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消された相続人

消された相続人 第一章 見えない依頼人 無言の来訪者 ある秋の日の午後、事務所のドアがかすかに開き、細身の男が一歩だけ足を踏み入れた。視線は泳ぎ、名を名乗ることもなく、ただ一枚の封筒を机の上にそっと置いた。その動作には、何かを押し殺したよう...

コドクヲカクスノニテイショヲツカウナ

コドクヲカクスノニテイショヲツカウナ コドクヲカクスノニテイショヲツカウナ 書類の山は孤独の城壁 朝イチの登記簿謄本の束を前に、俺はふとサザエさんの波平の声を思い出していた。「バッカモーン!」と怒鳴られたような気分になるのは、寝不足のせいか...

年に一度のよくやってますねが欲しくて仕事をしている

年に一度のよくやってますねが欲しくて仕事をしている がんばってるのに誰も気づかないという日常 終わらない書類の山と静かな孤独 がんばって当然という空気 朝9時、誰もいない事務所に入ると、机の上には昨日のままの登記書類と、法務局から戻ってきた...

戸籍謄本読めば読むほど分からなくなる件について

戸籍謄本読めば読むほど分からなくなる件について 戸籍謄本読めば読むほど分からなくなる件について 戸籍謄本というやつは、例えるなら「サザエさん一家が三つ巴で養子縁組した上に、波平が四人存在する」くらいの混乱を我々にもたらす。司法書士を十五年や...

書類に残った名前が心をざわつかせる

書類に残った名前が心をざわつかせる 書類に残った名前が心をざわつかせる 事務所に舞い込んだ一枚の書類 午後三時、ちょうどコーヒーが冷めきった頃だった。FAXの音が鳴り、いつも通り登記関連の依頼かと覗き込んだ私は、思わず目を細めた。登記申請書...

今日話したのはサトウさんだけだった日

今日話したのはサトウさんだけだった日 朝の静けさに違和感を覚える 玄関のカギの音だけがやけに響く 「おはようございます」一発目の声はサトウさん テレビもラジオもつけない派の僕には辛い沈黙 午前中の業務は完璧に無音 登記申請書を前に沈黙と向き...

先方が印鑑証明期限切れだった日常と非日常

先方が印鑑証明期限切れだった日常と非日常 先方が印鑑証明期限切れだった日常と非日常 朝9時、いつものようにサトウさんが玄関のカギを開け、電気をつけ、コーヒーの香りを漂わせながら「おはようございます」と言ってくる。 「おはよう、、、って、なん...

甘えたいけど甘えられない僕の事件簿

甘えたいけど甘えられない僕の事件簿 甘えたいけど甘えられない僕の事件簿 甘えるってなんだろう 僕には見えなかったもの 司法書士としてそれなりに長くやってきたが、人に頼るのが苦手だ。 幼い頃から「しっかりしなさい」と言われて育ったせいか、弱音...

法務局しか会話相手がいない日々

法務局しか会話相手がいない日々 法務局しか会話相手がいない日々 法務局で始まる朝 朝イチのあいさつは窓口の声 「おはようございます、シンドウ先生。今日もお早いですね」 顔を合わせるたびにそう言ってくれる法務局の窓口の女性、ナカムラさん。最近...

心が風邪ひいても誰も気づかない町の司法書士

心が風邪ひいても誰も気づかない町の司法書士 心が風邪ひいても誰も気づかない町の司法書士 朝から倦怠感司法書士にも疲れる日がある いつものように目覚ましのベルが鳴ったが、まぶたが持ち上がらない。頭の中に霧がかかっている。体温計を口にくわえても...

書類だけが自分を待っていた日

書類だけが自分を待っていた日 書類だけが自分を待っていた日 朝の静けさと書類の山 カーテン越しに差し込む光が、寝ていた僕の顔を遠慮もなく照らす。枕元の時計はまだ6時前。サザエさん一家が賑やかに朝食を囲む時間には少し早い。あの一家が現実にいた...

最近どうと聞かれた日が最後の会話だった

最近どうと聞かれた日が最後の会話だった 最近どうと聞かれた日が最後の会話だった 事件のはじまりは日曜の朝だった その朝、俺はコーヒーの粉を切らしていた。カップに残るわずかな香りに未練を感じつつ、いつものように事務所のカギを開けた。静かな日曜...

今日話したのはコピー機だけだった

今日話したのはコピー機だけだった 今日話したのはコピー機だけだった 司法書士という名の孤独な職業 地方の小さな司法書士事務所。看板も色褪せている。そこにいるのは、45歳・独身・元野球部の司法書士シンドウ。今日も朝から山積みの書類と格闘してい...

依頼者の笑顔が唯一の救いだった日

依頼者の笑顔が唯一の救いだった日 依頼者の笑顔が唯一の救いだった日 いつもの朝と違う空気 その日は、やけにサトウさんのタイピング音が静かだった。「おはようございます」と挨拶を交わしたものの、いつもの毒舌がない。まるで『波平がカツオを叱らない...

法務局混雑の謎を追え

法務局混雑の謎を追え 法務局混雑の謎を追え 法務局の朝は唐突に始まる 朝8時45分。まだ開庁前だというのに、法務局の前にはすでに人だかりができている。並んでいるのは年配のご夫婦、不動産業者らしき若者、そして…見覚えのある司法書士仲間たち。こ...