元気そうですねと言われると余計にしんどくなる日

元気そうですねと言われると余計にしんどくなる日

元気そうに見える自分と本当の自分のギャップ

「元気そうですね」と言われるたび、胸の奥がズキンとする。確かに、見た目にはスーツを着てきちんと髪を整え、依頼人の前では笑顔も浮かべる。だけど、その日も朝から登記の期限に追われ、取引先の電話対応で神経をすり減らし、昼食を摂る間もなく午後を迎えていた。見た目だけで「元気そう」と言われても、まるで自分の内面なんてどうでもいいような気がして、孤独感だけが積み重なる。地方で一人きり、事務所の看板を背負って仕事をしていると、無理にでも元気に見せてしまう癖がついてしまったのかもしれない。

笑顔の裏で思っていること

笑顔って便利なもので、仕事の現場ではとにかく誠実そうに、明るく見せるための武器になる。でも実際、笑っている裏で「ああ、また今月も赤字かもしれないな」とか、「事務員さんにきつく当たってしまったな」とか、そんな思いがぐるぐると頭を巡っている。相談者の前で泣くわけにもいかないし、かといって事務所で誰かに愚痴をこぼす場もない。笑顔の自分と、本当の自分。その差が大きくなればなるほど、精神的な疲労感は増していく。

顔は笑ってても心は疲れている

特に厄介なのは、自分ですら「元気そうな自分」に騙されるときがあることだ。たとえば、仕事が一段落した後、「今日は順調だったな」と思って帰宅したのに、夜になると急にどっと疲れが出て、何もする気が起きなくなる。風呂に入るのも面倒で、そのまま布団に倒れ込むような日もある。そんなとき、「元気そうですね」って言葉が、まるで自分の不調を否定するように思えて、しんどさが倍増する。

「元気そうですね」に返す言葉が見つからない

「元気そうですね」って言われると、だいたい「おかげさまで」とか「まあ何とか」とか、無難な言葉で返してしまう。でも心の中では、「本当にそう見えるなら、演技成功ってことか」と冷めた気持ちになっている。嘘をついてるわけじゃないけど、本音は違う。その場をしのぐための言葉しか出てこない自分に、なんだか自己嫌悪さえ感じる。

言葉のナイフはやさしい顔をしてやってくる

「元気そうですね」は、一見すると褒め言葉だし、悪気はまったくないのもわかっている。でも、だからこそ困るのだ。こちらがしんどい時ほど、その言葉は鋭く心に刺さる。まるで「あなたの疲れや辛さなんて見えていませんよ」と言われているような気がして、どこにもぶつけようのない感情がわいてくる。

悪気がないからこそ傷つく

昔、元同僚に久しぶりに会ったとき、「全然変わらないね、元気そう!」と笑顔で言われた。こっちはちょうど母の介護と仕事の板挟みでボロボロだった時期で、体重もかなり落ちていた。相手に悪気がないのは百も承知だ。でもその瞬間、「この人は俺のこと何もわかってないんだな」と思ってしまった自分がいた。

人は見た目でしか判断できないのか

スーツを着て、しゃきっと歩いて、必要な場面で愛想よくふるまう。そうすれば「元気そう」に見られる。それが司法書士としての「外向きの顔」だ。でも、それだけで「大丈夫そう」と判断されてしまうのは、正直つらい。人は外見でしか他人を判断できないのかもしれない。だけど、せめて「最近どう?」くらいの一言があれば、少しは違った気持ちになれたかもしれない。

誰にも弱音を吐けない仕事

この仕事、思っている以上にメンタルにくる。誰かの人生の節目に関わるからこそ、常にミスは許されないという緊張感がある。かといって、そのプレッシャーを他人に話せるかというと、難しい。相談される側の立場として、弱さを見せること自体がタブーのような空気がある。

司法書士という職業の孤独

登記、相続、裁判所提出書類。ひとつひとつが細かく、責任も重い。相談者には「頼りになります」と言われることもあるが、その裏で、ミス一つで信頼を失うプレッシャーも大きい。何より、ミスをしても誰かがフォローしてくれるわけじゃない。基本的にひとり。事務員はいても、責任はこっちに全部降りかかる。

事務員さんの前でも強くあらねばならない日常

一人雇っている事務員さんに、弱音を吐けるかというと、それもまた違う。事務所の空気を守るためには、なるべく不安を見せないようにしている。こちらが不機嫌そうだと、相手にも気を遣わせてしまう。だから、疲れていても明るくふるまう。でもそれが積み重なると、知らないうちに自分の感情を置き去りにしてしまっている。

「元気そう」な自分を演じ続ける疲れ

笑顔、挨拶、丁寧な対応。もちろん仕事として大事なことだ。でも、それをずっと続けていると、自分の中の「本音」や「弱さ」を封じ込めてしまう。演技としての元気が板につくほど、素の自分に戻る時間がなくなっていく。そしていつのまにか、演技が自分そのものになってしまう恐怖がある。

それでも笑って応対しなければいけない

電話一本、来所一件、すべてに丁寧に応対するのが仕事。でも、正直しんどいときもある。内心「今日はもう誰とも話したくない」と思っていても、受話器を取ると声を明るくしてしまう。職業病と言えばそれまでだけど、自分の気持ちを押し殺すクセが、どんどん強くなっている気がする。

元気に見えないと依頼が減るかもしれない恐怖

体調が悪いときや、精神的に落ち込んでいるときもある。でも、そういうときに限って来客があったりする。「あれ、この人疲れてるな」と思われたら、次の依頼に影響するかもしれない。そんな不安があるから、無理してでも元気そうにふるまってしまう。元気であることが信用になる世界。だから、休みたくても休めない。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓