また電話に出られなかった日の言い訳を並べながら

また電話に出られなかった日の言い訳を並べながら

電話に出られなかっただけでなぜこんなに気まずいのか

電話を一本逃しただけ。それなのに、心の中にじわじわと広がるこの気まずさと後悔の波は、どうしてこうも大きいのか。司法書士という仕事柄、「電話に出られない=仕事を逃した」と感じてしまう。特に、初めてのお客様からの電話だったり、依頼中のクライアントからだったりすると、その一本が命綱のように思えてしまう。現実はただの不在着信なのに、なぜか一人で「信用を失ったんじゃないか」と思い詰めるのだ。

鳴り響くスマホと罪悪感の波

移動中、あるいはほんの数分、トイレに立ったそのタイミングでスマホが鳴る。そして数秒後に表示される「不在着信」。その通知を見るたびに、まるで怒られたような気分になる。すぐにかけ直しても留守番電話。かけ直すべきか、それとも待つべきか。その間にまた他の仕事が入ってきて、タイミングを逃し続ける。そんな日が何度あっただろう。電話を一本取り損ねただけで、その日の自分の評価が急降下したように感じてしまうのだ。

たった数コールで心がざわつく理由

なぜこんなに気になるのかといえば、電話は“待ってくれない”からだと思う。メールなら後で読める。LINEも履歴が残る。でも電話だけは、出なければそれで終わり。相手の熱意や期待、あるいは不満までもが、着信履歴に詰まっている気がする。しかもそれが誰だったのか分からないときのモヤモヤといったらない。特に、非通知でかかってきたときの絶望感には、もうどうしようもない無力さが襲ってくる。

出ようと思ったら切れていたという現実

これがまたよくあるのだ。「あっ、鳴ってる!」と気づいてポケットからスマホを取り出した瞬間、ピタリと鳴り止む。出ようとしたのに。ほんの数秒だったのに。それでも相手からすれば「出なかった人」になってしまう。こちらとしては、出ようとしていたのに、という気持ちでいっぱいだが、その事実は伝わらない。仕事において、この“出ようとしたけど出られなかった”という言い訳が、何の役にも立たないことを思い知る瞬間でもある。

常に机にいるわけじゃないという当たり前

司法書士という職業は、思っている以上に動き回る仕事だ。役所へ、法務局へ、金融機関へ、時にはお客様のご自宅へ。じっと事務所に座って電話を待っていられる日なんて、ほとんどない。それなのに、電話は事務所の固定番号にかかってくる。つまり、物理的に出られないことの方が圧倒的に多い。だけど、それが相手に伝わることはない。電話に出ない=不在、あるいは無視とすら思われかねないのがつらいところだ。

法務局往復が1日に何回もある

登記の補正や書類の追加提出のために、法務局へ行ったり戻ったりするのは日常茶飯事だ。一度で済めば良いが、補正が複数にまたがると、午前に一回、午後にもう一回…という具合に振り回される。そんな時、事務所に戻るたびに不在着信が3件、4件と増えていると、どこかで自分の要領の悪さを責めたくなる。スマホを携帯しているが、車の運転中や法務局の窓口での対応中は出られるはずもない。

移動中の不在着信が一番のストレス

移動時間はある意味“自分の時間”でもあるが、そこに着信があると、一気に落ち着かなくなる。「誰からだろう」「今すぐかけ直した方がいいのか」とソワソワしてしまい、運転にも集中できない。もしも急ぎの案件だったらと考え始めると、たった一件の着信で胃がキリキリしだす。ナビの音声と着信音が重なる瞬間なんて、もう地獄。無事故でここまで来たのは、ある意味奇跡かもしれない。

Bluetoothイヤホンが機能しない日もある

一応、運転中でも応答できるようにBluetoothイヤホンを常備している。でも、肝心なときに限って電池切れだったり、なぜか接続が切れていたり。そういう日は、無理に手で取るわけにもいかず、泣く泣く見送るしかない。便利なはずの道具に裏切られた気分になりつつ、帰ってからまた「不在着信3件」の文字にうなだれる。このあたりの“技術に振り回される日常”も、なかなかにストレスだ。

そもそも電話対応が苦手になってきた

年齢のせいか、単なる性格なのか、とにかく最近、電話に出るのが少し怖いと感じるようになった。相手が何を言うのか、どんな感情で話してくるのか、想像するだけで緊張する。特に、知らない番号からの電話は、何かトラブルの予感すらしてしまう。これでも一応、司法書士として人と話すことが仕事のひとつなんだけど、不思議なもので、年々“電話応対”がプレッシャーに感じるのだ。

内容の重さと声色の読み取りが怖い

電話というのは、相手の声色がすべてになる。その声から、怒っているのか、焦っているのか、あるいは信頼してくれているのかを読み取らないといけない。それがもう、しんどい。言葉の端々にある“責め”や“疑念”を勝手に感じ取ってしまい、必要以上にへこんでしまう。面と向かっていれば違うのに、電話越しではこちらの感情もうまく伝わらず、ただ一方的に受け身になってしまうのがつらい。

相手が怒っている気がして勝手にビビる

「今、お電話よろしいでしょうか?」という一言がないだけで、「なんだこの人、怒ってるのか?」と早とちりしてしまうことがある。実際はそんなことないのかもしれないけど、こちらの心が疲れているときほど、その読み違いは激しくなる。特に、先日トラブルがあったばかりのお客様からだと、第一声を聞いた瞬間から防御態勢に入ってしまう。そして案の定、話がかみ合わず、さらに自己嫌悪という流れになる。

結局メールでお願いしたいと願ってしまう

電話だと、思ったように話せないことが多い。聞き返しも気を遣うし、メモが間に合わないこともある。そうなると、ついつい「できればメールで連絡してくれれば…」と思ってしまう。だけど、メールでは温度感が伝わりにくいのも事実。便利さと不便さが入り混じった中で、今日も「また電話に出られなかった」ことへの罪悪感だけが蓄積されていく。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。