収入印紙消失の真相

収入印紙消失の真相

朝の印紙騒動

机の上の空白

朝、いつもより少し遅れて事務所に入ると、デスクの上がやけに整っていた。いや、整いすぎていた。封筒の上に置いてあったはずの収入印紙が、一枚も見当たらないのだ。
「サトウさん、印紙知らない?」と聞くと、彼女は一瞬だけ目を細めたが、答えは「知りません」の一言だった。
まさか盗まれたのか。いやいや、こんなものを盗んでもどうしようもないはずだ。

サトウさんの冷たい指摘

「また昨日、整理せずに帰りましたよね」とサトウさんは呆れたように言った。
彼女の指先が差す方向には、ゴミ箱にくしゃくしゃになった封筒の一部が見えた。
まるでルパンが予告状を破って証拠隠滅したかのように、、、いや、それはさすがに考えすぎか。

依頼人の登場

二枚足りないと騒ぐ男

そのとき、扉が開いて、中年の男性が慌てた様子で入ってきた。
「昨日渡した契約書、印紙が貼られていない! どうしてくれるんだ!」
ああ、これはいよいよマズいことになってきた。ミスの範囲では済まされない可能性すらある。

実印と偽名の匂い

契約書を改めて見直すと、印紙だけでなく、署名の筆跡にも違和感があった。
なんというか、サザエさんのノリスケが悪ふざけで書いたような、妙に丸っこくて、だらしのない署名。
「この名前、昨日の方と違ってませんか?」とサトウさんが冷静に指摘する。

過去の登記簿にヒント

似たような記録の再発見

書庫から過去の登記簿を探し出すと、三年前にも同じような名前の人物が問題を起こしていたことが判明した。
どうやら印紙だけでなく、偽名で複数の契約を結んではトンズラする常習犯らしい。
「まったく、登記業界の怪人二十面相かよ」と私はこぼす。

サザエさん式ループの謎

しかも、その登記簿には「印紙未貼付による無効の可能性あり」と赤ペンで大きく書かれていた。
「同じミスがループするのは、カツオが毎週叱られるようなもんですね」とサトウさんがぼそり。
皮肉めいたその一言が、今日一番の真実だった。

サトウさんの推理開始

貼り直しの癖を見逃さない

「この人物、印紙をわざと斜めに貼って、剥がせるようにしていたんじゃないですか?」
サトウさんが指摘した契約書の跡には、わずかに粘着跡が残っていた。
どうやら貼った後にこっそり剥がし、持ち去っていたようだ。

消えた印紙の流れを図解

サトウさんは手際よくメモ用紙に流れを描いていく。
契約→貼付→確認→撤収→逃亡という五段階の流れが、鮮やかに浮かび上がる。
「ここですね。あなたが気づかなかったの」とサトウさんが鋭く言った。

司法書士シンドウの動き

やれやれと言いながら立ち上がる

やれやれ、、、今日は静かに記帳だけして終えたかったんだが。
私は重たい腰を上げ、警察に連絡を入れることにした。
「収入印紙の不正使用について、通報したい件があります」

封筒の裏に書かれた落書き

念のためと確認した封筒の裏には、なぜか「また来るぜ☆」と書かれていた。
ふざけたメッセージに苛立ちつつも、私はふと笑ってしまった。
こいつ、どこかでまた会う気がしてならない。

事件の真相とその代償

犯人はまさかの人物

数日後、駅前で同様の手口を使っていた男が逮捕された。
別の事務所でも同じ被害が出ていたらしく、全国的に動いていた模様だ。
「やっぱりプロでしたね」とサトウさんが事務的に言った。

印紙が語る沈黙の証言

事件は終わったが、印紙そのものは戻ってこなかった。
無言でその価値を奪われ、使われずに終わる収入印紙。
まるで法の隙間に滑り込む闇のようだった。

サトウさんの一言とシンドウの愚痴

司法書士とは割に合わない職業だ

「こういうのって、割に合いませんよね。仕事量に比べて得られる満足感が少ないというか」
思わず私がこぼすと、サトウさんはうなずきもせずに、黙ってコーヒーを飲んでいた。
その無言が、何よりの共感だったのかもしれない。

それでも明日はやってくる

次の日もまた、変わらず朝が来た。
私は印紙の在庫を確認してから、深呼吸して事務所の鍵を開けた。
やれやれ、、、また何か起こるんだろうなという予感を抱えつつ。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓