冬の外回りでペンが止まるとき僕の心も止まる

冬の外回りでペンが止まるとき僕の心も止まる

寒さに負ける心とペン

この冬の朝、司法書士としての業務が始まる前に感じる冷え込みは、単に体を凍らせるだけでなく、心の隅々にまで忍び寄る厳しさを伴います。早朝、外に出る前の玄関先でふと手元を見ると、いつもより動きが鈍い自分に気付かされ、今日一日の苦労を予感する瞬間があります。長年続けている仕事柄、些細な違和感が思わぬ重圧となり、その冷たさはまるで生きる意志すらも奪いかねないほどに迫ってきます。

また、現場に足を運ぶ前の静かな時間、独りで感じる孤独と不安が、冬特有の冷気とともに心を締め付けます。人知れず積み重なった経験と、気後れしながらも前へ進む決意。その両極端な感情が、改めて日常の厳しさと自分自身の弱さを浮き彫りにしてくれるのです。

朝の気温がすべてを決める

厳しい冷気に晒されながら、外回りに出る前の一瞬の気温が、私の一日の流れを大きく左右します。空気中に漂う凍えるような湿気と、それに打たれる身体の反応は、まるで心の奥底に蓄積された不安が形となって現れるかのようです。手を伸ばしてペンを握ろうとすると、指先に広がる冷たさがその動きを阻み、書類に向かう決意も一瞬で揺らいでしまう。

その感覚は、かつて野球部で何度も冬練習を耐え抜いた日々を思い出させます。あの頃は、寒さに打ち勝つという一心で全力を振り絞っていたが、今はただただ自らの無力さを痛感する瞬間に立ち会っているようです。朝の一歩一歩が、厳しい現実と向き合うための重い儀式のように感じられ、今日もまた新たな挑戦の始まりを実感させます。

ペンを出す前に手が動かない

朝の冷え込みの中で、ペンを手に取ろうとするその瞬間、手先の感覚が一時的に麻痺してしまうことがある。指先に染みる冷たさに加え、長い冬の夜に感じた孤独感が重なり、筆記具を動かす気力すら一瞬で失われかけるのだ。これまで何度も重ねてきた業務の中で、たった一度の躊躇いが後々の書類作成に影響することを思うと、冷え込む朝が放つ不意の試練のように感じられる。

また、かつて野球部で素振りを練習していた日々をふと思い出す。チームメイトと汗を流しながらも、必死にボールを追いかけたあの瞬間は、身体中に力が漲っていたが、今はただ無力感に苛まれる。凍える指先と心の隙間に忍び寄る不安、そのすべてが、たった一つのペンの先を動かす勇気を求める厳しい試練となって現れる。

書けない書類と進まない現場

冷え切った朝、書類に向かうはずの時間に、なぜか手が重く、ペン先が思うように動かない。忙しさに追われる中で、ひとつひとつの作業がまるで氷の塊のように固く、書類に記すべき言葉や署名すらもまともに浮かばない。頭の中では何度も解決策を模索するものの、冷たい現実がその思考を容赦なく打ち消し、思わず足が止まってしまう瞬間がある。

この状況は、司法書士としての業務に限らず、普段の外回りの現場でも頻繁に繰り返される悩みの一つだ。外の厳しい気温が、まるで自分の意志に抗うかのように手の動きを止め、まさに冬という季節の厳格さを身にしみて感じる時間となる。冷えた現実に抗いながらも、今日もまた一歩を踏み出す決意を新たにするのだ。

外回りの孤独と向き合う

一人で車を走らせながら、知らない町の役所や小さなオフィスの前を通り過ぎる時、感じる孤独と寂しさは計り知れない。外回りの中で、誰もが自分の存在を気に留めないような無関心な視線を浴びる瞬間に、自己の存在価値やこれまでの歩みを疑いたくなることがある。心の奥底から湧き上がる虚しさと疲労感は、冬の冷気と相まって、まるで自分が季節に流される小石のように感じさせる。

また、日常の業務の中で感じる孤独は、かつて部活動で多くの仲間と共に汗を流していたあの温かさとは対照的である。人目を気にするあまり、自分の弱さや不安を誰にも打ち明けられず、ただひとり背負いながら進まざるを得ない現実。外の寒さと自身の内面が重なり、どこかで誰かの温もりを求める気持ちと、現実に打ちのめされる心が、複雑に入り混じっているのだ。

誰にも見られてないけど見られてる気がする

どんなに人の少ない時間帯であっても、外回り中にふと背後から感じる視線のような気配は決して無視できない。車を走らせる合間、無関心な視線や、見知らぬ人々からの無意識の評価に、思わず心がざわめく瞬間がある。自分の存在が、どんなに小さなものに見えても、常に誰かに見守られているような錯覚に陥り、気持ちは常に緊張状態に置かれる。

さらに、振り返れば司法書士として多くの現場を回ってきた経験が、その不安感をさらに増幅している。業務の忙しさや一人で抱え込む責任感は、時に背後から迫る冷たい風となって感じられ、見えない目に晒されているという思いが、日々のストレスとなって現れる。まるで誰かの拍子抜けた視線を受け止めながら、孤独な戦いを続ける自分の姿がそこにあるかのようだ。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。