朝の始まりに期待はしていない
最近、目覚まし時計の音で目が覚めても、まったく「今日も頑張ろう」とは思えない。朝ごはんも適当に済ませ、スーツに袖を通して鏡を見ても、疲れた中年男性が映っているだけだ。誰も「いってらっしゃい」と声をかけてくれる人はいない。独り身の司法書士として生きてきて、今さら寂しさを口にするつもりはないけれど、せめて一言、誰かから「今日も頑張ってね」と言われたら違うのかもしれないと思う。
目覚ましの音だけが今日を迎えてくれる
学生時代、野球部の朝練に向かうため、朝5時に起きていた。母がこっそりおにぎりを持たせてくれて、玄関先で「気をつけてね」と声をかけてくれたあの頃。今は目覚ましの機械音だけが「今日も働け」と命じてくる。たまには人の声で一日を始めたい。だけどスマホは静かなままで、通知も鳴らない。ひとり暮らしの朝は、ただ時間に押し出されるように始まっていく。
あの頃の朝練の方がまだ声があった
野球部の朝練は正直つらかった。でも、あのグラウンドには仲間がいて、「おはよう」「今日も頼むぞ」と声が飛び交っていた。たとえ泥だらけになっても、声をかけ合うことがどれだけ心を支えてくれていたか、今ならよくわかる。声って、こんなに大事だったんだな。社会に出てからは、そういう声が極端に減った気がする。
独り言が増えてきたのはいつからだろう
最近、自分でも気づかぬうちに独り言をつぶやいている。「あれどこやったっけ」「よし次いこう」って。誰も聞いていないし、返事もないけど、それでも言葉を発しないと何かが崩れそうになる。独り言で、自分の存在を確認しているのかもしれない。声に出すことが、せめてもの救いだと思いたい。
職場に着いても会話は最小限
事務所に着くと、パートの事務員さんが一言「おはようございます」と言うだけ。あとは、書類の確認や電話対応の伝達くらいで、ほとんど会話はない。もちろん彼女に責任があるわけじゃないし、むしろ黙々と丁寧に仕事をしてくれている。けれど、やはりどこかで「お疲れさまです」の一言が欲しくなる瞬間がある。無言で帰る彼女の背中を見るたび、何かを言いそびれているような気がしてしまう。
事務員との会話は業務連絡だけ
「この登記、今週中に仕上げです」「あの電話、折り返しお願いされてます」——そういう会話はある。でも、そこには温度がない。自分もたぶん同じように接してしまっているんだと思う。業務の効率はいいかもしれないけど、人としての交流はすっかり薄くなってしまった。彼女にとって私は、ただの「司法書士」なのだろうか。
「お疲れさまです」が自分の口からしか出ない
帰り際、「お疲れさまです」と私が言う。それに返ってくるのは、小さく「お先に失礼します」という言葉。もちろん悪いことじゃないし、業務としては十分だ。でも、時々むなしくなる。こっちは今日も依頼人と戦い、法務局と格闘し、なんとか一日を終えたのに、その頑張りを認める言葉は、自分自身で言うしかないのかと。
感謝の言葉が循環しない職場の空気
小さな事務所だからこそ、もっと感謝や労いの言葉があってもいい気がする。お互いが「言わなくてもわかってる」みたいな雰囲気で、結果として何も言わないまま終わる。そういう空気に、だんだん心がすり減っていく。言葉って、コストも時間もかからないのに、なぜこうも省略されてしまうのだろう。
登記の山と向き合うだけの時間
朝から晩まで、ひたすら登記と向き合っている。間違いが許されない世界だから、集中力は必要だし、プレッシャーも大きい。けれど、その頑張りは誰にも伝わらない。依頼人からは当然のように「早くお願いします」と言われ、終わったときの感謝も形式的なものが多い。そんな日が続くと、ふと、「これ、誰のための仕事だっけ」と思ってしまう。
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朝の始まりに期待はしていない
最近、目覚まし時計の音で目が覚めても、まったく「今日も頑張ろう」とは思えない。朝ごはんも適当に済ませ、スーツに袖を通して鏡を見ても、疲れた中年男性が映っているだけだ。誰も「いってらっしゃい」と声をかけてくれる人はいない。独り身の司法書士として生きてきて、今さら寂しさを口にするつもりはないけれど、せめて一言、誰かから「今日も頑張ってね」と言われたら違うのかもしれないと思う。
目覚ましの音だけが今日を迎えてくれる
学生時代、野球部の朝練に向かうため、朝5時に起きていた。母がこっそりおにぎりを持たせてくれて、玄関先で「気をつけてね」と声をかけてくれたあの頃。今は目覚ましの機械音だけが「今日も働け」と命じてくる。たまには人の声で一日を始めたい。だけどスマホは静かなままで、通知も鳴らない。ひとり暮らしの朝は、ただ時間に押し出されるように始まっていく。
あの頃の朝練の方がまだ声があった
野球部の朝練は正直つらかった。でも、あのグラウンドには仲間がいて、「おはよう」「今日も頼むぞ」と声が飛び交っていた。たとえ泥だらけになっても、声をかけ合うことがどれだけ心を支えてくれていたか、今ならよくわかる。声って、こんなに大事だったんだな。社会に出てからは、そういう声が極端に減った気がする。
独り言が増えてきたのはいつからだろう
最近、自分でも気づかぬうちに独り言をつぶやいている。「あれどこやったっけ」「よし次いこう」って。誰も聞いていないし、返事もないけど、それでも言葉を発しないと何かが崩れそうになる。独り言で、自分の存在を確認しているのかもしれない。声に出すことが、せめてもの救いだと思いたい。
職場に着いても会話は最小限
事務所に着くと、パートの事務員さんが一言「おはようございます」と言うだけ。あとは、書類の確認や電話対応の伝達くらいで、ほとんど会話はない。もちろん彼女に責任があるわけじゃないし、むしろ黙々と丁寧に仕事をしてくれている。けれど、やはりどこかで「お疲れさまです」の一言が欲しくなる瞬間がある。無言で帰る彼女の背中を見るたび、何かを言いそびれているような気がしてしまう。
事務員との会話は業務連絡だけ
「この登記、今週中に仕上げです」「あの電話、折り返しお願いされてます」——そういう会話はある。でも、そこには温度がない。自分もたぶん同じように接してしまっているんだと思う。業務の効率はいいかもしれないけど、人としての交流はすっかり薄くなってしまった。彼女にとって私は、ただの「司法書士」なのだろうか。
「お疲れさまです」が自分の口からしか出ない
帰り際、「お疲れさまです」と私が言う。それに返ってくるのは、小さく「お先に失礼します」という言葉。もちろん悪いことじゃないし、業務としては十分だ。でも、時々むなしくなる。こっちは今日も依頼人と戦い、法務局と格闘し、なんとか一日を終えたのに、その頑張りを認める言葉は、自分自身で言うしかないのかと。
感謝の言葉が循環しない職場の空気
小さな事務所だからこそ、もっと感謝や労いの言葉があってもいい気がする。お互いが「言わなくてもわかってる」みたいな雰囲気で、結果として何も言わないまま終わる。そういう空気に、だんだん心がすり減っていく。言葉って、コストも時間もかからないのに、なぜこうも省略されてしまうのだろう。
登記の山と向き合うだけの時間
朝から晩まで、ひたすら登記と向き合っている。間違いが許されない世界だから、集中力は必要だし、プレッシャーも大きい。けれど、その頑張りは誰にも伝わらない。依頼人からは当然のように「早くお願いします」と言われ、終わったときの感謝も形式的なものが多い。そんな日が続くと、ふと、「これ、誰のための仕事だっけ」と思ってしまう。
ミスを恐れて一人で何度も見直す日々
昔、野球部の監督に「エラーをする奴は練習不足だ」と言われ続けた。その言葉が染みついているのか、登記でも自分に対して異常なまでに厳しい。「間違えるな」と何度も見直す。だけど、それを誰かが見てくれているわけじゃない。誰にも伝わらない完璧さのために、ひたすら神経をすり減らしているような感覚になる。
「すごいですね」の一言にどれだけ救われるか
何気ない「ありがとうございます」「助かりました」「すごいですね」って、こんなにも重いものなんだと、司法書士になってから気づいた。年に数回、心からそう言ってくれる依頼人に出会うと、それだけで1週間くらいは頑張れたりする。逆に言えば、それくらい飢えてるってことなんだろう。
評価されない仕事ほど孤独になる
司法書士の仕事って、目立たないし、うまくやって当たり前と思われがち。トラブルがないのが当たり前。でもその「当たり前」の裏には、膨大な確認と準備がある。誰かに評価されることがなくても、やるしかない。その孤独さに耐えきれず辞めていく仲間も少なくない。
最後に 自分に言ってあげよう
今日も誰にも「お疲れさま」と言われなかった。それでも、登記は通り、依頼人は予定通り手続きを終えることができた。誰にも褒められなくても、自分で自分を褒めよう。「今日もよく頑張った」と。仕事は派手じゃなくても、人の役には立っている。誰も言ってくれないなら、自分が自分に言ってやる。「お疲れさま」と。
「今日もよく頑張った」と心でつぶやく
帰りの車の中、ふと信号待ちで窓の外を見ると、学生が部活帰りに「お疲れー！」と笑い合っていた。そんな光景に、少しだけ心が温かくなる。誰かに言われなくても、自分がそれを大切に思えばいい。今日もひとりで仕事を終えた。十分じゃないか。
誰かに言われなくても胸を張っていい
声に出さずとも、誰かのために働いている自分を、もっと誇っていいのかもしれない。他人の承認より、自分が自分を認めることの方が難しい。でも、それができたとき、少しだけ孤独が和らぐ気がする。「誰にも言われない」ことを嘆くより、自分で自分に言ってあげよう。
それでもまだどこかで誰かを待っている
「お疲れさま」と誰かに言われる未来があるのなら、それはきっと幸運だ。でも、今はそれを待ちながら、誰かの仕事を丁寧に支えることを続けていきたい。もしかしたら、その積み重ねが、いつか誰かに届く日がくるかもしれないと信じて。
