朝から気が重かった火曜日の始まり
火曜日って、なぜか一番やる気が出ない。週明けの月曜日よりも「まだ先が長い」と感じてしまって、朝のコーヒーすら味がしない。しかも、今日は朝から電話が立て続けに鳴り、処理しなきゃいけない書類も山積み。役所とのやり取りも気が進まず、なんとなく呼吸が浅くなる。そんな朝に、気持ちを切り替えるスイッチなんてどこにも見当たらなかった。自分のデスクに座りながら、ただ「早く終わってくれ」と祈るような気分だった。
電話対応とメール処理の連打で疲弊
電話は、かけ直しが必要な案件ばかり。簡単に終わるものが一つもない。メールも重要なものばかりで、目を通すだけで気が滅入る。時間に追われる中で、思わずため息が漏れる。しかもタイミング悪く、コピー機のトナーが切れる。まるで「今日は無理しない方がいい」と神様に言われてるような、そんなスタートだった。業務の大半がルーチンになってしまう中で、ふと我に返ると「こんな日々がずっと続くのか」と思ってしまった。
朝イチで来るあの不機嫌な声
8時59分。電話が鳴る。予想通り、いつも朝イチで電話してくるあの担当者。今日もやはり声が険しい。「早くしてくれないと困るんですよ」と言われても、こちらにも段取りがある。口に出せない反論を飲み込んで、「」とだけ答える。1本目の電話で、もう一日分の体力が削られたような感覚になる。こちらの事情も知らないで、と心の中でぼやきながら、机に肘をついて背中を丸めた。
なんで自分ばっかりと思ってしまう瞬間
ふと目の前の書類に目をやると、次の申請書類が待っている。「誰か代わってくれ」と思っても、自分一人の事務所だ。事務員は補助的な立場で、結局すべての責任は自分に降りかかる。理不尽な電話の対応、間違いの許されない登記、時間との戦い。それらを抱えながら、気づけば「なんで自分ばっかり」とつぶやいていた。独立して10年以上経つけど、報われた実感って、そんなにない。
ふと耳に入った事務員の何気ない一言
昼も過ぎて、ようやく少し落ち着いた時間帯。静まり返った事務所の中で、ふと事務員の小さな独り言が聞こえた。「昨日のドラマ、主人公がまさかあんなに泣くとは思わなかった…」思わず顔を上げて、「え、あのシーン?」と話しかけてしまった。そこから自然と会話が始まり、たった数分だったけど、重かった気分が少しずつ軽くなっていった。まさに、心に染みる雑談だった。
笑い声の方向に目をやると
彼女が笑ったのは、ネットで見つけた猫の動画の話題だった。「この猫、寝ながら足動かしてるんですけど、夢でも走ってるんですかね」なんていうセリフに、不意に笑ってしまった自分がいた。笑うって、いつぶりだったか。忙しい日常に慣れすぎて、感情を押し殺して生きていたような気がする。笑い声が事務所に響くことなんて、珍しい。でもその響きが、想像以上に心地よかった。
くだらない話の中にある安心感
内容はどうでもいい話。ドラマの展開に文句を言ったり、お菓子の新作がどうだったとか、職場にまったく関係のないこと。でも、そこには「日常」があった。誰かとたわいもない話をするだけで、こんなにも安心するとは思わなかった。自分の中で何かがスッとほぐれた感覚。くだらないはずの会話に、今日一番の癒しを見つけるとは、本当に予想外だった。
真面目だけどどこか抜けてる彼女の魅力
うちの事務員は几帳面で、いつも淡々と仕事をこなしてくれる。でも、たまに「印鑑どこに置きましたっけ?」と自分が机に置いたものを探してたりする。そんな抜けた一面に、こちらも肩の力が抜ける。完璧じゃないところが、逆に癒しになるというか、安心させてくれる存在になっていたんだと気づいた。今日の雑談は、彼女のそんな一面を引き出してくれた時間だった。
雑談の余韻が午後の自分を支えてくれた
午後の業務が始まっても、さっきの会話の余韻が頭の中に残っていた。不思議と集中力が戻り、書類のミスも減った気がする。ほんの数分話しただけで、これほど気持ちが変わるのかと驚いた。まるで、ずっと乾いていた心に水をもらったような気分だった。誰かと繋がっている、そんな感覚が心の支えになることを、改めて実感した一日だった。
あの数分がなければ崩れていたかもしれない
昼過ぎには、また電話が鳴り、急ぎの案件が舞い込んできた。でも、午前中のような焦りはなかった。雑談という小さな休憩が、自分をリセットしてくれていたんだろう。もしあの会話がなかったら、午後のトラブルに対応できなかったかもしれない。ちょっとした癒しが、仕事の質に直結することを痛感した。
書類とにらめっこしていた孤独な時間
以前は、一日中ほとんど誰とも会話をせず、ひたすら書類と向き合っていた。画面の文字を見て、ハンコを押して、また確認して…その繰り返しに、自分の存在が消えていくような感覚さえ覚えたこともあった。でも、今日のように人と少しでも気持ちを交わせた日は、違う。たとえ同じ作業でも、「誰かと働いてる」という感覚があるだけで救われる。
笑っていいんだと思えるだけで救われる
司法書士の仕事は、どこか「ミスをしてはいけない」「感情を出してはいけない」というプレッシャーがつきまとう。でも、人間なんだから疲れるし、笑いたいときもある。今日の雑談で、笑ってもいいんだって思えた。それだけで、ほんの少し、自分を許せた気がした。そんな日が、もっと増えたらいいなと思った。