このまま年だけ取って何になるのか考えてしまう夜

このまま年だけ取って何になるのか考えてしまう夜

気づけば45歳 思ってたのと違う場所にいる

ふとカレンダーを見た時、45という数字が自分の年齢であることに改めて驚いた。若い頃、なんとなく描いていた「大人の自分」は、もっと落ち着いていて、余裕があって、人に頼られるような存在だったはず。でも実際はどうだ。日々の仕事に追われ、たまった書類に囲まれながら、夕方にはため息をついてコーヒーをすする自分。思ってたのと違う、そう感じずにはいられない。

理想と現実のギャップはいつからか

20代の頃は、司法書士になること自体がゴールだった。必死に勉強して、ようやく資格を取った時は、未来が開ける気がしていた。でも、実際に開業してみたら、予想外の現実が待っていた。仕事は確かにある。でも思ったより地味で、思ったより孤独だ。夜、コンビニの明かりだけが照らす帰り道を歩くたびに、「これが夢の結果なのか」と自問自答してしまう。

司法書士になれば安心できると思っていた

資格を取るまでは、とにかく安定がほしかった。地方でも食べていける、そんな甘い見通しだった。でも実際には、地元の高齢化、依頼の偏り、予想外のトラブル、そういったことに日々追われる。安心なんて一瞬。むしろ、常に何かが崩れそうなバランスの上で生きている感覚すらある。

食べていける でも満たされない

たしかに生活はできている。贅沢はしないが、困ってもいない。けれど、それが何だというのだろう。朝起きて、業務をこなし、夜眠る。ルーティンは安定しているが、心は空白のままだ。誰かに必要とされているという実感が持てない日もある。そんなときは、満腹なのに何かを食べたくなるような、妙な欠乏感が胸に広がる。

田舎の事務所という選択の重み

地元に戻って開業することに迷いはなかった。両親のことも考えたし、都会の喧騒には疲れていた。でも、田舎には田舎の孤独がある。近所付き合いもあるようでいて、深くはない。友人も散り散りになって、気軽に飲みに行ける仲間もいない。仕事の話を共有できる相手がいないというのは、想像以上に堪えるものだ。

仕事はあるけど話し相手がいない

事務員さんとは業務連絡中心。雑談がゼロではないが、やはり気を遣ってしまう。司法書士としての悩みや迷いは、なかなか共有できない。誰かに愚痴をこぼすわけにもいかず、結局、夜に一人でスマホを見ながら、SNSで誰かの成功談をぼんやり眺める。そんな日々が続くと、なんのために働いてるのか見失いそうになる。

独身であることへの妙なプレッシャー

昔は独身でいることをそんなに気にしていなかった。でも40を超えると、周囲の目が変わる。「結婚しないの?」という問いかけが、あいさつ代わりのように飛んでくる。気にしないようにしていても、やっぱりどこかで心がチクリとする。

なぜか説明を求められる現実

「なんで結婚しないの?」という質問に、正直うまく答えられた試しがない。モテなかったからなのか、仕事が忙しかったからなのか、それとも単に勇気がなかったのか。自分でも明確な理由はわからない。気づいたら年だけ取っていた。それだけの話だ。

モテないのか 諦めたのか 自分でもよくわからない

若い頃は恋もしたし、告白もした。でもことごとく実らなかった。相手のせいではない。たぶん、自分に魅力がなかったんだと思う。野球部だった頃の自信は、どこへ消えたのだろう。今では誰かに好かれる自分の姿が想像できない。

年々深くなる孤独の種類

若い頃の孤独は「一時的」なものだった。でも今の孤独は「常態」だ。朝起きてから寝るまで、一度も会話しない日もある。スマートフォンを通じた関係はあるけれど、誰かと「生きたやりとり」をしている感覚は希薄だ。このまま、誰にも心を開かずに年を取っていくのかと思うと、背筋が寒くなる。

それでも今日も朝が来る

どんなに鬱々とした夜でも、朝は勝手にやってくる。カーテンを開けて、顔を洗って、いつものスーツを着て出勤する。それだけでもう、自分に課せられた役割を生きている気がする。

こんな自分にも必要とされる仕事がある

どんなに気分が沈んでいても、依頼者の前では気を引き締める。相続の相談、登記の手続き、遺言の作成。自分が動かなければ前に進まない案件がここにはある。責任は重いけれど、そのぶん必要とされている実感がある。

悩みを抱えた依頼者の顔を見ると背筋が伸びる

中には涙ながらに相談してくる人もいる。親族との揉め事、財産の分配、法律という言葉の重みに戸惑っている姿を見ると、「この人を守るのが自分の役目なんだ」と思う。仕事としてだけでなく、人として真摯に向き合わなければいけないと感じる瞬間だ。

誰かの人生の節目に立ち会える重さ

司法書士の仕事は、誰かの人生の「節目」に関わることが多い。登記や相続は、たった一枚の書類で終わるように見えて、その裏にたくさんのドラマがある。笑いも涙も含んだ物語の脇役として、少しでも力になれるなら、それが生きがいになっていくのかもしれない。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。