電話が鳴るだけで胃が痛くなる理由

電話が鳴るだけで胃が痛くなる理由

朝イチの着信音が一日を台無しにする理由

朝、デスクに座って最初に耳に飛び込んでくる着信音。その一瞬で、私は今日という一日がどうなるかを察してしまう。まだメールも確認していないし、コーヒーも一口飲んでいない。それでも電話が鳴るだけで、胸の奥がズンと重くなり、胃のあたりがキリキリし始める。すべての電話が悪いものではない。でも、経験上、朝イチの電話ほどロクな内容じゃないことが多いのだ。急ぎの登記、勘違いした依頼人、昨日ミスした資料の確認…。そして何より、声を出す準備ができていない自分にはあまりに酷だ。

なぜか無意識に胃がキリキリし始める

電話の音を聞いただけで体が反応するようになったのは、いつからだったか。まるで条件反射のように胃が縮こまり、冷や汗が出る。大げさに思うかもしれないが、本当にそうなのだ。スマホのバイブ音すら怖くなってきている。誰かと待ち合わせをしているわけでもないし、恋人がいるわけでもない。ただ、依頼人や役所、金融機関からの「何かあった」系の連絡がほとんどだから、警戒してしまうのは当然の反応とも言える。

着信音がトラウマになったある出来事

忘れもしない。ある年の年末、ちょっとした書類の記載ミスがきっかけで、金融機関から何度も怒鳴り声の電話が鳴り響いた。すぐに訂正したし、結果的に問題にはならなかった。でもその時、何度も何度も同じ担当者から「どうなってるんですか?」と詰められたことが、頭から離れない。その電話が鳴るたびに「また何か?」という恐怖が積もり、いつの間にか電話恐怖症のようになってしまった。

あの日のクレーム電話が引き金だった

その電話の直後から、電話の着信音に過剰反応するようになった。心臓がドクンと跳ね、胃がグッと痛む。冷静に対応しようとしても、相手の言葉が頭に入らないことすらある。あの日から、電話は情報を届けるものではなく、私の心身を試す試練のような存在になった。たった一件のクレームが、司法書士としての日常すら変えてしまうとは思わなかった。

電話対応は雑用じゃなく地雷処理

「電話に出るだけでしょ?」と言う人もいる。だが実際はそうじゃない。電話は、突然飛んでくる爆弾のようなもので、何が飛び出してくるかわからない。登記漏れ、期限切れ、第三者の怒り、そして時には家族同士の争いごと。こちらの状況などお構いなしに、怒りや不満が音声となって襲ってくる。それに対応するのは、雑用ではなく緊急対応に近い。それが司法書士の日常だ。

内容が分からない恐怖とプレッシャー

電話は、こちらが準備する余地を与えない。メールなら一呼吸置いて確認できる。でも電話は一発勝負だ。相手のテンション、話の方向性、知識レベルに合わせて即座に対応する必要がある。それが失敗すれば、「頼りない」とか「使えない」と思われる。そんなプレッシャーが、電話一本に乗ってくる。しかも一日に何本もだ。これを「慣れ」で済ませられる人は、きっと胃が強い。

相手は依頼人かそれとも役所か金融機関か

鳴った瞬間に「誰だろう?」と考えるのも、また一つのストレスだ。依頼人なら丁寧に、役所なら要点を絞って、金融機関なら資料をすぐに用意しなければならない。それぞれ求められる反応が違いすぎるのだ。だから、何も分からずに電話に出るという行為は、もはや演技に近い。演じながら瞬時に対応する日々に、心が休まる隙間はない。

鳴った瞬間に脳内フル回転の戦闘モード

着信音が鳴ると同時に、私はペンを置き、姿勢を正し、頭の中であらゆる可能性をシミュレーションする。「あの件か?いや昨日のミスか?それとも…」と、瞬時にフル稼働。電話の受話器を取る前に、すでに脳は戦闘状態になっている。こうした毎日の繰り返しが、知らず知らずのうちに私の胃をすり減らしているのだろうと思う。

事務員がいても電話は基本的に自分が取る

ありがたいことに、うちには事務員さんが一人いてくれている。でも、だからといって電話を任せきれるわけではない。内容によっては即答が必要なことも多く、結局私が出ることになる。事務員に全部押しつけたくないという気持ちもある。だがその結果、電話に出る回数は減らない。むしろ、より緊張度の高い電話だけが回ってくるようになった。

一人事務所の限界と分担の現実

小さな事務所では、分担という言葉が空しく響く。やらなければならないことは山ほどあっても、それを分け合える人間がいない。私は代表でもあり、実務者でもあり、クレーム対応担当でもある。だから電話対応というタスクが、単なる「出るだけ」では終わらない。情報の収集、判断、そして対応。そのすべてを一人で担っているのが現実だ。

委ねきれない責任と神経のすり減り

事務員さんに「代わりに出てほしい」と言えない場面もある。結局、依頼人が話したがっているのは“私”なのだ。信頼や責任を背負っているからこそ、対応を任せきれない。そして、自分で対応した後も「あの説明で良かったのか?」と反芻する始末。誰かに任せれば楽になるのに、任せることが怖いという矛盾に苦しんでいる。

ちょっと確認しますが言えない場面

「少々お待ちください」「確認します」――そんな一言が、電話だとなかなか言えない。なぜなら、電話はその場での対応が求められるものだからだ。たとえ心の中で「あの登記の番号なんだっけ」と焦っていても、相手には悟られてはいけない。そういう緊張感が、電話一つにも常にまとわりついている。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓