閉鎖会社が遺した帳簿

閉鎖会社が遺した帳簿 朝の書類に紛れた違和感 いつものように、サトウさんが無言でデスクに書類の束を置いた。僕が「おはよう」と声をかけても返事はない。どうやら今日も塩対応で始まるようだ。 その中に一通、古びた封筒が混じっていた。差出人欄には手...

境界線の悲鳴

境界線の悲鳴 境界線の悲鳴 仮換地の現場に届いた奇妙な相談 その朝、事務所に届いた封筒には、簡素な地図と「助けてください」という走り書きが添えられていた。差出人は不明。地図は地元の再開発エリアにある仮換地の一画を示していたが、なにかが妙だっ...

記録の奥で眠る罪

記録の奥で眠る罪 雨の日の依頼人 封筒の中の写し しとしとと降り続く雨の午後、事務所のドアが重たく軋んで開いた。 中年の男が深くフードをかぶり、無言で封筒を差し出してきた。 中には、古びた登記簿の写しと、妙に新しい訂正申請書が入っていた。 ...

最終登記をした男

最終登記をした男 最終登記をした男 朝イチの依頼と奇妙な登記簿 事務所のドアが軋む音とともに、ひとりの中年男性が現れた。 無精髭に古びた鞄。いかにも「何かある」空気をまとっていた。 「登記を頼みたいんです。今日中に」と彼は言った。 依頼人は...

偽りの取引士

偽りの取引士 偽りの取引士 朝一番の登記申請 朝9時前、まだ湯気の立つコーヒーを片手に事務所のメールチェックをしていたら、不動産会社からの登記依頼が届いていた。 案件は売買による所有権移転。書類もひととおり揃っている。だが、最初に目についた...

鍵と表札ともう一人の住人

鍵と表札ともう一人の住人 鍵と表札ともう一人の住人 ある日突然変わっていた表札 午前中の書類整理が終わったころ、一本の電話が鳴った。 「表札が変えられてるんです。住んでるのは私なのに……」 依頼人の声は震えていた。だが、声の裏にある妙な確信...

登記簿の依頼人がいなかった日

登記簿の依頼人がいなかった日 奇妙な登記依頼が届いた朝 書類だけがポストに入っていた 朝、事務所のポストに一通の茶封筒が届いていた。差出人の名前はなく、中には委任状と登記申請書類一式が整っていた。依頼内容は単純な所有権移転登記だが、封筒の主...

訂正簿と封印された約束

訂正簿と封印された約束 午前九時の通知書 朝の空気は湿っていた。エアコンの効かない事務所に、ぺたりと肌に張り付くような気配。そんな中、机の上に届いた一通の封筒が、僕の一日を狂わせた。 差出人は法務局。いつもの定型文かと思いきや、「訂正済み登...

書き換えられた恋の記録

書き換えられた恋の記録 登記簿に現れた異変 処分事項欄に記された不可解な一文 ある朝、事務所に届いた一通の登記簿謄本。依頼人が所有しているはずの土地に、不自然な記載があった。「贈与 令和4年9月吉日 甲から乙へ(感謝と永遠の愛をこめて)」—...

目を覚ました担保権の告白

目を覚ました担保権の告白 夜の一通のFAXから始まった 残業も終わり、ようやく椅子にもたれて缶コーヒーを開けた矢先だった。事務所のFAXが静かに唸り始めたのだ。 送信元は不明。ただ記されていたのは、古びた担保権に関する登記簿の写しだった。 ...

消えた印影と最後の契約

消えた印影と最後の契約 午前十時の依頼人 事務所のドアが重たい音を立てて開いたのは、ちょうどコーヒーを入れようとしていたときだった。 見慣れないスーツ姿の男が、やけに丁寧に頭を下げながら、厚手の封筒を差し出してきた。 「信用金庫さんからの紹...

税理士の裏帳簿

税理士の裏帳簿 事件の幕開け 司法書士事務所に舞い込んだ依頼 ある日の午後、司法書士事務所に一通の依頼が届いた。送り主は不明だが、その内容には興味を引くものがあった。税理士をめぐる疑惑が込められた文書と共に、「税理士の裏帳簿」を調べてほしい...

登記簿に消えた花嫁の名前

登記簿に消えた花嫁の名前 登記簿に消えた花嫁の名前 午後の来訪者 午後3時、事務所の扉が控えめに開いた。小さな音だったが、その場の空気を変えるには十分だった。 入ってきたのは30代半ばと思しき女性。黒いスーツに身を包み、どこかよそよそしい。...

本籍に眠る嘘

本籍に眠る嘘 見知らぬ相談者 古びた戸籍謄本を手に ある日、事務所の扉が重たい音を立てて開いた。入ってきたのは、色味のないスーツを着た女性だった。彼女は迷うことなく、私の前に一枚の戸籍謄本を差し出した。 名前がふたつある女 「この人と、私の...

封印された管理記録

封印された管理記録 目覚めの月曜日と一通の通知書 ポストに差し込まれた茶封筒 朝のコーヒーが冷めきる前に、玄関の郵便受けから妙に分厚い茶封筒を引っ張り出した。差出人は家庭裁判所、不在者財産管理人選任の通知だった。申立人の欄に見慣れない名前が...