老後設計が一番遅れている司法書士

老後設計が一番遅れている司法書士

老後設計が一番遅れている司法書士

老後を語る資格があるのかと自問する日々

登記の相談はプロだけど

自分の将来に関しては無計画の極み

他人の老後に口を出しすぎたツケ

「老後のご不安、よく分かりますよ」と僕は言った。
その瞬間、サトウさんが無言でこちらを見ていた。目線が痛い。
そりゃそうだ。目の前のお客さんの遺言書の相談には乗れても、自分の老後については白紙。
僕のスケジュール帳に“年金”の文字は一度も出てこない。出てくるのは「登記完了予定」と「コピー用紙注文日」くらいだ。
“老後設計が進んでない司法書士”。それはまるで、泳げないスイミングコーチみたいなもので――。

「この不動産、名義変更されてなくて…」
「じゃ、法定相続分で整理しましょう」
相続案件を語る時の自分は、ちょっと名探偵っぽい。名義の迷路を解きほぐし、書類の矛盾を暴き出す。
だけど“自分の名義”の未来は、まるでミステリー。まさか、相続されない側の気持ちをこんなに早くシミュレーションすることになるとは。

僕の老後設計の資料は、コンビニ袋の中にすらない。
年金定期便は、封も切ってない。
何なら切手貼って返送するタイプの郵送物は“怪しい手紙”として机の端っこに積んである。
そのくせ、レターパックには敏感に反応する。登記書類だけは完璧に返送するから困ったもんだ。

「お父様の介護資金の件も考慮して…」と語ってた自分、恥ずかしい。
その瞬間、心の中の波平さんに言われた気がした。
“お前の髪の毛より、将来の方が薄いぞ”って。
やれやれ、、、自分が語ってたことの空虚さに、深夜のカップ麺がしょっぱく感じるのだった。

貯金通帳よりもレターパックの数が多い現実

コーヒー代より先に積み立てるべきだった

老後資金よりプリンターのインク代が優先される職場

ある日、通帳の記帳に行ったら、残高が“それってバイトの初任給?”レベルだった。
思わず、駅前の公衆電話で何かの組織に報告したくなった。
「こちらシンドウ、資金はゼロに近い。応援求む」
通帳の残高よりも、今朝届いたレターパックの数の方が多かった。
仕事は順調。けれど人生設計は常に“未登記”。

コンビニのレジで、カフェラテを手に取ったときふと思った。
この250円、積立ててたら、今ごろ利子ついてたのでは?
そう思って返そうとしたが、次の瞬間、疲れた自分がささやく。
「老後は寝て待て。とりあえず飲め」

事務所の経費精算を見たサトウさんが一言。
「先生、インク代、また上がってますよ」
「うむ…じゃ、年金の積立は来月に…」
もはや老後はインクの残量以下である。

サトウさんとの世代ギャップと将来設計の話

実は堅実なサトウさんの年金対策

彼女の「つみたてNISAやってます?」にドキッ

若い人のほうが老後を見据えているという逆転現象

彼女は30代で、きちんと投資もしている。
「つみたてNISAやってます?」
「なにそれ、美味しいやつ?」
彼女は言わなかったが、その瞳には“この人、大丈夫かしら”という言葉が浮かんでいた。

「うち、iDeCoもやってるんで」
「ほほう。いい子だな」
と答えたが、“イデコ”が何か分からない。探偵漫画なら、この無知こそが事件の伏線だ。

独身司法書士のリアル老後シミュレーション

退職金もなし相続もされない人生

おひとりさま終活に向けてできること

万が一の時に連絡される人がいないという恐怖

老後、誰に看取られるのか。
誰が手続きをしてくれるのか。
もしや…サトウさん?
いやいや、無理だ。
彼女にはもっと幸せな未来があるはず。
となると、僕の最期は――セルフで行政手続きか?

ふと考えた。
誰もやってない“自分自身を登記する”サービスがあったら、利用者第一号かもしれない。
“終活登記”。権利者:自分。義務者:時間。
でも、きっと却下される。理由はこうだろう。「現実に即していない」

やれやれ老後設計にも登記事項があればいいのに

法定相続人がいないと寂しい

遺言書よりも先に老後の現実を書き出すべき

老後は登記できないけど心の整理はできるかも

不動産の名義変更みたいに、老後も「申請すれば変わる」ならいいのに。
将来不安って、申請書一枚で解決できないから厄介なんだよなぁ。
でも、そんなことをぼやきつつ、今日も誰かの「老後の不安」にきちんと対応している自分がいる。
その滑稽さを、自分ではもう笑えるようになっている。たぶん。
やれやれ、、、と思いながら、レターパックをポストに投函した。
――未来はまだ、白紙のままだった。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓