敷地に埋もれた真実

敷地に埋もれた真実

敷地に埋もれた真実

遺産分割の相談から始まった

「父が亡くなりまして、マンションを相続する話なんですが…」
朝一番に現れた依頼人は、やたらとスーツの肩が固かった。
区分所有の登記、敷地権も一体となってるなら普通の相続登記だ。面倒だけど、まぁよくある案件だと思っていた。

サトウさんの違和感

「シンドウ先生、この敷地権の割合…少し変です」
登記簿を睨んでいたサトウさんが呟いた。彼女が違和感を口にしたときは、大抵何かある。
俺は面倒を感じつつも、改めて資料を精査することにした。

敷地権とは何かと俺に聞くな

区分所有建物の登記の際、専有部分に対応する敷地権が一体で記載される。
要するに、建物だけでなく、その土地の権利も所有してるという話だ。
だが今回の登記には、ある一室にだけ「敷地権の登記なし」と記されていた。

登記簿に現れないもう一人

通常の相続ではまず見ない名前が、古い契約書にだけ登場していた。
「三宅信子」…依頼人の話には出てこなかった人物だ。
彼女の存在が敷地権をめぐる複雑な権利関係を浮き彫りにした。

マンションの共有部分に潜む闇

調べを進めるうちに、かつてその部屋で不審死があったという噂が浮かび上がった。
隣人が口を閉ざし、管理組合が話を逸らす様は異様だった。
まるで、部屋そのものが存在しなかったかのような扱いだ。

管理組合で消された記録

管理規約には、その部屋に関する記載がない。
過去の議事録も、なぜか平成18年から19年の部分がごっそり抜けていた。
わざと削除されたかのような痕跡だった。

亡くなった所有者の謎

かつてそこに住んでいたのは信子。だが、死亡届が出された記録がない。
戸籍上も行方不明のまま。生きてるのか、死んでるのか、誰も分からなかった。
しかし、固定資産税はずっと払い続けられていたのだ。

建替え話と殺意の交差点

マンションの建替え計画が持ち上がっていた。
全員一致での合意が必要。しかし、信子の所在不明な一票が邪魔だった。
そのせいで計画は止まり、誰かが明確に“排除”を決断した可能性が見え始めた。

司法書士としての直感

これは単なる登記の話ではない。
どこかで誰かが意図的に、信子の存在を消そうと動いていた。
俺の背中に、寒気と義務感が同時に走った。

サトウさんの一言で全てがつながる

「この管理費の引き落とし口座、依頼人のお兄さん名義ですよ」
サトウさんの指摘で全てが腑に落ちた。
名義上は信子だったが、実質的には兄が部屋を使っていた。名義を変えずに。

地中にあった意外な証拠

配管工事の際、駐車場の下から古びた布に包まれた骨が出てきた。
鑑定の結果、それは信子のものと一致。
やれやれ、、、俺はただ登記の確認がしたかっただけなんだが。

被害者の本当の狙い

信子は建替え計画に反対していた。
その理由は、亡き夫との思い出が詰まった場所だからだったらしい。
それが、兄にとっては“邪魔”な存在になってしまった。

犯人は敷地権にこだわった

遺産としての価値ではなく、建替えによる立退き料を狙っていた。
その金額は一千万円を超えると言われていた。
兄はそれを手にするために、信子を“消した”のだ。

登記簿の空白を埋める

俺の役目は、信子の戸籍を追い、相続人を確定させることだった。
そして、不動産の名義を適正に移す。
これが司法書士としての“事件解決”だ。

やれやれ俺はただの司法書士だ

警察が兄を連行していくのを見届けた帰り道。
俺はコンビニで缶コーヒーを買い、サトウさんにおつかれ、とだけ言った。
「やれやれ、、、こんな事件にまで首を突っ込むとは思わなかったよ」

最後に笑ったのは誰か

サトウさんが一言、「司法書士って探偵業務も込みなんですね」。
いつもの塩対応だが、少しだけ口元が緩んでいた気がする。
ま、俺は俺で悪くない仕事をしたんじゃないかと思うことにした。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓