登記完了の連絡をし忘れて冷や汗をかいた午後

登記完了の連絡をし忘れて冷や汗をかいた午後

登記完了の連絡をし忘れて冷や汗をかいた午後

司法書士という職業柄、正確さと信頼が命だということは百も承知しているつもりです。けれど、その日、私はうっかり「登記完了の連絡」をし忘れていました。普段なら事務員と確認し合って処理する作業なのに、なぜかその日はぽっかりと抜けていたのです。午後のまどろみを破るように鳴った電話、依頼人の静かな声。「登記、どうなってますか?」という問いかけに、背中を冷たい汗が流れました。ああ、やってしまった、と胸の奥がぎゅっと締めつけられるような感覚。あの瞬間の自己嫌悪は今でも思い出すだけで胃がキリキリします。

あの時の一通の電話がすべての始まりだった

午後3時過ぎ、ちょうど郵便物の仕分けをしていた頃、電話が鳴りました。相手の名前を聞いた瞬間に、脳の奥で何かが点滅するような違和感がありました。そういえば、あの登記、完了してたよな…と自分の中で確認する。でもその次の瞬間、「あれ、連絡したっけ?」と不安が波のように押し寄せてきたのです。応対しながら、過去の記憶を必死でたどる。自分でも信じたくなかったけれど、その違和感は的中していました。依頼人は怒ってはいませんでした。ただ、「状況を知りたい」と落ち着いた声で言われたのが、逆にこたえました。

相手の声に一瞬で血の気が引く

声は静かで丁寧。だからこそ、余計に怖かったんです。怒鳴られる方がまだマシだったかもしれません。私はとっさに「すぐに確認いたします」とだけ伝え、一度電話を切りました。そして、すぐに事務員に「この件、完了連絡したっけ?」と確認。彼女は「えっ…私じゃないと思います」と言いづらそうに答えました。あのやりとり、きっとお互いが「相手がやった」と思ってたんでしょう。連携ミス。それは小さなほころびのようでいて、信頼関係を揺るがすには十分な事態です。

電話を切ったあとに押し寄せる後悔と焦燥感

電話を切った瞬間、心の中で「終わった…」とつぶやいてしまいました。もちろん業務的には終わってないし、登記自体はきちんと完了している。ただ、それを伝えていなかった。それがどれほどの不安を相手に与えたか、想像するだけで申し訳なさが募ります。誰も怒っていない。でも私は自分に怒っていた。些細なことで信頼を傷つける。これほどつらいことはありません。

ミスの原因はどこにあったのか

今回の件、原因をたどると、やはり「確認不足」でした。忙しさにかまけて、タスクを感覚で処理していた自分がいた。登記完了後の連絡も「たぶん、やった」くらいのあやふやな記憶で流してしまった。これは言い訳のしようがありません。業務を管理する人間としての自覚が足りなかったと反省しています。とはいえ、どんなに注意していても、人間はミスをする。だからこそ、チェック体制が必要だったのです。

事務処理の流れに潜む落とし穴

うちは小さな事務所で、スタッフも事務員ひとり。案件の大小問わず、手分けして対応しています。問題は「この作業はどちらがやるのか」が曖昧な時があること。書類作成から提出までは私、連絡などの補助は事務員、というざっくりした線引きが、今回のような“すれ違い”を生むんです。言ったつもり、やったつもり。それが、落とし穴になってしまいました。

メモをしたはずの「完了報告」がどこにもない

さらに追い打ちをかけたのが、報告メモの不在。普段なら、完了連絡をした記録を手帳か共有ノートに残すようにしているのですが、このときはどこにも痕跡がなかったんです。「俺、書き忘れた?」いや、「連絡自体してない?」そうして記憶の迷路に迷い込んでしまう。忙しい時ほど記録を飛ばしがちになりますが、それこそが落とし穴。今回の件で身に染みました。

顧客対応で最も大事なことを思い出した

登記手続きそのものは、正しく終わっていた。けれど、その“完了したこと”を伝えること、それが相手にとってどれほど大事なことかを改めて思い知らされました。「やって終わりじゃない」。この基本中の基本が、実は一番難しいのかもしれません。信頼とは、細部に宿る。だからこそ、私たちのような職業には、丁寧さが必要なんだと痛感しました。

信頼は「連絡の一手間」に宿るという話

依頼人にとっては、登記が完了したかどうかは死活問題にもなりうる情報です。そこに少しでも連絡が遅れたり、報告が漏れたりすれば、不信につながる。今回のケースでは、怒られたわけではありません。でも、もしもこれが別の依頼人だったら? 私が女性だったら?(いや、それは関係ないか…)と、つい妄想が膨らみます。どんなに仕事が正確でも、連絡ひとつで台無しになる。これからはその「一手間」を惜しまないようにしようと思いました。

「たった一言」を怠ることの重み

「完了しました」というその一言。そのひと言が、どれほど相手の安心につながるのか。逆に、それがなければどれだけの不安を生むのか。今回は実際にミスをして、改めてその重さを実感しました。書類の正確さも、業務スピードも大事。でも「報告」の大切さは、それ以上かもしれない。そう自分に言い聞かせながら、これからの業務に向き合おうと思っています。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓