プリンター紙飲み込み事件はもう宿命と思うしかない

プリンター紙飲み込み事件はもう宿命と思うしかない

朝イチで事件は起きる

誰にだって「今日はサクッと片付くな」と思う朝がある。そんな油断が許されないのが、地方の司法書士の現場だ。朝の静けさに包まれた事務所で、僕は今日の登記申請書をプリントアウトしようとしていた。申請期限は午後一番。余裕だと踏んでいた。でもプリンターが、いつも通りその余裕を食いちぎってくる。「またかよ」とため息をついた瞬間、紙がゴリゴリと吸い込まれ、見事に詰まっていた。こっちは急いでるってのに、あいつは何も変わらない。

印刷ボタンを押したその瞬間

「印刷開始」の音とともに出てきたのは、いつもの「変な音」だった。うちのプリンター、印刷じゃなくて紙を食べてるんじゃないかと思うほど、噛みつく勢いで紙を引っ張っていく。ガシャガシャと不穏な音を立て、画面には「紙詰まり」の文字。もう慣れた光景だが、慣れたくない。朝から胃がキリキリする。昔、野球部でエースピッチャーだった頃はこんな不条理と戦うことはなかった。プリンターと対決する人生なんて、誰が予想しただろう。

ガガガッという音が不吉すぎる

「あの音」が聞こえると、心の中で「あ、来たな」と警戒モードに入る。車のブレーキの異音と同じで、トラブルの予兆は音に現れる。なまじ印刷できることもあるから、逆にその「ガガガッ」が聞こえた瞬間に心が冷える。「頼む、今日は大人しくしてくれ」って祈りながら、モニターを見る。だけど、やっぱり無理だった。運命には逆らえないらしい。

まるで紙に飢えた猛獣

あいつ、紙を吸い込むときの目つきが見えるようだ。空腹の獣のように、ずるずると吸い込み、途中で詰まって止まる。こっちが引き抜こうとすると「グシャッ」と潰れて原形を失う。それを見てまたイライラする。プリンターに意思があるなら、一度でいいから「ごめん、腹減ってた」とでも言ってくれ。そしたら許すから。

プリンターと私の長い戦い

この機種、買ってもう5年近くになる。導入当初はそれなりに活躍していたが、2年目あたりから調子が悪くなった。修理も考えたが、部品代がやたら高い。仕方なくだましだまし使っている。司法書士は書類との戦いだが、同時に機械との戦いでもある。プリンターに振り回される人生、それもまた業かもしれない。

メーカーとの相性が悪いのか

同業者に聞いても、「うちもだよ」と笑われる。プリンターって、どこのメーカーも似たようなもんらしい。だけど相性ってあると思う。高校時代のキャッチャーとも、最初はうまくいかなかった。けど何十試合も組んで、ようやく意思疎通できるようになった。プリンターとも、そういう関係が築けたらいいのにな。…無理か。

紙の入れ方が悪いと言われても

サポートに電話してみたこともある。「紙の入れ方に問題があるかもしれません」と、マニュアル通りの返答。そんなことはとっくに確認済みだ。でも言い返せない自分が情けない。素直に「はい」と言って電話を切る。それでも解決しないからまた詰まる。そしてまた自分を責める。「俺が悪いのか?」って。

それでも毎回詰まる理不尽

同じ紙、同じ向き、同じ力加減でセットしてるのに、詰まる日と詰まらない日がある。このランダムなトラブルが一番精神を削ってくる。まるで恋愛と同じだ。なぜかうまくいかない日がある。理由はわからないけど、うまくいかない。それでも繰り返すしかない。仕事だから。

紙詰まりは運命なのか

もう最近は「今日は詰まる日」と最初から決めつけている自分がいる。楽観すると裏切られるからだ。朝から詰まるとテンションは地の底だが、「やっぱりな」と思えば少しはマシになる。これはもう“宿命”と割り切るしかないのかもしれない。そう思うことで精神の安定を保っている。

何度も説明書を読んだ結果

実は説明書は3回読んだ。熟読した。YouTubeの分解動画も見た。それでも解決しない。結局、プリンターとの関係は「割り切り」だと気づくに至った。結婚生活と似ている。全てを理解しようとしても、無理なものは無理。受け入れて、付き合っていくしかないのだ。

直ったと思えばまた詰まる

分解掃除した後は一瞬だけ快調になる。希望が見える。でも1週間も経てばまた詰まる。人間関係もそうだ。一度仲直りしても、根本的なズレがあればまた衝突する。プリンターにも「根本的なズレ」があるんだろうな。お互い、変われないんだよ。だから仕方ない。

もうこれが俺の人生かもしれない

書類を印刷して、それを登記所に出して、帰ってきたらまた印刷して。また詰まって、またため息をついて。そんな日々の繰り返し。だけどそれが、俺の仕事であり、俺の人生だ。きっとこのプリンターとも、最期の日まで付き合っていく気がする。なんだかんだ、嫌いじゃない。いや、ちょっとだけ嫌いかも。

事務員の冷ややかな視線

紙詰まりを直している最中、背後からの視線が痛い。事務員が無言でこちらを見ている。何も言わないけど、「またですか?」という空気が伝わってくる。立場的には僕が上司だが、この瞬間ばかりは完全に“下”だ。そんな関係もまた味わい深い…のか?

「またですか?」の一言が刺さる

たまに彼女は小さな声で言う。「またですか?」って。その一言が、妙に効く。怒ってるわけじゃない、責めてるわけでもない。でも“諦め”が混じってるのがわかる。たぶん彼女も「また始まった」と思ってる。だが僕はその空気に耐えながら、紙を取り出す。

機械音痴は罪なのか

僕は正直、機械に強いわけではない。スマホだって、LINEの既読が付かないと焦るし、Excelも関数は苦手だ。プリンターの詰まりすら解消できない自分に、時々無力感を覚える。だが司法書士は、機械じゃなく人と書類に向き合う仕事だ。と、自分に言い聞かせている。

見栄を張って触るのがいけないのか

素直に「見てくれる?」って言えばいい。でも、つい見栄を張って「俺がやるよ」と手を出してしまう。その結果が、紙の無残な断末魔だ。たぶんこの見栄もまた、野球部仕込みの“俺がなんとかする精神”が悪さしている。そう思うと、ちょっとだけ笑えてくる。

プリンターよ、そろそろ和解しよう

毎日ケンカしてるけど、そろそろ休戦しよう。お互い、もう歳なんだから。買い替えも検討してるけど、別れが惜しい気もする。愛着なんてないと思ってたのに、いつの間にか情が湧いているのかもしれない。こいつとの時間が、なんだかんだ、事務所の日常になっている。

買い替えるべきか修理すべきか

プリンターも人も、歳を取るとガタが来る。でも完全に壊れてないなら、直しながら使うのも悪くない。買い替えは一瞬楽だけど、新しい相手にもまた慣れる時間が必要だ。そう考えると、今の関係を続けるほうが“楽”だ。これって、何かの比喩みたいだな。

でも思い出があるんだよな

このプリンター、何百件という登記書類を吐き出してきた。僕の独立初日から、ずっと一緒にいる。紙詰まりのたびに文句も言ったし、叩いたこともある。でも、こいつがいなかったら今の僕はない。そう思うと、捨てるには惜しい。やっぱり相棒なのかもしれない。

宿命と諦めることで得られる平穏

たぶん、プリンターが紙を飲み込むのは宿命なんだ。抗っても疲れるだけ。それより「またか」と笑って受け入れる。そうすると少しだけ、気持ちが楽になる。世の中、変えられないことも多い。でも受け入れることで、穏やかに進める日もある。…司法書士としても、人としても。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓