登記は完了しても心はまだ作業中

登記は完了しても心はまだ作業中

登記は完了しても心はまだ作業中

登記が終わったその日の静けさ

午後3時15分、法務局からの完了通知がメールで届いた。
ふと見上げた蛍光灯がまぶしくて、目を細める。
登記は終わった。正確に、期限通りに、完璧に。
でも心の中のどこかが「処理中」のまま、ぐるぐると回っている感じが抜けなかった。
誰もいない帰り道、まるでサザエさんのエンディングみたいな夕暮れの商店街。だけど僕に波平の説教も、カツオのいたずらもない。

法務局からの帰り道で感じたこと

車のハンドルを握る手に力が入らない。
「お疲れさまでした」って、誰かに言ってほしいだけなんだよな。
けれど、誰もいない軽ワゴン車の中に返事はなかった。
無音のFMラジオが、なんだか泣きたくなるほど静かだった。

達成感よりも心に残る空洞

書類を終えるたびに、少しずつ心が減っていくような感覚。
スタンド攻撃でも受けてるんじゃないかって思うくらいに、やる気のリザーブがごっそり消えていく。
ジョジョのエニグマにでも捕まったみたいに、感情が紙に閉じ込められたままだ。

車の中の沈黙がやけに重い

信号待ちの間、ふと隣の車を見る。若いカップルが笑っていた。
それを見ている自分の顔が、ドアミラーに映っている。
無表情。いや、むしろ虚無表情。
やれやれ、、、司法書士の表情ってやつは、こうも味気なくなるのか。

依頼者の笑顔と自分の無表情

今日の案件の依頼者は、年配の女性だった。
「先生のおかげでスムーズに進みました」
そう言って深く頭を下げてくれたけど、僕は心からの笑顔を返せなかった。
いや、返さなかったのかもしれない。もう、返し方を忘れていた。

ありがとうの言葉に戸惑う

「ありがとう」って言われるたびに、心がざらつく。
嬉しいはずなのに、まるで罪悪感のように胸の奥に沈んでいく。
なんでだろう。なにがそんなに未処理なんだろう。

他人の節目に立ち会う仕事

結婚、相続、売買、設立。
他人の人生の大事な場面に立ち会いながら、こちらは書類と期限に追われるだけ。
感情は置いていくか、捨てるか。
その繰り返しの中で、何かを感じる力が薄れていったのかもしれない。

置いていかれたような気持ち

彼らは人生を動かしているのに、僕は机に座っているだけだ。
いつから、人生の観客席でしか拍手できなくなったのか。
ちょっと泣けてくるけど、そんな感情も今さら処理できやしない。

サトウさんの観察眼が刺さる日

「先生、今日なんか元気ないですね」
サトウさんは紅茶を出しながら、何気ない顔で言った。
この人、本当に鋭いんだ。
まるで心の登記簿を開示請求されたような気持ちになる。

先生 今日なんか元気ないですね

笑ってごまかしたけど、たぶんバレてる。
サトウさん、たまに金田一少年の明智警視ばりに鋭い。
推理されてるときの犯人の気持ち、ちょっと分かったかもしれない。

気づかれてるって分かると余計に沈む

心配されると余計に沈むって、なんだか矛盾してるけど、そういうときあるよね。
でもきっと、それが人間なんだろう。
ロボットじゃないんだ。いや、ロボットだったらもう少し心の整頓もうまいかもな。

とはいえ 彼女の存在には救われている

無言で机に置かれたチョコレート一粒。
それだけで、明日もなんとかやっていこうと思える。
こういうのが、ほんとの報酬なのかもしれない。

机の上に残る未処理の書類と気持ち

今日提出したはずの登記の副本が一枚、戻ってきていた。
どこかのチェックが抜けていたらしい。
書類は未処理。でも心の方がもっと未処理。
よし、まずは一つずつ、やり直していこう。

書類の山は減ってもモヤモヤは減らない

一枚減るごとに少し軽くなるけど、心の方はなぜか重くなる。
そんなときは、夕方のドラマでも流しながら、紅茶でも飲んで深呼吸するしかない。

心の整理はどこに出せばいい

感情の出し先がない。
でも、書類じゃなくて、人に出すものなんだって、最近やっと気づいてきた。
そういう意味で、サトウさんの存在は大きい。

やれやれ これは重い登記だ

本当に重いのは書類じゃなくて、自分の心なんだろう。
今日はもう閉店だ。
明日もまた、誰かの人生の一片に関わる仕事が待っている。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓