恋愛相談所があったら通ってたかもしれない
登記の悩みは解決できても恋の悩みは棚上げ
登記のことで困っている依頼者の悩みなら、だいたい解決できる自信がある。所有権移転も役員変更も、条文と実務の知識で何とかなる。でも、恋愛となるとまったく勝手が違う。そもそも、何をどう始めればいいのかも分からない。自分の気持ちすら整理できていないのに、人に伝えるなんて無理な話だ。司法書士という職業柄、「正確」「迅速」「確実」が求められる毎日。でも恋愛にはそのどれも通用しない。
仕事で人の人生を動かしているのに自分の人生は止まったまま
登記の仕事をしていると、誰かの人生の転機に立ち会う場面が多い。会社の設立、相続、売買、結婚による氏名変更など、書類の向こうには確かに“人生”がある。なのに自分はどうだろうか。毎日同じ道を通って事務所に入り、同じ椅子に座って、書類とにらめっこしている。確かに忙しい。でもふと時計を見たとき、「この10年、自分の人生は進んでるのか?」と問いかけたくなる瞬間がある。
登記完了通知よりも連絡がこないLINEが気になる
登記完了通知が来るのは嬉しい。仕事が一区切りつくし、依頼者にも連絡できる。でもその通知より気になるのは、既読がつかないLINE。何日も返信がこないと、内容よりも「なんで返ってこないんだろう」と気になってくる。仕事では段取りよく対応できるのに、恋愛では無力そのもの。既読スルーに一喜一憂している自分が情けなくなる。登記より難しいのが、気持ちのやりとりなのかもしれない。
事務所に届くのは郵便ばかりで心には何も届かない
毎日ポストには定款認証の写しや登記識別情報通知、各種証明書が届く。重要な書類ばかりだし、開封する瞬間に緊張感もある。でも、心に届く何かはここ最近来ていない。ふと昔のことを思い出す。誰かから手紙が届いて嬉しかった日や、ちょっとしたLINEのやり取りが心の支えだった日々。今はどうか。感情の起伏が少なくなりすぎて、季節の変化にも気づきにくくなってしまった。
なぜか恋愛の話になると口ごもる自分がいる
仕事仲間と飲みに行く機会があると、話題はだいたい仕事か健康か。そしてたまに、恋愛や家族の話になる。その瞬間、何となく笑ってごまかす自分がいる。別に隠しているわけじゃない。話すことが何もないからだ。「最近どう?」と聞かれて「まあ、仕事しかしてないですね」と答えるのがもうクセになってしまった。でも、本当は少しだけ聞いてほしいこともある。だけど言えない。そんなもどかしさを抱えている。
お客様には堂々と話せるのにプライベートは話せない
依頼者に対しては、必要な情報はきちんと伝える。相手の不安を取り除くのが仕事だ。でも自分の気持ちはどうか。誰かに話すことで軽くなる悩みもあるはずなのに、それができない。専門職としてのプライドや、年齢を重ねた自意識が邪魔をしているのかもしれない。どこかで「こんな話、笑われるかも」と思ってしまうのだ。だからこそ、聞き役にはなれても話し役にはなれない。
昔は少しはモテたと信じたい元野球部の記憶
高校時代、野球部だった頃。試合のあとに応援に来ていた女子から声をかけられたことがある。その瞬間だけを切り取れば「ちょっとモテた」と言ってもいいかもしれない。でもそれも遥か昔の話。今ではスーツを着て、山のような書類を前に黙々と作業している姿ばかり。ときどき思い出すあの頃は、今の自分には少しだけまぶしすぎる。もう一度誰かに期待される感覚を、忘れてしまったのかもしれない。
仕事で心をすり減らして恋愛の余白がない
日々の業務に追われると、恋愛どころではない。朝から晩まで、申請、不動産、会社関係の登記に奔走し、ミスは許されないという緊張感が常につきまとう。その繰り返しに慣れてしまうと、自然と「余白」がなくなっていく。誰かと会う、話す、心を動かす。そういう感情の動きが少しずつ鈍くなっていくのを感じている。心に余裕がないと、恋愛なんて始まらない。始める気力すらわいてこない。
時間がないと言い訳してきたけど本当は怖かった
「忙しいから」と言えばすべてが正当化される気がしていた。予定が合わない、余裕がない、そんなふうに自分を守ってきた。でも本当は、誰かと向き合うのが怖かったのだ。仕事ならミスをしても修正できる。でも恋愛は違う。関係が壊れたら簡単には戻らない。だからこそ、最初の一歩が踏み出せなかった。時間がなかったのではなく、傷つくのが怖くて逃げていただけだと、ようやく認められるようになった。
誰かと向き合うより書類と向き合うほうが楽だった
書類は裏切らない。整えて申請すれば、必ず何かしらの結果が出る。正しい手続きを踏めば正しい答えが返ってくる。だからこそ、心のやりとりよりも書類の処理に安心感を覚えてしまう。でも、その楽さに慣れてしまうと、誰かと向き合うことがどんどん難しくなっていく。恋愛も人付き合いも、やり直しがきかないから怖い。でも、だからこそ、向き合う意味があるんじゃないか。そんなことを最近よく思う。
平日に誰かと会う余裕なんてどこにもない
平日は朝から電話とメールと申請と郵便の連続。終業時間を決めていても、突発の対応が入ればすべてが後ろ倒し。事務員も定時で帰るから、結局一人で残業することになる。そんな毎日のなかで、誰かと会おうなんて気持ちになれるわけもない。仮に時間をつくったとしても、気持ちが切り替えられない。仕事のスイッチを切る方法を忘れてしまったのかもしれない。
事務員にさえプライベートの話は避けがち
事務所に一人いる事務員は、気も利くし本当によくやってくれている。でも、どこか線を引いてしまっている自分がいる。雑談はするけれど、プライベートな話は避けてしまう。向こうも気を遣ってくれているのが分かる分、余計に距離を詰められない。年齢差もあるし、立場の違いもある。そんな理屈で自分を納得させてはいるが、実際はただの臆病なのだと思う。
聞かれないし話さないしまあいいかで済ませる
お互いに仕事上のやり取りはスムーズ。でもプライベートな話はしない。聞かれないし話さないし、それで特に困らない。だからまあいいか、と流してきた。けれど、たまにふと「本当は話したかったのでは?」と思うときがある。誰かに何気なく自分のことを話せたら、少しは楽になるのかもしれない。
気遣ってくれてるのは分かるから余計に切ない
事務員のちょっとした言葉や表情から、こちらの様子を気遣ってくれているのが伝わってくる。ありがたい。でも、それが逆に寂しさを呼ぶ。言葉にできない何かが、いつまでも胸の中に残る。こんなとき、もし恋愛相談所でもあれば、誰かに話して整理できたかもしれないのに。
もしこの業界に恋愛相談所があったら
司法書士が集まる相談所があれば、きっと仕事の悩みはすぐに片づくだろう。では、恋の悩みはどうだろう。もしこの業界専用の“恋愛相談所”があったなら、僕は真っ先に予約を入れていたかもしれない。恋愛にマニュアルはない。でも少しだけ、誰かの声が欲しいときがある。そんなとき、同じ業界で働く人同士だからこそ話せることもあるはずだ。
恋の悩みも業法や条文みたいに答えがあれば
もし恋愛にも業法や条文のように明確な答えがあれば、きっともう少しうまく立ち回れていたかもしれない。「この場合、こう伝えるのがベストです」と誰かに言ってもらえたら、気持ちの整理もついたのかもしれない。でも現実は、感情も状況も複雑で、正解なんてひとつもない。だからこそ、話せる場所が必要なんじゃないかと、最近とても強く感じている。
この場合の最善策はこうですと言ってほしい
書類上では「このケースではこう」と明確な処理ができる。でも、恋の悩みはそうはいかない。「このとき、どう返すのが正解だったのか」と何度も思い返す夜がある。そのたびに、誰かに答えをもらえたらと思ってしまう。そんな自分が情けないとも思うけれど、それが人間なのかもしれない。
オンライン登記相談みたいに恋も代行できたら
オンライン登記相談のように、恋のやりとりも誰かが代行してくれたら…。そんなことを冗談のように思うことがある。LINEの返信一つとっても悩むような自分には、恋愛はハードルが高すぎるのだ。でも、それでもやっぱり、人と向き合いたいという気持ちはどこかにある。それがある限り、諦めることはないと思いたい。
ひとりで悩むのが当然みたいな業界の空気
この業界は、どこか“孤独を抱えていて当然”という空気がある。同業同士で深い話をすることも少ない。人と向き合う職業なのに、自分自身のことは誰にも見せられない。そんな環境が、ますます孤独を強めてしまっているように感じる。
専門職の孤独は誰にも見えない
司法書士という肩書きの下にある孤独は、外からは見えない。真面目で堅実な職業であるがゆえに、弱音や愚痴は飲み込まれがち。でも本当は、みんな何かしらの寂しさを抱えている。見えないだけで、同じように悩んでいる人がいるのかもしれない。
でも同業の誰かも同じ気持ちかもしれない
もしかしたら、あの同業者も、あの先輩も、あの後輩も、同じように感じているのかもしれない。そう思うと、少しだけ気が楽になる。恋愛相談所がなくても、この記事が誰かにとっての「ちょっとした共感」になれば、それだけでも意味がある気がする。