夜になると、思考が止まらなくなる
日中はやることが山積みで、あれこれ考える暇もない。相談者の電話に対応し、書類を作成し、法務局に走る。そんなふうに身体が動いているうちは、感情の整理なんて後回しだ。でも、夜になると一転する。静かな部屋に一人きり。無音の中に浮かび上がるのは、処理しきれなかった言葉や、対応しきれなかった感情たち。疲れているのに眠れない。そんな夜が続くと、「自分って何のために頑張ってるんだろう」なんて、思考がぐるぐる回り始める。
昼間の忙しさが、逆に心を散らかしていく
忙しいことはありがたい。収入にもつながるし、役に立っている実感もある。でも、ふと立ち止まる時間が持てないことが逆にしんどくなる瞬間がある。気がついたら、感情を棚上げしたまま数日経っていて、気持ちの渋滞が起きている。過去の依頼者とのやりとり、怒られたこと、傷つけてしまったかもしれない一言、思い出したくもないのに夜中になると勝手に再生される。そんな経験、ありませんか?僕はほぼ毎晩そうです。
「一人」であることの意味を考え始める
独身だし、友達と呼べる人も少ない。相談できる同業者もほとんどいない。誰かと会話をしたいと思ったときに、連絡できる人がいない。だから「一人」であることが時々、とても重たい。自分で選んだ人生ではあるけれど、正直、不安になる。風呂上がりの部屋、テレビもつけず、暗い部屋でふと「このまま死んだらどうなるんだろう」と考えたりする。夜は、心の穴が広がる時間帯なのかもしれない。
思い出すのは、うまくやれなかった会話
「あのとき、ああ言えばよかった」って思う瞬間がやたら多い。相談者に少し冷たくしてしまったなとか、逆に出過ぎたことを言ってしまったかなとか。思い出すのは、成功した案件じゃなくて、少しだけ失敗したやりとりばかり。人に嫌われたくないくせに、相手の顔色をうかがうのが下手で、そのギャップがまた自己嫌悪につながっていく。夜は、そんな後悔を何度もリプレイさせる。
心の整理が「仕事」ではできない理由
司法書士という仕事は、表面的にはとても整った世界に見える。書類を作り、手続を進め、法的に正しいかどうかをチェックする。でも、自分自身の感情や悩みを「手続き」で片付けることはできない。依頼者に共感しすぎてもいけないし、突き放しすぎても関係が築けない。だからこそ、心が中途半端なところで宙ぶらりんになる。
書類は整理できても、気持ちは片づかない
机の上はきれいにできても、心の中はどんどんごちゃついていく。登記簿は正確に処理できるのに、自分の感情は行き先がない。そんな矛盾を感じるたび、仕事の成果とは裏腹に「自分が置いてけぼりになってる」感覚がある。人の人生の大事な場面に関わる職業だからこそ、自分のことを後回しにしてしまいがち。でも、それじゃいつか限界が来る。
依頼者の感情に引きずられてしまうとき
相続の手続きで涙を流す方、離婚の登記で複雑な感情を抱える方。そんな人たちに日々接していると、こっちの気持ちも揺れることがある。共感力が高すぎるのか、家に帰ってからもその人のことを考えてしまったりする。感情の境界線を引くのが苦手なんだろう。知らないうちに相手の重たい荷物を少しずつ背負っていて、気づいたときには自分の心もズシリと重くなっている。
境界線を引くのが下手な性格
「そこまで関わらなくていい」「業務として割り切ればいい」って頭ではわかっている。でも、それができない性格なのだ。高校時代からそうだった。友達が悩んでると放っておけなかったし、損な役回りばかり引き受けていた。司法書士という仕事は、そういう人間にはちょっと毒かもしれない。気づいたら、自分の感情が削れている。
心を消耗していく日々に慣れすぎた
疲れていても「まあこんなもんだ」と思ってしまう。感情の摩耗にすら鈍感になる。怒りや悲しみすら感じなくなったら、危険信号なんじゃないかと思うのに、それでも日常は回っていく。「やるべきことがあるから」という理由で、心のSOSを見ないふりしているのかもしれない。
誰かの夜が、少しだけ楽になることを願って
こんなことをわざわざ文章にしても、意味があるのかは分からない。でも、同じように眠れない夜を過ごしている誰かが、これを読んで「自分だけじゃないんだな」と思ってくれたら、それだけで救われる。司法書士という仕事に限らず、誰かの役に立とうとして頑張ってる人ほど、心が疲れやすい。そんな人に、この文章がほんの少しでも寄り添えたら嬉しい。
同じ夜を越えてきた司法書士として
僕も、あなたと同じように、何度も「もう無理だ」と思いながら机に向かってきた。「こんな仕事、辞めてやる」と思った夜もあれば、机で泣いた夜もある。それでもまた朝が来て、メールが届いて、誰かが助けを求めている。そうやって、なんとなく続けてきた。だからあなたも、今日だけは無理に気持ちを片付けなくてもいい。散らかったままでも、なんとかなる。
ここまで読んでくれたあなたへ伝えたいこと
あなたの心が今、どれだけ疲れていたとしても、それは恥ずかしいことじゃない。むしろ、誰かのために頑張ってる証拠だと思う。完璧に整理整頓された心なんて、どこにもない。ぐちゃぐちゃのままでも、自分を否定せずにいてほしい。夜が長いと感じる日は、誰かの温もりを思い出してください。たとえそれが一瞬の記憶でも、心の中でそっと灯る光になることを信じて。