月初は静かなのに月末は地獄の入り口みたいな日
月初の一週間は本当に静かだ。電話も少ないし、来所もまばら。事務員と「今月はゆっくりだね」なんて会話を交わしながら、穏やかな日々を過ごす。ところが月の後半に入ると、まるで何かのスイッチが入ったように謄本依頼が増える。とにかく増える。1件2件と来ていたのが、突然5件10件とまとまって押し寄せる。月末には、机の上が謄本の山で埋もれ、目の前の書類がまったく減らない。静かだったあの数日は幻だったのかと思うほどだ。
なぜかカレンダーの数字が後半になると電話が鳴り出す
本当に不思議なんだけど、20日を過ぎたあたりから急に電話が増える。普段は午前中に1本あるかないかだったのに、朝から立て続けに鳴り続ける。中には「今日中に!」なんて無茶なお願いも混ざっていて、断るに断れず受けてしまう自分がまた嫌になる。依頼する側にとってはたった1件でも、こちらはすでに何件も抱えている。どうしてみんな、もう少し早く動いてくれないのかと、毎年思う。
前半ヒマだった時間はどこへ消えたのか
振り返ってみれば、月初は謄本の依頼どころか、相談すら少なかった。あの時間をどうして有効活用できなかったのかと後悔する。でもその時はその時で、「今月は平和に終わりそうだな」なんて油断してたんだ。実際、急に依頼がくるなんて読めるわけもないし、予測が立てられないのがこの仕事の厄介なところだ。月初に余裕ぶっこいて昼寝してた自分を殴ってやりたい気持ちになる。
一気に来る依頼と焦る依頼者の温度差に振り回される
依頼者は焦ってる。そりゃそうだ、申請期限が迫ってるのだから。でもこちらとしては、今日中に仕上げろって言われても「いや、もう無理です」としか言いようがない。それでも「なんとか…」って粘られると、つい「じゃあ明日までにやってみます」なんて返事をしてしまう。結果、自分の首を絞める。そうして毎月末、睡眠時間を削って仕事をする羽目になる。正直、温度差がしんどい。
謄本依頼が集中する本当の理由なんて誰も教えてくれない
一度、なんで月末に謄本依頼が集中するのか役所の人に聞いたことがある。「締め切りがあるからじゃないですかね」って軽く返されて終わった。たしかに、法務局や金融機関の手続きって月内に済ませたいっていう空気がある。でも、それにしたって偏りすぎじゃないか? 中には「月末のほうが仕事に集中できるから」とか言う人もいたけど、こっちの集中力はとっくに限界突破してる。
役所の締め切りのせいにしておけばいいという空気
「月末に依頼が殺到するのは、みんな役所のせいにしておけば角が立たない」という謎の文化がある気がする。実際、「役所の都合で…」というと、依頼者側も納得してくれるから便利ではある。でも本音を言えば、書類の準備なんてもっと早くできたはずだろ、と言いたい。だけど言えない。言ったら仕事が減る。だから愚痴だけがどんどん溜まっていく。
依頼者もギリギリ勝負で生きている
依頼者を責めるわけじゃない。ギリギリで動いてるのはあちらも同じ。経営者も個人も、日々に追われてようやく月末になって「あっ、登記忘れてた」と気づくのだろう。それは理解できる。理解はできるけど、こちらの心は狭くなっていく。月末になると、電話を取る指先にすら力が入らなくなる。こっちも限界ギリギリで動いてるんです、と声を大にして言いたい。
こちらの心の余裕はすり減るばかり
本来ならば、依頼をもらえるのはありがたいことなのに、月末の依頼はもはや恐怖ですらある。感謝の気持ちより先に、「今それ来るか…」という嘆きが口をつく。心の余裕がどんどんすり減っていくのがわかる。事務員にも八つ当たり気味になることがあって、自己嫌悪のループに陥る。疲れてると優しくなれない。でも誰も責められない。そんな状態が月末には毎月繰り返されている。
事務員一人では到底回らない月末の現場
うちの事務所は、僕と事務員の二人体制。普段ならなんとか回るけど、月末だけはもうどうにもならない。事務員がコピー機に張り付き、僕がキーボードを叩きながら独り言を呟いている。机の上は書類で埋まり、電話は鳴り止まない。お互い無言で仕事に集中しているとき、「これって本当に人間のやる仕事なのか?」と思うことがある。そんな月末。
ふたりで朝から晩まで謄本と格闘する悲しい絵
まるで謄本に追われて生きてるみたいな感覚になる。朝、出勤してすぐに謄本。昼ごはんをかきこみながら謄本。夕方になってようやく一息つくと思ったら、また新たな謄本依頼が入る。家に帰っても、明日やる分の段取りを頭の中で考えてしまい、全然休めない。そんな日が月末にだけ毎月現れる。正直、なんの修行なんだろうと空を見上げたくなる。
疲れても愚痴る相手がいない独身のつらさ
愚痴る相手がいないのはつらい。家に帰っても誰もいないから、結局風呂の中でひとりぶつぶつ文句を言う。事務員には弱音を吐けないし、かといって友達に話しても「へえ大変だね」で終わる。誰もこっちのリアルな疲労はわかってくれない。愚痴って誰かに「よく頑張ってるよ」って言われたいだけなのに、それすら叶わない。独身ってこういうとき本当に孤独だ。
それでも辞めずにやっている理由を自分に問う
そんなにしんどいなら辞めればいい、という声も聞こえそうだけど、それでも続けてるのはなぜか。たぶん、この仕事が嫌いじゃないからだと思う。月末以外はそれなりに楽しいし、やりがいもある。依頼者に「助かりました」と言われるとやっぱり嬉しい。月末の地獄さえなければ、もっと穏やかにやれるんだけどなあ。毎月そのループにハマりながら、また来月を迎える。
月末を越えるたびに少しずつ心が削れていく
月末が終わると、妙な達成感がある。でも同時に、体力と気力を持っていかれた感覚もある。月が変わるたび、少しずつ自分の中の何かがすり減っている気がする。このままで大丈夫なのかと不安にもなる。でもきっと、同じように思っている同業者も多いはずだ。だからこそ、こうして言葉にしてみた。せめて共感してくれる誰かがいてくれたら、それだけでちょっと救われる気がする。
同業者にも話せない小さな疲労と焦燥感
この疲れは同業者同士でもなかなか話せない。みんな「忙しいね〜」と言いながら、心の中では「うちのほうが大変かも」なんて思ってるのかもしれない。だから本音を言い合う場がない。比較しても仕方ないけど、誰かと一緒に「本当にしんどいよね」と言い合えるだけでも救われる。そんな気持ちを持ったまま、また次の月末を迎える。結局、また謄本の波にのまれるのだけれど。