忙しい一日を終えても帰宅後は無言
日中は電話対応やお客さんとの面談、役所とのやり取りで言葉を交わすことはそれなりにある。司法書士という仕事は意外と人と話す機会があるのだが、不思議なもので、家に帰った瞬間、ぴたりとその喧騒は止む。ドアを閉めた瞬間、シーンという無音に包まれ、「ああ、また今日もこの静けさか」と思う。テレビをつければ音はする。でも「会話」ではない。ただただ音が流れていくだけで、僕がそこにいる意味なんてない。忙しさでかき消されていた孤独が、夜になってじわじわと浮かび上がってくるのだ。
事務所では話すのに家では声を出さない
仕事中は話すことが多い。特に不動産関係や相続関係の案件では、専門用語をかみ砕いて説明する必要があるので、頭も口もフル稼働だ。けれども、事務所を出て家に帰ると、その反動なのか、声を出す場面がまるでない。食事をしながら独り言でも言えばいいのに、それすら習慣になっていない。スマホも無言。LINEはほぼ業務連絡だけ。たまに届くのは市の広報メールくらい。声帯が休んでるっていうより、僕自身が「声を出す理由」を失ってるんだろう。
独り言すら虚しく感じる日もある
一度だけ、「今日は疲れたなあ」って声に出したことがある。誰もいない部屋で、湯沸かしポットの音が鳴っていた夜だった。けれど、その声が部屋の壁に吸い込まれていくのを感じたとき、何とも言えない虚しさが胸を締めつけた。「誰に言ってるんだろう俺は」って、冷静になってしまった。それ以来、声に出すのが怖くなってしまった気がする。独り言が日常になると、逆に自分の孤独を強調してしまうんだ。
話しかけられることのない現実
誰かと一緒に住んでいれば、遅く帰っても「おかえり」と言ってくれる人がいるかもしれない。でも僕の帰宅は玄関のドアの音でしか始まらない。人の気配はなく、冷蔵庫の中の冷気と、昨日の洗い物だけが僕を待っている。宅配便すら最近は減った。Amazonの段ボールの破棄が一番の人間関係だった時期すらある。話しかけられないことに慣れてきた自分が怖い。気づかないうちに、誰かと距離を置く癖がついているのかもしれない。
誰かにおかえりと言われる日は来るのか
「ただいま」って言って「おかえり」って返ってくる、そんな当たり前のやり取りが今では夢のように感じる。過去に付き合っていた人との思い出もあるにはある。でも、仕事が忙しくなると、そっちを優先してしまっていた。結局、僕は自分の時間を分け合うことに慣れてなかったのかもしれない。今になって、あのときの「ただいま」がいかに尊いものだったのかを思い知っている。
司法書士という仕事の性質と孤独
司法書士は人の裏側を見つめる職業だ。遺産、借金、登記の変更…。人の人生の節目に関わる一方で、こちらの私生活は誰にも見えない。だからかもしれない。仕事中は誠実で冷静であろうと意識する分、自分の感情を出すことがどんどん苦手になっていく。そうして、誰にも弱音を吐けないまま家に戻る。帰宅しても、相談できる人がいるわけじゃない。電話もLINEもならない。静かな家に自分だけ、という現実が当たり前になってしまっている。
感情を押し殺す日々の積み重ね
登記ミス一つで大きな損害を出す可能性がある。それが司法書士の仕事の重さ。だからこそ、感情を出してミスするくらいなら、感情を殺して仕事をこなすほうが安全だと考えてしまう。でもそれを続けていくうちに、自分の中の「本音」を言葉にする力も鈍ってきた。嬉しいことがあっても、それを誰かに伝えたいと思わなくなってきた。感情を押し殺すことに慣れすぎて、自分でも自分が何を感じているのかわからなくなる瞬間がある。
プロフェッショナルであることの代償
専門職として信用を得るためには、冷静さや誠実さが欠かせない。でもその裏で、「人間らしさ」が削がれていくのを感じる。雑談すら苦手になってきた。昔は冗談を飛ばすのが得意だった元野球部の自分が、今では真顔で登記簿ばかり見ている。笑い方がぎこちなくなってきた気がして、たまに鏡を見るのが嫌になる。
自分の話をする場面がないという違和感
相続の相談を受けながら「自分に相続する人っているんだろうか」なんて思ってしまう。そんなこと、相談者には言えない。でも、自分のことを話す場面がどんどん減っている。仕事では相手の話を聞くばかり、プライベートでは話す相手がいない。話す内容がないのではなく、話せる環境がない。それが一番堪える。
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忙しい一日を終えても帰宅後は無言
日中は電話対応やお客さんとの面談、役所とのやり取りで言葉を交わすことはそれなりにある。司法書士という仕事は意外と人と話す機会があるのだが、不思議なもので、家に帰った瞬間、ぴたりとその喧騒は止む。ドアを閉めた瞬間、シーンという無音に包まれ、「ああ、また今日もこの静けさか」と思う。テレビをつければ音はする。でも「会話」ではない。ただただ音が流れていくだけで、僕がそこにいる意味なんてない。忙しさでかき消されていた孤独が、夜になってじわじわと浮かび上がってくるのだ。
事務所では話すのに家では声を出さない
仕事中は話すことが多い。特に不動産関係や相続関係の案件では、専門用語をかみ砕いて説明する必要があるので、頭も口もフル稼働だ。けれども、事務所を出て家に帰ると、その反動なのか、声を出す場面がまるでない。食事をしながら独り言でも言えばいいのに、それすら習慣になっていない。スマホも無言。LINEはほぼ業務連絡だけ。たまに届くのは市の広報メールくらい。声帯が休んでるっていうより、僕自身が「声を出す理由」を失ってるんだろう。
独り言すら虚しく感じる日もある
一度だけ、「今日は疲れたなあ」って声に出したことがある。誰もいない部屋で、湯沸かしポットの音が鳴っていた夜だった。けれど、その声が部屋の壁に吸い込まれていくのを感じたとき、何とも言えない虚しさが胸を締めつけた。「誰に言ってるんだろう俺は」って、冷静になってしまった。それ以来、声に出すのが怖くなってしまった気がする。独り言が日常になると、逆に自分の孤独を強調してしまうんだ。
話しかけられることのない現実
誰かと一緒に住んでいれば、遅く帰っても「おかえり」と言ってくれる人がいるかもしれない。でも僕の帰宅は玄関のドアの音でしか始まらない。人の気配はなく、冷蔵庫の中の冷気と、昨日の洗い物だけが僕を待っている。宅配便すら最近は減った。Amazonの段ボールの破棄が一番の人間関係だった時期すらある。話しかけられないことに慣れてきた自分が怖い。気づかないうちに、誰かと距離を置く癖がついているのかもしれない。
誰かにおかえりと言われる日は来るのか
「ただいま」って言って「おかえり」って返ってくる、そんな当たり前のやり取りが今では夢のように感じる。過去に付き合っていた人との思い出もあるにはある。でも、仕事が忙しくなると、そっちを優先してしまっていた。結局、僕は自分の時間を分け合うことに慣れてなかったのかもしれない。今になって、あのときの「ただいま」がいかに尊いものだったのかを思い知っている。
司法書士という仕事の性質と孤独
司法書士は人の裏側を見つめる職業だ。遺産、借金、登記の変更…。人の人生の節目に関わる一方で、こちらの私生活は誰にも見えない。だからかもしれない。仕事中は誠実で冷静であろうと意識する分、自分の感情を出すことがどんどん苦手になっていく。そうして、誰にも弱音を吐けないまま家に戻る。帰宅しても、相談できる人がいるわけじゃない。電話もLINEもならない。静かな家に自分だけ、という現実が当たり前になってしまっている。
感情を押し殺す日々の積み重ね
登記ミス一つで大きな損害を出す可能性がある。それが司法書士の仕事の重さ。だからこそ、感情を出してミスするくらいなら、感情を殺して仕事をこなすほうが安全だと考えてしまう。でもそれを続けていくうちに、自分の中の「本音」を言葉にする力も鈍ってきた。嬉しいことがあっても、それを誰かに伝えたいと思わなくなってきた。感情を押し殺すことに慣れすぎて、自分でも自分が何を感じているのかわからなくなる瞬間がある。
プロフェッショナルであることの代償
専門職として信用を得るためには、冷静さや誠実さが欠かせない。でもその裏で、「人間らしさ」が削がれていくのを感じる。雑談すら苦手になってきた。昔は冗談を飛ばすのが得意だった元野球部の自分が、今では真顔で登記簿ばかり見ている。笑い方がぎこちなくなってきた気がして、たまに鏡を見るのが嫌になる。
自分の話をする場面がないという違和感
相続の相談を受けながら「自分に相続する人っているんだろうか」なんて思ってしまう。そんなこと、相談者には言えない。でも、自分のことを話す場面がどんどん減っている。仕事では相手の話を聞くばかり、プライベートでは話す相手がいない。話す内容がないのではなく、話せる環境がない。それが一番堪える。
忙しさでごまかしてきたこと
仕事の予定を詰め込むことで、自分の空虚さを埋めようとしていたのかもしれない。土曜日の相談予約が入ると、正直ホッとする。予定がある＝人と話せる＝誰かに必要とされている、という気持ちになるからだ。けれど、ふと空白のスケジュール帳を見たとき、自分の人生に誰も入ってこないことを突きつけられるようで怖くなる。「忙しい」は、便利な言い訳になるが、心を守ってくれるわけじゃない。
仕事に逃げてきたのかもしれない
気づけば僕は、休日でもPCに向かい、登記情報を確認し、法改正をチェックしている。もちろんそれが悪いわけじゃない。でも「好きだから」ではなく「何も考えたくないから」やっている時もある。逃げ道にしてしまっている実感がある。周りの同業者も、どこか似たような表情をしている気がする。孤独なまま仕事に逃げ続けるのは、いつか心を壊す気がしてならない。
書類の山の向こうにある寂しさ
書類に囲まれていると、安心する。人と違って、書類は裏切らないし、無駄話もしない。けれど、あの無機質な紙の束に囲まれて感じる「守られているようで孤立している」感覚は、やはり寂しい。たまに、昔の婚姻届の控えを処分し損ねたのが出てくると、心がずしんと沈む。
土日も予定が入っていたほうが楽
何も予定のない週末ほど、時間が重たく感じる瞬間はない。だから、ついつい仕事を入れてしまう。登記の確認、顧客への返答、資料整理…「働いている自分」でいれば、何となく安心できる。でも、それって「ひとりでいることの不安」を見ないふりしてるだけなのかもしれない。
