最終登記をした男

最終登記をした男

最終登記をした男

朝イチの依頼と奇妙な登記簿

事務所のドアが軋む音とともに、ひとりの中年男性が現れた。
無精髭に古びた鞄。いかにも「何かある」空気をまとっていた。
「登記を頼みたいんです。今日中に」と彼は言った。

依頼人は既に死亡していた

だが、その午後。サトウさんが電話越しにぽつりと言った。
「さっきの依頼人、先週亡くなってます。新聞に載ってました」
やれやれ、、、幽霊相手に登記なんて、オカルト司法書士じゃないんだから。

サトウさんの冷静すぎる観察眼

「靴、濡れてましたよね。あれ、今朝雨降ってないですよ」
すでに彼女の中ではいくつかの仮説が動き始めていたらしい。
「それに、本人確認書類が“仮免”だったのも変です」

地番の謎と過去の登記履歴

登記簿を確認すると、その地番は奇妙なことに3年前で時が止まっていた。
それ以降、誰も所有しておらず、書類も曖昧なままだった。
しかも、どこかで見たような筆跡が過去の登記にも残っている。

二重登記の影に潜む策略

「この登記、1ヶ月前にも似た依頼があった」と気づいたのは、俺だった。
やれやれ、、、珍しく俺の方が早く気づいたとサトウさんに伝えると、
「そうですか」と塩のような笑顔を見せてくれた(気がした)。

登記申請書に仕掛けられた暗号

申請書の字面を見つめていたら、不意にルパン三世のテーマが頭に流れた。
“本名”ではなく“符号”で動く相手。怪盗さながらだ。
筆跡を拡大してみると、数字が何かを示していた。

サザエさん的すれ違いと勘違い

登記官に連絡を入れたら、別件で同じ地番の書類が届いていたとのこと。
しかも宛先が違う。まるでカツオが2通のラブレターを出したような混乱だ。
だがその混乱こそが、犯人の仕掛けた時間稼ぎだった。

元野球部の反射神経が光る瞬間

「登記官をだますには、何を偽るか」サトウさんの言葉でピンときた。
急いで法務局へ走る俺。走るというよりダッシュ。久々にスパイクの感覚。
途中、石に躓いたが昔の練習の癖で華麗にスライディング回避。ナイス俺。

真犯人は司法書士を見ていた

書類を手に戻ると、見知らぬ若者が事務所前でうろついていた。
「その土地、どうしても手放したくなかったんです」
あの男の息子だった。父親になりすまし、登記を操作しようとしていたのだ。

登記官の一言が導く突破口

「シンドウ先生、登記の前に“遺産分割協議”が必要です」
そうか、登記そのものではなく、“相続”を通しての詐取が目的だった。
つまり、彼は“登記”を利用して遺言書の存在を塗りつぶそうとしたのだ。

やれやれ、、、遺言の落とし穴か

古い遺言と新しい登記。どちらが法的に優先されるのか。
このあたり、法律の迷路はまるで迷宮入りする探偵アニメのようだ。
でも俺には武器がある。司法書士の知識と、サトウさんの分析眼。

サトウさんの塩対応が意味するもの

「で、どうなったんですか。犯人は捕まったんですか」
「逮捕まではいかない。でも登記は却下された」
「ふーん」とだけ返されたが、ほんの少し頬が緩んだ気がした。

登記簿を閉じたとき事件も終わった

案件が終わった登記簿を閉じると、やけに静かになった事務所。
外では夕暮れ、セミが鳴いている。
静けさの中に、事件の余韻だけが残っていた。

すべては“最終”の意味にかかっていた

“最終登記”とは、すべての終わりではなく、新たな混乱の始まりだった。
それを利用した巧妙な策略。まさに怪盗レベルの犯行だった。
だけど、俺たちは見逃さなかった。いや、サトウさんがだけど。

書類の整理と心の整理

ファイルを閉じ、引き出しにしまう。事件が解決したあとの儀式みたいなもの。
もう一つのファイル。実は俺が間違ってコピーしていた書類が混ざっていた。
やれやれ、、、最後まで気は抜けない。

次の依頼人がドアをノックした

「こんにちは。登記についてご相談があって」
また一人、物語の種を持った依頼人が現れた。
俺の仕事は終わらない。いや、たぶん終わってはいけないのだ。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓