人に説明しづらい司法書士の忙しさ
「司法書士って何やってるの?」という質問、もう何度聞かれただろうか。こっちは毎日ドタバタしてるのに、周囲から見ればただの「机に座ってるおじさん」にしか見えないらしい。書類の山と向き合い、登記の期日とにらめっこし、クライアントからの急な依頼に頭を抱えているのに、それが全く伝わらない。言葉にして説明しても、ピンと来ない顔をされると、正直なところ少し心が折れる。忙しさを「忙しそう」と認識してもらえない虚無感、あれ、けっこう堪えるんです。
「いつも暇そうだね」と言われるたびに傷つく
ある日、昔の友人から「お前の仕事って暇そうでいいな」と言われた。冗談交じりだとはわかってる。でも、胸の奥がモヤッとする。確かに、外回りが多い営業職みたいに動き回っているわけじゃないし、電話が鳴ってない時はただ静かに書類と向き合っているだけだ。それでも一瞬でも手を抜けばミスが命取りになる仕事だ。暇そうに見える=価値が低い、そんな風に思われてるんじゃないかと感じてしまう。
机に座っている時間=暇、じゃない
司法書士の仕事は、とにかく書類との格闘だ。申請書類を一つ作るのに、事実関係の確認、登記記録の照合、法令チェック、さらに依頼人の意向も加味する。これらをパズルのように組み合わせながら、法的に正しいものを組み上げていく。机に座ってじっとしているように見えて、頭の中ではフル回転している。まるで、見た目は静かでも水面下では必死に泳いでいる白鳥みたいなものである。
見えないところで戦っている書類と期限
たとえば、登記申請は法務局の受付時間に間に合わせないとアウト。しかも、月末や年度末は法務局が激混みで、オンライン申請でもなぜか遅延が発生する。そんな中、ギリギリで届いた依頼に「今日中にお願いします」と言われることもある。余裕のない日程、確認不足の資料、それでもやらなきゃいけない。表には出さないけれど、書類と睨み合ってる時間は、ちょっとした修羅場なのだ。
忙しいのに緊急性が伝わらない現実
なぜか、「登記」や「法務」といった言葉には“のんびり”した印象があるらしい。でも実際には、提出のタイミング一つで権利関係が変わったり、損害賠償のリスクが発生したりする。たとえば不動産の売買なら、同日に複数の登記を通す必要がある。ひとつでも間違えれば、全体が破綻する。時間の猶予なんてまるでない。そんな説明をしても「ふーん、でも急ぎじゃないよね?」と返されると、無力感に襲われる。
「それ今日じゃなくてもいいよね?」の破壊力
たとえば、知人の司法書士が、朝イチで登記を出さなきゃいけない日に限って、「銀行の都合で午後にしてもらえませんか」と言われたそうだ。書類のスケジュール、関係者との連絡調整、全てが狂う。しかも「そっちの都合でしょ?」と見なされがちだ。急いでる理由を伝えても、先方にはピンとこない。登記に“スピード感”が求められるという感覚が世間にないことに、司法書士はみんな苦労している。
こっちは登記の受付時間とにらめっこしてるんだよ
午後4時過ぎたらアウト。それが法務局のルール。例えば16時ちょうどに届いた依頼、電子申請ならワンチャン間に合うかと思いきや、署名不備で弾かれて結局持ち越し。依頼人には「明日でもいいじゃないですか」と軽く言われたけれど、物件の引き渡しが今日だとわかった時の衝撃といったら……。こっちは一秒を争ってるんです、と叫びたくなる瞬間が何度もある。
事務員さんが辞めないか心配で仕方ない
うちは小さな事務所なので、事務員さんが辞めたら即アウト。補正対応、電話、資料整理、請求書作成……一人で全部やるのは現実的じゃない。だからこそ、事務員さんには感謝しかない。でも、その分、プレッシャーもすごい。「辞めたい」と言われたらどうしよう。そんな不安が常に頭をよぎる。人を雇うって、責任が重いんです。
ワンオペに近い現場のプレッシャー
事務所の規模的に、僕が現場も管理も対応も全部見ないといけない。事務員さんが休めば、その日の業務量は一気に倍になる。しかも、それが補正対応の嵐の日だったりすると、もう目が回る。以前、インフルエンザで一週間休まれたときには、電話の鳴るたびに胃がキリキリした。孤独感と焦燥感が襲ってくるんですよね。
指示する側も気を使いながら胃が痛い
頼りにしてる分、怒れない。むしろ「忙しくさせてすみません」って思ってしまう。指示出すときも、「これお願いできるかな? 無理なら僕がやるけど」なんて、常に気を使う。気を使いながら胃も使う。それが零細司法書士事務所の現実です。
野球部出身だけど精神論では乗り切れない
高校時代、僕は野球部で、監督から「気合でなんとかなる!」と言われ続けてきた。でも、司法書士の世界では気合じゃどうにもならない。必要なのは、冷静さと計算力。精神論を振りかざしても、補正通知は待ってくれないし、登記簿は情けでは通らない。
根性より必要なのは冷静な段取り力
段取り8割、本番2割。それが司法書士の世界だと思ってる。どれだけ先を読んで、リスクを予測して、関係者との連絡を済ませておけるか。それが登記をスムーズに完了させる鍵。野球部の時とは真逆の思考が求められる。昔の自分に教えてあげたい。「根性だけじゃ無理だよ」と。
ミスが許されない世界に根性は通用しない
一文字違えば却下、一日違えば損害賠償、そんな世界で「とにかく頑張ります!」じゃどうにもならない。論理と慎重さが必要。でも、それを理解してくれる人は少ない。だからこそ、日々自分に「根性出すな、段取り詰めろ」と言い聞かせている。