“いない前提”でまわす日常──人手不足に慣れてしまった司法書士のリアル

“いない前提”でまわす日常──人手不足に慣れてしまった司法書士のリアル

人手が足りないのが“当たり前”になってるという異常

司法書士をやっていて日々感じるのは、「これ、普通じゃないよな…」っていう働き方に慣れてしまってること。毎朝、予定表を見ながら「この件はあの人がやる…いや、いないから自分でやるか」みたいな判断を当たり前のようにしてる。どこかで麻痺してるんだろう。世間では「働き方改革」なんて言葉が飛び交ってるのに、うちは“人が足りないのが前提”のスケジュールが組まれてる。おかしい。でも、それに文句を言う前に「で、どう回すか」って頭が動いてしまう。それが日常。完全に感覚が壊れてる。

「いつも誰かがいない」前提のスケジュール

昔は「誰かが欠けると困るな」と思ってたけど、今はもう「誰かがいないことを前提に動こう」になってる。うちは事務員一人。彼女が体調崩したり、家の事情で早退したりすると、もう完全に自分ワンオペ体制になる。これが月1くらいならともかく、週に何度もあるとさすがにしんどい。でもスケジュールは容赦ない。役所も金融機関も「司法書士が疲れてる」なんて気にしてくれないし、書類は待ってくれない。結局、「誰もいない前提」の予定を組むクセがついてしまう。正直、心がどんどん荒んでいく。

人手が増えないことへの怒りより、諦めが先に来る

最初は腹が立ってた。「なぜこんなに人が集まらないんだ?」「自分の仕事がそんなに魅力ないのか?」って。でも、そのうち怒りはなくなって、「ああ、こういうもんなんだな」ってなった。諦めの方が早かった。ハローワークに求人出しても応募ゼロ。たまに問い合わせがあっても、「扶養の範囲内で」「残業できません」「週3希望です」って。いや、それで回ると思ってるの?って思うけど、誰も悪くないんだよな。社会全体がそうなんだと思う。司法書士事務所が特別ブラックなんじゃなくて、求職者側の意識とも合ってない。それが現実。

「誰かがいれば楽になる」けど、その“誰か”が現れない

この前、友人の税理士に「事務員をもう一人雇えばいいのに」って言われた。でもね、その「もう一人」が現れないんだよ。条件もそんなに悪くないと思うけど、それでも応募が来ない。来ても長く続かない。前に20代の方が来てくれたけど、3ヶ月で辞めた。「思ってたより業務が地味でした」って。うん、そうだよ。華やかさなんてない。むしろ、ずっと同じような書類を地味にチェックし続ける毎日。そんな仕事に向いてる人、少ないのかもしれない。だから「誰かいれば楽になるのに」って思っても、現実はずっと一人。

休むときの罪悪感、出勤しても感じる敗北感

本来なら「今日はちょっと休もうかな」って言える立場のはず。でも、誰も代わりがいないと休むこと自体が申し訳なくなる。休めばその分のしわ寄せは全部自分に返ってくるし、逆に無理して出勤しても「今日も何も進まなかった…」って敗北感でいっぱいになる。結局、体を壊すか、心を壊すかの二択しかないんじゃないかとすら思うときがある。昔は「責任ある仕事ができるのは誇り」と思ってた。でも今は、ただ「逃げられないだけ」のように感じる。やりがいと責任って、こんなに苦い味だったっけ。

人を増やせない理由、聞く?

「人手が足りないなら増やせば?」と簡単に言う人もいる。でも現実はそんなに甘くない。うちみたいな地方の小規模事務所じゃ、そもそも募集をかけても人が来ない。たとえ来ても、すぐに辞められる可能性が高い。育成する余裕がないからこそ、逆に人を増やすこと自体に消極的になる。完全に負のループだ。募集をかける手間すら面倒で、もう長らく放置してるというのが正直なところ。

求人を出しても応募が来ない現実

一時期、求人サイトやハローワークに広告を出したことがある。「未経験OK」「簡単な事務からスタート」と書いても、応募はゼロ。あるいは来たと思ったら「週3勤務希望で17時には帰ります」という方ばかり。こちらが求めてるのは戦力であって、パート感覚で働きたい人とはそもそもズレてる。そういう働き方を否定する気はない。でもこっちはギリギリで回してるんだから、理想と現実が合致しない。

「この仕事、向いてる人いるの?」という疑問

そもそも司法書士事務所の業務って、地味で根気が必要。華やかなイメージとは真逆で、細かい書類の確認、法律の解釈、期日の調整など、神経を使う仕事の連続だ。人と話すのが苦手な人には向かないし、かといっておしゃべり好きでも務まらない。絶妙なバランスと忍耐力が求められる。そんな人材が果たしてどれだけいるのか。最近は「自分が特殊なのかもしれない」と思い始めている。

“事務所に合う人”って…理想が高すぎる?

「うちの事務所に合う人が来てくれたら…」ってずっと思ってる。でもその「合う人」って、実はものすごく理想が高いのかもしれない。真面目で、責任感があって、気配りができて、ミスが少なくて、ある程度のPCスキルがあって…って、そんな人材が簡単に見つかるわけがない。たぶん自分自身が昔、理想に近かったから、他人にもそれを求めてしまってるのかもしれない。でも、そうやって人を探してるうちは誰も来ない。

新人を育てる余裕なんて、とっくにない

「人がいないなら育てればいいじゃないか」と思うかもしれない。でも、今の状態ではその“育てる時間”がない。教えるには時間も根気も必要で、何度もミスを一緒に乗り越えていかなきゃいけない。でも、今は毎日が納期との戦い。新人のミスをカバーしながら自分の仕事もこなすのは無理がある。だからこそ、即戦力が欲しい。でも即戦力なんて、そもそも応募してこない。つまり、詰んでる。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。