目覚めの月曜日と一通の通知書
ポストに差し込まれた茶封筒
朝のコーヒーが冷めきる前に、玄関の郵便受けから妙に分厚い茶封筒を引っ張り出した。差出人は家庭裁判所、不在者財産管理人選任の通知だった。申立人の欄に見慣れない名前が書かれていて、正直ちょっと嫌な予感しかしなかった。
管理人に選ばれた司法書士
失踪者の名前と残された土地
依頼内容は、十年以上行方不明の人物の不動産と預貯金の管理。市街地にぽつんと残る古い木造家屋がその対象だった。やれやれ、、、これまた厄介な役回りを押し付けられたもんだ。
調査開始とサトウさんの冷静な一言
鍵の受け取りと現地調査
さっそくその家の鍵をもらい、事務所のサトウさんに同行を頼むと「無駄足の可能性が高いですね」とつれない返事。とはいえ彼女が同行すると、何かと心強いのも事実だ。というか、彼女がいないと間違いなく道に迷う。
無人の屋敷に残された気配
埃に埋もれた管理帳簿
玄関を開けると、空気は重く湿っていた。靴を脱ぎ、居間へ進むと埃を被った帳簿と分厚い封筒が机の上に無造作に置かれていた。サザエさんの波平さんなら「こりゃいかん!」と即座に叫びそうな光景だ。
帳簿の中の不可解な記録
定期的な入出金と謎の名義
封筒の中には通帳と契約書が入っており、最近も誰かが出入りしていた形跡がある。失踪者の口座から定期的に振込が行われているのだ。しかも、その振込先の名義は全くの別人。うっかり見逃すところだったが、ここは元野球部の粘りで細かくチェックした。
近隣住民の証言と謎の人物
姿を見せる管理者の存在
近所の住民から話を聞くと、最近もスーツ姿の男が時々出入りしていたとのこと。鍵はどうやって?その人物は不動産業者だと名乗っていたらしいが、届け出は確認されていない。名探偵コナンならこの時点で「真相に気付いた!」と叫ぶところだが、私はまだ半信半疑だった。
裏口の鍵と古い委任状
押し入れから発見された書類
再訪した家屋の押し入れの奥に、色あせた封筒が押し込まれていた。その中には、数年前に書かれた委任状のコピーと身分証のコピー、そして不在者本人の署名らしき走り書きが添えられていた。これはまさか、、、。
サトウさんの分析と不正の構図
実在しない管理権限
事務所へ戻ると、サトウさんが無言でパソコンを操作していた。数分後、「この振込先、幽霊法人ですね」と言い放った。彼女の言葉に背筋が冷たくなった。つまり、この“管理者”は不在者の名を騙って、財産を自分の管理下に移していたのだ。
通報と書類提出の段取り
司法書士としての責務
私はすぐに家庭裁判所と警察に連絡し、経緯を報告した。司法書士としての立場で、不正な名義変更と財産流出の可能性についても文書で説明した。やれやれ、、、これが地方の司法書士の仕事かと思うと、胃が痛くなってくる。
最後に明かされた真実
失踪者は死んでいなかった
数日後、意外な報せが届いた。なんと、不在者本人が別の都市で生活していることが判明したのだ。本人曰く、「もう戻るつもりもなかった」とのこと。だが、自分の財産を利用した不正については全く知らなかったという。怪盗キッドのように華麗に姿を消していたが、戻ってきた彼はただの年老いた男だった。
事件の終息とほろ苦い結末
司法書士の一日がまた始まる
事件は幕を下ろし、不正は防がれた。でも、不在者の資産を完全に守れたわけではない。法律の隙間を縫って動く人間のしたたかさに、少しだけ疲れた。さて、次は遺産分割のトラブル案件が待っている。やれやれ、、、また胃薬が必要になりそうだ。