やっと来たと思ったら印鑑証明は別の人だった

やっと来たと思ったら印鑑証明は別の人だった

封筒が届いた瞬間の高揚感と不安の交差点

ああ、やっと届いたか。そんな安堵の息が漏れたのは、郵便受けに見覚えのある封筒を見つけた時だった。ずっと待っていた印鑑証明。申請から数日、心のどこかで「そろそろかな」と思いつつも、実際に届くまで気が抜けないのがこの仕事だ。書類が1枚届くだけで、一気に次の工程に進める。その瞬間を待っていた。なのに、その喜びはほんの数十秒で打ち砕かれることになる。

ついに来たという手応えに小さな希望を託して

封を切る瞬間、少しだけ背筋が伸びるのが自分でもわかる。まるで甲子園の予選でサヨナラのランナーを返す打席に立つような、そんな感覚。自分の仕事なんて地味だと誰かに言われたこともあるけれど、この「一打」に全てがかかっていると思うと、書類一枚でも背中に汗がにじむ。希望、信頼、そして納期。全部がそこに詰まってる。

たかが1枚されど1枚の印鑑証明を待つ重み

印鑑証明の遅れ一つで、スケジュールは音を立てて崩れていく。依頼人の予定、登記の締切、関係者の調整。すべてがこの書類に左右される。だからこそ、封筒を見たときに「来た!」と声が出そうになった。ようやく動き出せると、ホッとしたのも束の間だった。

現実は甘くない届いたのは別人の名前

開封して中身を確認する。そこに記されていた名前は、まったくの別人。似てもいない。見間違いかと思って二度見、三度見したけど間違いない。他県のまったく関係のない人の印鑑証明が、こちらに届いていた。封筒の表書きは間違っていなかったのに。もう頭が真っ白だった。

クライアントにどう説明するかという地味な地獄

問題は次にどうするかだ。このままでは登記に間に合わないかもしれない。まずはクライアントに説明しなければならない。でも、「届いたけど他人の書類でした」なんて言葉、どう伝えればいいのか。電話越しに笑ってくれるタイプの人ならまだしも、厳しいお客様だったら…そう考えるだけで胃が痛くなった。

怒るわけにもいかずかといって笑えもしない

こちらに非があるわけではない。役所の手違いか、郵便局の仕分けミスか。それでも、依頼人にとっては「書類が届いていない」という事実だけが重要だ。こっちがいくら説明しても、「でも結果的に進んでないんですよね?」という空気を感じる。そんなとき、自分の存在価値ってなんだろうと考えてしまう。

事務員と無言で目を合わせる昼下がり

「あの……どうしますか?」と事務員が気まずそうに聞いてくる。こちらも即答できず、黙って天井を見上げるしかなかった。別に怒っているわけじゃない。ただ、虚無感が押し寄せる。昼ごはんも喉を通らない。たった一枚の紙に振り回されてる自分が情けない。

もう一度頼む勇気と手間と封筒代

再発行の依頼をするにも、まずは役所に連絡、ミスの経緯を説明、返送してもらい、もう一度送ってもらうよう段取りを組まなければならない。封筒代、切手代、時間、精神力。どれも地味だけど確実に削られていく。正直、もう勘弁してくれという気持ちだった。

郵送ミスは誰のせいでもないのかもしれないけど

ミスは人間なら誰にでもある。でも、こうして仕事が止まると、やはり納得しきれない気持ちも湧いてくる。誰のせいでもない、という言葉は優しいけれど、何も進まない現場にいる身としては、ただただやるせないだけだ。

役所の丁寧さと緩さの狭間にある現実

役所の対応は丁寧ではある。電話口の女性も誠実に謝ってくれたし、対応も迅速だった。それでも、何度かのやりとりを経て「再送します」という言葉をもらうまでに一日が終わってしまった。こちらは1秒でも早く進めたい。でも、相手には「業務のひとつ」に過ぎないのだ。

「すぐ送ります」から始まる長い長い待機時間

「本日中に再発送します」と聞いて、少しだけ救われた気持ちになった。でもそれからまた届くまでの数日間、こちらは予定をすべて調整しながらただただ待つしかない。「すぐ」はこちらの「すぐ」とは違う。わかっていても、どうしても焦りと苛立ちが込み上げてしまう。

同業者の皆さんこういうことありませんか

この仕事、思った以上に「待ち」が多い。書類が来ないと何もできない。書類が間違ってるとまた振り出しに戻る。同じような経験をされた方、きっといらっしゃるのではないでしょうか。愚痴りたい気持ち、共感していただけたら嬉しいです。

似たような苗字という罠

ちなみに今回届いた別人の名前、苗字が1文字違いだった。見た目も読みもよく似ている。もしかすると、それが原因で仕分けミスが起きたのかもしれない。人間の目は案外あてにならない。だからこそ、確認の手間は惜しめない。でも、心は削られていく。

本人確認は義務でもあり呪いでもある

本人確認書類のチェックは司法書士の重要な仕事だ。間違えて進めてしまえば、すべてが無効になる。だから神経質なほどに確認する。でも、その正確さを求められる一方で、他者のミスに巻き込まれると、なんともやりきれない思いになる。責任の重さがのしかかる。

今日もまた書類とにらめっこして終わる夕方

午後4時過ぎ。もう今日も終わりが見えてきた。でも、あの印鑑証明の件が解決するまでは、どこか落ち着かないまま机に向かうことになる。誰も責められない。でも、誰も助けてくれない。そんな孤独がじわじわと体に染みる。

印鑑証明1枚で仕事のスケジュールが崩れる

一枚の書類。それが正しいか正しくないかで、明日の仕事が決まる。大げさじゃなく、それが現実だ。ギリギリで案件が重なると、すべてのバランスが崩れる。今回もそんな状況だった。だからこそ、別人の印鑑証明を見た瞬間の絶望は、本当に言葉にならなかった。

小さなミスが大きな心の疲れを連れてくる

結局、書類のミス自体は大した問題ではないのかもしれない。でも、そのたびに気を張って、謝って、段取りを直して。そんな日々が積もると、心のどこかに小さな亀裂が入っていく。ふとした瞬間、なんで自分だけこんなに気を使わなきゃいけないんだろうと思ってしまう。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓