ちょっと疲れた司法書士の記録 ― 誰にも言えない日々のこと

ちょっと疲れた司法書士の記録 ― 誰にも言えない日々のこと

朝起きて、まず思う「今日もか…」

目覚ましの音が鳴るたびに、まるで頭を殴られたような感覚になる。布団の中でうっすらと目を開け、窓から差し込む朝の光に顔をしかめる。昨日も寝たはずなのに、体が鉛のように重い。司法書士としての業務は、見た目以上に心身を削る。「今日も、また仕事か…」とつぶやくのが、ここ数年の朝の恒例だ。

寝た気がしないまま迎える朝

夜中に目が覚めることが増えた。夢の中でも、登記の期限を気にしていたり、誰かに責められていたり。夢の中ですら、気を抜けない。布団に入ってからも、クライアントの顔がちらついて、なかなか寝付けない。気づけば、スマホで今日の予定を何度も確認してしまう。そんな状態で迎える朝が、いいわけがない。

事務所の空気が重いわけじゃないけれど

うちの事務所は、事務員一人と僕だけ。静かな環境だし、特に険悪な空気が流れているわけじゃない。でも、時々この空間がやけに重く感じることがある。きっと、それは自分の内側から漂っているものだ。誰にも見えない疲れや不安が、空気を静かに押しつぶしているような感覚になる。

静かすぎる朝、にぎやかすぎる頭の中

ラジオを流しても、コーヒーを飲んでも、頭の中は静まらない。メールチェック、郵送物の確認、提出期限の逆算…次から次へと仕事の断片が浮かんでくる。誰にも邪魔されていないはずなのに、自分自身の思考に追い立てられる朝が続いている。心の中だけが、いつも渋滞している。

誰にも聞かれない仕事の中身

司法書士の仕事は、外から見れば「事務作業でしょ?」と軽く見られがちだ。だが実際は、法的リスクの判断、登記情報の整合性、ミスが許されない緊張感との闘いだ。そんな仕事の中身を、わざわざ誰かに説明する気力ももう残っていない。「見ればわかるでしょ」が通じないのが、また疲れる。

登記のミスは許されないのに評価は曖昧

「完璧」が前提の仕事。それが司法書士という職業の本質だ。誰も褒めてくれないけれど、間違えればすぐにクレームや損害賠償に発展する。プレッシャーばかりが積み重なり、「ちゃんとやって当たり前」が胸に突き刺さる。自分の存在が空気のように扱われることに、時折むなしさを感じる。

お客さんは「簡単なこと」と言うけれど

「これ、そんなに難しいことじゃないですよね?」と笑いながら言われた瞬間、内心で深くため息をついたことが何度もある。簡単かどうかは、その人が責任を取るかどうかにかかっている。こちらはその責任を背負っているからこそ、慎重になるのだ。けれど、それが理解されることは少ない。

無表情な相談者の「本音」に触れる瞬間

時折、黙っていた相談者の目が潤む瞬間がある。家族のこと、相続のこと、過去のトラブル。言葉にはしないけれど、その沈黙の裏に隠された想いに触れたとき、自分の存在が少しだけ報われる気がする。無表情の奥にある本音をくみ取るのも、司法書士の大切な役目なのかもしれない。

感謝されても報われた気がしない矛盾

「本当に助かりました」「ありがとうございました」と言われるたびに、「いや、それでも疲れてるんですよ」と言いたくなる。でも口には出せない。感謝の言葉が心に染みることもあるけれど、それだけで溜まった疲労が帳消しになるわけではない。この矛盾に、どう折り合いをつけていけばいいのか、今も模索している。

ちょっと疲れたあなたへ、僕からの手紙

もしこの記事をここまで読んでくれた人がいたなら、それはきっと、あなたもどこかで疲れているのかもしれません。僕も同じです。「もっと楽に生きろ」と誰かに言われても、それができるなら最初から苦労していない。しんどいけれど、それでも仕事を辞めないでいるのは、きっと何か小さな希望を信じているからです。

共感してくれたら、それだけで嬉しい

世の中には、声をあげずに我慢している人がたくさんいると思います。僕もそうです。だから、もし共感してもらえたら、それだけで救われる気がします。あなたの疲れにも、ちゃんと意味がある。そう信じたいし、信じてほしい。無理に笑わなくてもいいし、完璧じゃなくてもいい。

「しんどいけど続ける」仲間がいるということ

どこかの地方の、モテない独身司法書士が、今日もモソモソと書類をめくりながら生きてます。それだけで、誰かが「自分もまだ大丈夫」と思ってくれたら、この記事を書いた意味がある。大丈夫じゃなくても、なんとかやっていこう。そんな仲間が、ここにもいます。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。