自分の老後設計が一番進んでない気がする司法書士

自分の老後設計が一番進んでない気がする司法書士

将来のことを考えると眠れなくなる夜がある

夜中、ふと目が覚めてしまうことがある。目の前に積み上がった未処理の書類、パソコンのモニターの青白い光、そして静まり返った事務所の中で、「このままで本当にいいのか」と自問する。人の相続や遺言の相談は日常茶飯事。自分より若い依頼者が、老後の備えについてしっかり考えているのを見ると、焦りとも劣等感とも言えない複雑な気持ちになる。自分の老後、年金、生活費、住まい…全てが「後回し」にされてきた現実を思い知る時間。こんな時間に限って眠れないのが、またつらい。

人の老後は手伝ってきたけど自分のことは後回し

「先生、老後のことも考えてこの財産を整理したいんです」。そんな相談は毎月何件もある。資料をそろえ、登記を整え、後見や遺言のアドバイスまでする。そうやって他人の未来を整える一方で、自分の未来は真っ白のまま。情けない話だけど、「自分のことは後でいい」と、つい思ってしまうのが本音。気がつけば今年で45歳。独身、貯金もわずか。この先何を頼りに生きていくのか、明確な答えが出ないまま仕事だけが続いていく。

相続相談のたびに感じるモヤモヤ

相続の現場では、「生前の準備がいかに大事か」という話を、まるで人生の指南役のように語っている。でも、話しながら自分の心の中では「お前が一番準備できてないぞ」とツッコミが飛ぶ。相続人がいない場合の対応、遺言の書き方、成年後見制度の選択肢、そういった知識は頭に入っているのに、自分のケースになると一歩も進めない。依頼者から「先生も、もちろん準備されてるんですよね?」と聞かれて曖昧に笑った日もあった。まさに冷や汗ものだった。

計画性が必要なのはわかってるけど手が出ない

貯金計画、投資、年金受給、保険、住まいの確保…頭では理解しているのに、手が動かない。「まずは月1万円の積立からでも」と思っても、なぜか実行に移せない。原因は明確で、「今が忙しすぎるから」「タイミングが悪いから」と自分に言い訳しているだけだ。野球部時代の監督に言わせれば「甘えんな」で一蹴されるだろう。実際、どこかで「どうにかなるんじゃないか」という根拠のない楽観も捨てきれていない。けれど、現実は待ってくれないのだ。

やらなきゃとわかっていても時間がない

1日が終わると、「今日もやれなかった」とため息をつく。自分の老後設計を進める時間は、後回しにされるスケジュールの一番下にある。急ぎの登記や相談対応、役所への書類提出、事務員さんのフォロー…日常業務に追われると、自分の人生のメンテナンスに割く余裕が全くない。土日に時間があっても、疲れて寝て終わるだけ。年を重ねるほどに、「何もしないまま」が積み重なっていく怖さだけが、じわじわと心にしみ込んでいく。

「そのうち」がいつの間にか10年経ってた

「そのうちFPに相談しよう」「そのうち保険を見直そう」。そう思い続けて早10年。仕事に追われて気がつけば、老後までの時間の方が短くなりつつある。20代の頃、「老後なんて60代で考えればいいだろ」と笑っていた自分に、今なら真剣に説教できる。だが、過ぎた時間は戻らない。10年という時間があれば、積立も住宅ローン返済もできたはずだ。後悔だけが先を歩いている。焦りと自己嫌悪、それでもやる気が起きない不思議な感覚に、毎日飲み込まれている。

老後資金の話になると急に話を逸らしたくなる

老後資金の話題になると、自然と肩がこわばる。飲み会や士業の集まりで「投資信託がさあ」「うちのイデコはさあ」なんて話が出た瞬間、黙るしかない。なぜなら何もしてないから。聞かれても「まぁまぁ…ぼちぼち」と笑ってごまかすのが精一杯。けれどその会話のあと、家に帰って急に虚しくなる。「俺は、何をしてきたんだろう」と。

貯金よりプリンターのトナー代が先に気になる

本音を言えば、老後資金より今月のトナー代の方が切実だ。事務所のコピー機が紙詰まりしただけで一日のスケジュールが狂う世界。小さな事務所で経費を抑えてやりくりする中で、「老後のための資産形成」とか、「投資リテラシーを高めましょう」なんて綺麗ごとに見えてしまう瞬間もある。だけど、それを言い訳にしているのも事実だ。そろそろ現実に向き合わないと、「老後資金0円」の記事の事例に、自分が載る日が来てしまうかもしれない。

何かと経費がかさむ小さな事務所の現実

小さな地方事務所は、固定費との戦いだ。家賃、水道光熱費、備品、そして一番の重圧は人件費。事務員さんに辞められたら終わる、という恐怖と常に隣り合わせ。だからといって、自分の給与を上げる余裕もない。決して赤字ではないけれど、「残ったお金で老後の備えを…」と思えるほどの収支は毎月続かない。独立して良かったと思う日もあるけど、そのぶん背負う不安の重さには時折押し潰されそうになる。

収入はそこそこでも「安定」なんて言えない

世間から見れば「司法書士=安定職」と思われがちだ。でも実態は、個人事業主であり自営業。来月の売上は見えず、紹介や口コミが頼り。コロナ禍で収入が激減した月もあったし、法改正一つで業務が激変するリスクもある。「安定してていいね」と言われるたびに、心の中で「それはこっちのセリフだ」と呟いてしまう。表面上はスーツを着てキリッとしていても、内側はずっと、揺れている。

同級生との飲み会がだんだん怖くなる理由

かつて気軽に参加していた中学や高校の同級生との飲み会も、最近では気が重い。久しぶりに顔を合わせると、話題は「子どもの進学」「ローン完済」「早期退職」など、現実的な将来設計の話に及ぶ。自分はといえば、未婚・独身・貯金少なめの三拍子。笑ってごまかすけど、内心では孤独と焦りが交差する。昔の野球部仲間とグラウンドを走っていた日々が、今や夢のようだ。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓