shindo

家族信託と嘘の契約

家族信託と嘘の契約 家族信託と嘘の契約 忙しい朝と一通の電話 朝のコーヒーに口をつける間もなく、事務所の電話が鳴った。昨日は深夜まで申請書のチェックで、まだ脳が働いていない。 受話器の向こうからは上品そうな老女の声がした。「家族信託の契約を...

印鑑の下の殺意

印鑑の下の殺意 依頼人は午前九時にやってきた 封筒に入った合意書 蝉の声が喧しい夏の朝、事務所のドアがぎぃと音を立てて開いた。そこに立っていたのは、中年の女性。スーツの袖口からのぞく手首には、重たそうな数珠が巻かれていた。彼女は封筒を差し出...

連名の彼は知らない

連名の彼は知らない 朝の電話と見知らぬ依頼人 土曜の朝、事務所の電話が鳴った。出ると、名乗らぬ男の声がかすれている。「ちょっとだけでいいんです。契約書を見てほしい」。その言い方がどうにも妙だった。素性も話さず、内容もぼやけている。だが、こう...

押印された遺言の重さ

押印された遺言の重さ 朝の静けさに響く一本の電話 事務所の電話が鳴ったのは、まだ朝の珈琲も半分しか飲み終えていない頃だった。盆も近づき、相続の話がちらほらと増えてくる季節だ。 着信表示に見覚えはないが、声の主は落ち着いた女性だった。「兄の遺...

境界の外に咲いた嘘

境界の外に咲いた嘘 境界の外に咲いた嘘 境界確認から始まった不穏な依頼 「おたくで筆界確認やってもらえます?」電話口の声は、土地持ちの割にやけに慌てた調子だった。隣の家と境界線でもめているらしい。まあ、よくある話だ。だけど、あとで見せられた...

偽りの執行者

偽りの執行者 不審な遺言書がもたらされた朝 朝、いつものように事務所のドアを開けると、デスクの上に一通の封筒が置かれていた。差出人の名前はないが、宛名は「司法書士 シンドウ様」。胡散臭いと思いながらも、興味本位で封を切った。 中から出てきた...

空白の筆頭

空白の筆頭 空白の筆頭 蒸し暑い午後、古びたエアコンが軋む音だけが事務所に響いていた。俺が手にしていたのは、依頼人が持参した戸籍謄本。そこには異様な空白があった。筆頭者の欄に、なにも書かれていない。 「これは……どういうことだ?」俺が独り言...

帳簿のなかの亡霊

帳簿のなかの亡霊 帳簿のなかの亡霊 旧家からの依頼と一通の謎の証明書 ある雨の午後、電話が鳴った。受話器越しの声は年配の女性で、代々続く旧家の者だという。彼女の言うには、「登記事項証明書が一通、どこにも見つからない」とのことだった。再発行も...

終の棲家が記す名義の影

終の棲家が記す名義の影 古民家の売却と一通の相談メール 朝一番、事務所に届いたのは、50代の女性からの相談メールだった。内容は「母の住んでいた家を売ろうと思ったら、自分が相続していないことになっていた」とのこと。相続登記は済ませたはずだとい...

記載されなかった住民票

記載されなかった住民票 朝一番の来訪者 朝の事務所はまだ冷えきっていた。ポットのスイッチを入れようとしたその時、入り口のチャイムが鳴った。時計を見るとまだ午前八時三分。いつもより三十分も早い。 「ごめんください」現れたのは、スーツ姿だがどこ...

識別情報を覗いた家

識別情報を覗いた家 登記識別情報が消えた日 机の中にあったはずの封筒 朝一番、地元の不動産会社から連絡が入った。「預けていた登記識別情報がなくなっている」とのことだ。小さなオフィスの片隅で、俺は電話を握りながら胃が痛くなってきた。物がなくな...

恋人という名の代理人

恋人という名の代理人 恋人という名の代理人 朝の訪問者と妙な依頼 その朝、珍しく定時に出勤していた俺のもとに、妙に香水のきつい女性が現れた。 「この契約書を登記できませんか?」と差し出されたのは、見慣れたA4の書類。だが内容を読んで目を疑っ...

登記簿に眠る恋の権利

登記簿に眠る恋の権利 序章 忘れられた権利証 雨の音が単調に屋根を打つ。古びた事務所の壁越しに響くそのリズムは、梅雨時の憂鬱さに拍車をかけていた。今日も一日、地味で面倒な書類と向き合うことになるのかと思っていた、その時だった。 電話が鳴った...

青い薔薇は定款に咲かない

青い薔薇は定款に咲かない 青い薔薇は定款に咲かない 定款の訂正を巡る奇妙な依頼 「こちらの定款、訂正したい箇所があるんです」 そう言って現れたのは、深い紺色のスーツを纏った女性だった。目元に疲れを隠しきれず、それでも指先は震えていなかった。...

戸籍の消えた夜

戸籍の消えた夜 奇妙な転籍届 依頼者の言葉に違和感 午後遅く、事務所に現れた中年の男性は、転籍届の手続きを依頼した。 「戸籍だけ、できれば誰にも知られずに移したいんです」 その言葉に、私は首をひねった。戸籍を移すこと自体は珍しくない。だが“...