合筆分筆ミスで地獄を見る日

合筆分筆ミスで地獄を見る日

合筆分筆ミスで地獄を見る日

朝イチの電話がすべての始まりだった

司法書士にとって、朝イチの電話は基本的にロクな知らせではない。
「おはようございます、昨日お願いした件、地番が違ってるみたいなんですが」
受話器の向こうの声は、にこやかだが容赦ない依頼人のそれだった。
見慣れた土地のはずだった。確かに謄本も目を通した。だがどこか引っかかる。
地番が1つズレている?そんなバカな。

見慣れた地番に潜む違和感

土地の謄本を確認する。あれ、この地番…昔、合筆したような記憶が…。
ページをめくる手が止まった。まるで昔の記憶が、今の自分に「お前がやったんだよ」とささやいてくるようだ。

依頼人の「簡単な話だから」がフラグ

「シンドウ先生、これ、簡単な登記ですから」
その一言に、昔の自分はにっこり頷いた。そう、油断という名の伏線を残して。
サザエさんで言えば、カツオが「今日は先生に怒られない気がする」って言った回の冒頭みたいなもんだ。

謄本を見てフリーズした朝

目の前の謄本。何かが決定的におかしい。
筆数が…合っていない。
合筆処理したはずの筆が、なぜか分筆されたまま存在している。
うっすらと額に汗がにじむ。これは…自分のミスか?

地目じゃない 地番がズレている

思わず、サトウさんを呼ぶ。「この地番さ…おかしくないか?」
「えぇ、おかしいですね。というか、合筆されてないことになってますよ」
書類上は確かに合筆してあるはず。だが実際の登記簿には、なぜかその筆が生きている。
やれやれ、、、これは完全に地獄コースだ。

合筆前提の分筆という無理筋

分筆申請をしたのは先週。しかしそれは、数年前に合筆済みとされた地番を前提にした処理だった。
つまり「存在しない筆を分けた」ことになっている。

ミスが起きたのは誰なのか

責任のなすりつけ合いは簡単だ。でも、実際に書類を提出したのは自分だ。
探偵モノならここで「真犯人は…あなただ!」と指差す場面だが、指先は虚しく自分を指していた。

サトウさんが黙り込んだ瞬間

日頃、毒舌気味で仕事もバリバリな彼女が、黙った。
黙ってキーボードを叩き、何かを検索し、黙って資料棚を見つめている。

一通のFAXで浮上した過去の処理

突然、事務所にFAXが届く。数年前に合筆処理を担当した不動産屋からだった。
「当時の地番、間違ってました。合筆処理されてなかったようです」
ドサッと心が折れた音がした。

数年前の申請に仕込まれた罠

どうやら提出された地番リストが、最初から1筆ずれていた。
当時の自分は確認もせず、ゴム印を押し、申請書を提出してしまっていたらしい。

なぜ誰も気づかなかったのか

謄本は確認した。法務局もスルーした。依頼人も満足していた。
全員が「見た気になっていた」だけだった。

法務局の回答がまさかの二転三転

「これは…登記官が判断することなので…」
というフレーズがループ再生される数日間。
最終的な返答は「訂正は可能だが、新たな図面が必要」。

書類一枚で人生変わる

この1枚がなければ、全体の流れが止まる。そんな書類を作るのに、何日もかかる。
まるで怪盗キッドが予告状の一文字を間違えたことで、計画が全部台無しになるような話だ。

システムに残された地獄の足跡

登記簿は訂正できても、システムに残る履歴までは消せない。
あの時の自分が残した”ノイズ”は、未来の誰かをまた困らせるかもしれない。

土地は消せても履歴は消えない

依頼人には何とか謝罪と補正で許してもらえた。
だが、自分の中の「自信」という名の筆は、完全に消えた。

「前の司法書士が…」では済まされない

過去の自分に言いたい。「一つ一つの地番を疑え」と。
他人のせいにするのは簡単。でも依頼人には関係ない。

登記簿に残る傷と責任

筆が一本違えば、土地の価値も、境界も、信頼も変わる。

説明しても伝わらない依頼人

「なんかよくわからないけど、直してくれたならいいよ」
その言葉に救われたが、同時に背筋が寒くなった。
「次はちゃんとやってくださいね」
と言われた時、心の中で正座した。

結果オーライが最悪の敵

結局、無事に終わった。
でも「今回もなんとかなった」が積み重なると、足元がボロボロになる。

やり直しの地獄が始まる

次の案件では、謄本を三度見するようになった。
そのたびに、地獄の朝を思い出す。

手間と信頼は比例しない

丁寧にやっても褒められない。ミスしたら一発でアウト。
それが司法書士の現場だ。
やれやれ、、、今日も神経をすり減らすだけの一日が始まる。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓