は通用しない。

そして誰もがミスをする

今回も何とかやり直しで済んだ。だが、この漢字ミス、誰にでも起こり得る。俺だって危うく「真藤」と間違えて署名しそうになったことがある。……いや、ほんとに。

そして再び静寂が戻る

日が傾き、事務所の時計がカチカチと時を刻む。

「先生、次の案件、さっきのより厄介ですよ。韓国籍の方の帰化後登記です」

サトウさんが笑いながら新たな書類の束を置く。

やれやれ、、、今日もまた一筋縄ではいかない。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓