心が折れそうだったけど業務は止まらなかった日

心が折れそうだったけど業務は止まらなかった日

もう限界と思った朝の始まり

目覚ましが鳴った瞬間、「今日はもうダメだな」と思った朝だった。体が重いとか、眠いとか、そういうのを通り越して、ただただ心が空っぽだった。45歳の司法書士、地方で事務所を営みながら、誰にも頼れず業務をこなす毎日。独身で元野球部というのも、今となっては笑い話にもならない。あの頃の元気はどこへやら。布団の中で天井を眺めながら「誰か代わってくれないかな」と本気で願ったことを、きっと誰にも言えないだろう。

目覚ましを止めた後の無音がつらい

スマホのアラームを止めた後の部屋の静けさが、逆にうるさく感じた。何も聞こえないのに、心の奥で何かがギシギシと軋む音がする。やらなきゃいけないことは山ほどあるのに、動けない。それでも、出社しないと書類はたまるし、申請は待ってくれない。やるしかない、と自分に言い聞かせながら、重たい体をベッドから引き剥がす。無音の部屋に響く足音が、ひとりぼっちの生活を痛感させる。

事務員さんの明るさが逆に堪える

事務所に入ると、うちの事務員さんが「おはようございます!」と元気に挨拶してくれた。もちろんありがたいことなんだけど、心が折れかけてる日にはその明るさがまぶしすぎる。こちらの内面がボロボロであるほど、そうした健全なエネルギーが遠く感じられる。不思議なもので、心が沈んでいる時ほど、周囲の元気が目に痛い。「ああ、自分も昔はこんなふうだったかな」と、ちょっとだけ昔の自分を思い出した。

自分の元気はどこに置いてきたんだっけ

いつからこんなに疲れた顔ばかりするようになったのか。20代の頃は、どんな仕事も面白がってやってた。30代もまだ、そこそこ走れていた。40を過ぎてからは、気力が先に尽きるようになってしまった気がする。どこかで置き忘れたあの情熱を、今さら探す気力もない。ただ、目の前の業務をこなすことで日々が回っていく。そんな毎日を生き延びている。それでいいのかもしれないけど、本音を言えば、もうちょっと笑って仕事したい。

書類の山と気持ちの谷

デスクに座ると、昨日の書類の山がそのまま鎮座していた。まるで「今日も来たか」と言わんばかりに。書類は喋らないけれど、その存在感は人の心をじわじわと削る。とくに、登記関連の確認作業は気を張る分、精神的な負担が大きい。エラーは許されない。でも、集中力が続かない。気持ちが沈んでいる日は、ほんの小さなミスで自分を責め続けてしまう。「自分は向いてないのかもしれない」と、根拠のない結論にまで至る。

なぜか全部急ぎに見えてくる

不思議なもので、心が疲れている時は、どの案件も「今すぐやらなきゃ」と感じてしまう。実際にはまだ数日余裕がある依頼も、気持ちが焦ると全部が火急の仕事に見えてくる。冷静な判断ができないって、こういうことなんだと実感した。頭の中が散らかってるから、タスクも散らかる。優先順位をつける余裕すらない時、人はただ目の前の書類に手を動かすしかない。効率が悪いのはわかってる。それでも、止まるわけにはいかない。

集中できない自分に腹が立つ

ミスを避けたいのに、思考がすぐどこかへ飛んでいく。書類を開いた瞬間、過去の失敗が頭をよぎる。心ここにあらずの状態で申請書を見つめる時間が、ただただもどかしい。「自分は何年この仕事をやってきたんだ」と内心で怒鳴っても、集中力は戻ってこない。年を重ねれば慣れると思っていたけど、慣れれば慣れるほど、重さも増していくのがこの仕事なのかもしれない。自分の未熟さに、情けなさを覚える。

誰かに助けてほしいけど頼めない

実際、助けを求めたいと思うことはある。でも、頼れる人がいるわけでもなく、事務員さんに負担をかけるのも忍びない。結局は「自分がやるしかない」という結論に戻る。人を頼るのが下手なのか、頼る相手がいないのか。たぶん、両方なんだろう。だからこそ、どんなに心がすり減っても、今日もまた書類を抱えてパソコンの前に座っている。そんな姿を、自分だけでも認めてやりたいと思う。

電話一本が心を砕いてくる

ようやくひとつ申請書が終わったと思った瞬間、電話が鳴る。あの音が、時に拷問のように感じることがある。「どうか雑談じゃありませんように」と祈りながら受話器を取る。気を張って、相手の要望に丁寧に応えようとするけど、心の中では「もうちょっと後にしてくれよ…」と呟いている。たった一本の電話が、思った以上に心のエネルギーを奪っていくのだ。

予想外の問い合わせが地味に刺さる

「すみません、ちょっとお伺いしたいんですが…」という言葉から始まる電話は、案外クセモノだ。大抵こちらの予想を超えてくる。「法人の代表印って何種類あるんですか?」とか、「私、兄の代理人になれますか?」とか、咄嗟に答えづらい内容が多い。知識で返すだけじゃなく、状況を聞いて判断しなきゃいけない。その一つひとつが重荷になる。忙しい時ほど、そういう一本に心が折れそうになる。

優しく返した自分を褒めてやりたい

それでも、丁寧に、できるだけわかりやすく答えようとする。相手は悪くないし、むしろ不安を抱えて相談してきてくれている。だからこそ、イライラした声は出せない。電話を切った後、どっと疲れが押し寄せるけど、「ちゃんと対応できたな」と思えると少しだけ報われる。小さな達成感。でも、それが今の自分にはけっこう大きな支えだったりする。

だけど電話を切った瞬間どっと疲れる

あの「プツッ」という通話終了音が、疲れのスイッチを入れる。「ふう」と深くため息をついて、しばらく無言で天井を見つめる時間。たった数分の会話で、どうしてこんなに消耗するんだろうと自分でも驚く。でもきっと、心に余裕がない時ほど、何気ないやり取りも消耗戦になるのだ。電話を切るたびに「あと何件かけ直せばいいんだっけ…」と遠い目になる自分に、そっとエールを送りたい。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓