結婚はと聞かれない日がいちばん穏やか

結婚はと聞かれない日がいちばん穏やか

朝のニュースより怖いのは親戚からの一言

毎朝、ニュースを流しながらコーヒーを淹れるのが日課だが、正月やお盆になるとその平和は崩れる。親戚が集まる場では、なぜか決まって誰かが「結婚は?」と口火を切る。これが始まると、もはやどんな経済ニュースよりもダメージが大きい。自分では気にしていないつもりでも、周囲の無意識な言葉が心の奥を小突いてくる。独身で司法書士をしていると、「いい人いないの?」がセットで来るのもまたつらいところだ。

何気ない会話が胸を刺す

親戚や旧友との会話は、油断すると心の柔らかい部分に踏み込んでくる。「最近どう?」「そろそろ落ち着かないとね」——そんな言葉が、決して悪意がないことはわかっている。でも、こちらとしてはその言葉の裏にある「まだ結婚してないの?」という無言の圧が耐えがたい。仕事が忙しいとか、今はタイミングじゃないとか、言い訳めいた言葉が口から出るたびに、自分でもちょっと情けなくなる。

それ聞くの三回目くらいなんですよ実は

正月に顔を合わせるたびに「誰かいい人いないの?」と聞かれるおじさんがいる。悪い人じゃない。むしろ昔から可愛がってくれている。でも、毎年同じ質問をされるたびに、なんとなく自分の“停滞感”が浮き彫りになる気がしてしまう。別に新しい彼女を連れてきてもいないし、進展もない。だからこそ、去年と同じ質問が同じトーンで投げられるのが妙にこたえる。

いい人いないのの破壊力

「いい人いないの?」という言葉は、なんとも柔らかくて優しげに聞こえるけれど、独身歴が長くなると地雷ワードに変わる。こちらが望んで一人でいるとは限らないし、過去にうまくいかなかった恋愛だってある。なのに、その一言だけで全部を軽くスルーされた気分になる。自分でも笑って流せればいいのに、いつもどこか引っかかってしまうのだ。

家族と集まると心が防御体勢になる

家族が悪いわけじゃない。でも、集まりとなるとどうしても「結婚」の話題がどこかから飛んでくる。母親は気を使って口に出さないが、目線や空気感からは伝わってくる。「あの子も結婚したのよ〜」なんて報告が出るたびに、体が縮こまるような思いをする。知らぬ間に背筋が伸びて、心の中では「この話題終わってくれ」と叫んでいる。

盆と正月の沈黙タイム

話すのが怖いから、あえて黙る。無難な話題に乗るだけで精一杯。親戚が集まるテーブルでは、笑顔で相槌を打つけれど、内心は逃げ出したくなることもある。結婚したいかどうか、実は自分でもわからなくなっている。でも聞かれると考えざるを得ないし、考えると少し辛くなる。沈黙は金、という言葉が身に沁みる季節がある。

言葉を濁してお茶を濁す

「まあ、仕事が忙しくてね」とか「ご縁があれば…」なんて言葉でその場を乗り切る。大人としての処世術なのかもしれないけれど、それが繰り返されることで、どんどん自分の気持ちが曖昧になっていく感覚もある。気づけば、本音すらどこかへ追いやっている気がして、帰り道にため息が出る。

仕事は順調って聞かれた方がずっとマシ

結婚について聞かれるよりも、仕事のことを聞かれる方がよほど嬉しい。たとえ「最近どう?」の先に「仕事の方は?」が続いても、それならちゃんと答えられる。でも「結婚は?」は違う。それは自己評価を問われるような、なんとも難しい質問なのだ。

聞かれない日は本当にほっとする

たとえば事務所で仕事をしている日、誰からも「結婚」に触れられないだけで、それだけで穏やかだと感じることがある。誰も僕の人生を“まだ”とか“そろそろ”という言葉で区切らない。それだけで、その一日はちょっとだけ自分を肯定できる。そんな日がもっと増えてもいいんじゃないか、そう思う。

静かな日常が何よりの癒し

派手なことはなくても、誰かに詰められることもない静かな日常。それがどれだけ尊いものか、年齢を重ねて気づくようになった。テレビの音だけが響く事務所で、黙々と登記の書類を整理している時間が、ある意味で心を落ち着かせてくれる。誰にも咎められず、自分のペースで動ける自由は、何にも代えがたい。

一人ご飯も悪くない

かつては、ラーメン屋に一人で入るのが気恥ずかしかった。でも今では、自分のペースで食べたいものを食べる時間が何よりのご褒美になっている。店主と軽く交わす言葉や、湯気越しの静かな空気に、なぜか安心感がある。誰かに合わせる必要がないのは、寂しさではなく快適さだと気づけたのも、独身を重ねてきたおかげかもしれない。

何も言われないことのありがたさ

何かをしてもらうことより、何も言われないことに感謝したくなる日がある。干渉されない、詮索されない、それだけで人は落ち着くものだ。結婚について触れないでいてくれる人の優しさに、深く救われたと感じたことが何度もある。静かに見守ってくれる存在こそ、実は最も心に残るのかもしれない。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓