結婚式に呼ばれないことが増えて気づいた孤独な居場所

結婚式に呼ばれないことが増えて気づいた孤独な居場所

結婚式に呼ばれないことが増えて気づいた孤独な居場所

結婚式の招待状が届かなくなった日

その日も例によって登記の書類を一式揃え、封筒に入れて郵便局へと向かっていた。ふと、並んだ郵便受けの一つに、淡いピンクの封筒が差し込まれているのを見たとき、胸がざわついた。結婚式の招待状のようだった。自分宛てではなかったけれど、「あいつの結婚、聞いてないな」と思った瞬間、気づいてしまったのだ。ここ数年、招待された記憶が一つもない。

あの頃は何度も余興を頼まれていた

大学時代は、余興といえばシンドウだった。野球部仕込みの大声と、それなりに人付き合いの良さそうな雰囲気が買われていたのだろう。フラッシュモブに巻き込まれたあの式も、まさか人生で一番汗をかいた日になるとは思わなかった。

披露宴の席で感じた友情

無駄に広い円卓、隣の席の友人が酔った勢いで泣き出したとき、「ああ、こういうのって青春の続きなのかもしれんな」と思った。

乾杯の音頭で誤字ったあの日も懐かしい

「新郎新婦の、未来に乾杯!……未体験に乾杯!」と叫んで、会場が一瞬静まり返ったあの瞬間。サザエさんのエンディングのように、音楽が流れてフェードアウトしてほしかった。

「呼ばれない側」になったことに気づいた瞬間

SNSで、大学の同期が笑顔でケーキカットしている画像が流れてきた。コメント欄には「おめでとう!」「幸せそう!」の文字が並ぶ。自分は、ただ画面をスクロールするだけだった。

SNSで知る他人の祝福

それは、怪盗ルパンの予告状のように唐突で、何も奪われていないのに心がすうっと空っぽになる感覚だった。

招待状より先に届く情報

まるで探偵が推理の途中で真相に気づいたような気分だった。誰かが招待しなかったことより、自分が「誰かの中にもういない」ことの方が重かった。

「お幸せに」のコメントすら打てない心

やれやれ、、、と呟いて、スマホを伏せた。祝福する気持ちはある。でも、それを言葉にするほどの関係じゃなくなっていたことが、痛かった。

サトウさんの冷静な一言が刺さる朝

「先生、今年は結婚式ゼロですか?」コーヒーを差し出すサトウさんの口調は、決して意地悪ではなかった。むしろ事実確認だったのだろう。

「先生は呼ばれなさそうですね」

くすりと笑う彼女の言葉に、反論できるだけのデータがなかった。むしろ見事な統計だった。

冗談とわかっていても応える言葉が出ない

「おかしいなあ、以前は呼ばれすぎて大変だったのに」と言ったが、それが負け惜しみにしか聞こえないことは、自分が一番わかっていた。

昨日のミス印紙貼り間違いのほうがマシ

司法書士たる者、印紙の貼り間違いより心の貼り間違いに敏感であるべきだった。そう思ったが、もう遅かった。

独身であることが悲しいわけじゃないと言い聞かせる

誰かの隣にいないことが、常に不幸とは限らない。でも、誰の記憶にもいないような気がするとき、それは少しだけ、心に風が吹く。

「自由」であるはずの今に感じる焦燥

「今日何する?」という問いに、「登記だよ」と答える自分に、思わず「さすが俺」と皮肉を送った。

ひとりの時間が苦痛になる夜もある

テレビから流れるお笑い番組の笑い声が、なぜか遠く聞こえる夜。あの音は、自分を笑っているのか?

冷蔵庫の麦茶だけが変わらぬ相棒

麦茶とコンビニおにぎりで締める夜。祝われることはなくても、腹は満たされる。これでいい、これがいい。いや、嘘だ。

それでも明日も登記はある

結婚式に呼ばれなくても、依頼は来る。祝福されずとも、法務局は僕を待っている。この町の司法書士は僕一人。サトウさんと僕の、ちいさな事務所には、まだ灯りがついている。

招待されずとも仕事は待っている

「今日も一件、登記完了です」パソコンの画面を閉じるたび、ひとつの区切りを迎える。祝福の鐘は鳴らなくても、やるべきことがあるのは救いだ。

サトウさんとコーヒーを淹れて始まる朝

「今日は誰も結婚しませんように」と冗談を飛ばしたら、サトウさんが「それは先生への気遣いですか?」と笑った。

式には呼ばれないけど 生きているだけで結構忙しい

やれやれ、、、孤独ってのは、呼ばれないことじゃない。気づかれないことだ。でも、僕にはまだ登記がある。それだけで、今は十分かもしれない。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓