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訂正印は二度押せない

訂正印は二度押せない 朝の依頼人は涙の中にいた 「本当に、どうしてあんなことをしてしまったのか自分でもわからないんです…」と女性は委任状を握りしめ、机の上にポタリと涙を落とした。 その手元には訂正印がいくつも押された委任状があり、紙は湿気で...

赤い印紙の告発

赤い印紙の告発 朝の書留と血のにおい ポストに突き刺さるように差し込まれていた一通の書留封筒。差出人の記載はなく、赤い印紙がやたらと目立っていた。封を切った瞬間、ほんのりと焦げたようなにおいが鼻を突いた。 中には一枚の不動産登記申請書と、ま...

登記簿の名前が消えた

登記簿の名前が消えた 登記簿の名前が消えた 朝届いた一通の封筒 その封筒は、土曜の朝に限ってようやく一息つこうとした矢先にやってきた。分厚く、けれど妙に軽い茶封筒。差出人は不動産業者ではなく、個人名だった。中には古びた登記簿の写しと、雑にコ...

登記簿の午後は静かに嘘をつく

登記簿の午後は静かに嘘をつく 午後三時の来訪者 古びた登記簿と妙な依頼 古い茶封筒を胸に抱えた女性が事務所のドアを開けたのは、午後三時を少し回ったころだった。扇風機の羽音とカタカタ鳴る書類棚がやけにうるさく感じられるほど、彼女の登場は唐突だ...

登記簿に眠る恋

登記簿に眠る恋 登記簿に眠る恋 朝の郵便受けに残された封筒 事務所のドアを開けると、ポストから一枚の封筒が顔をのぞかせていた。 差出人は「高城さゆり」。見覚えのない名前だが、筆跡にはどこか懐かしさがあった。 中身を確認すると、不動産の保全登...

最後の領収書

最後の領収書 冒頭に届いた奇妙な依頼 午前十時、いつものようにコーヒーの香りが事務所に満ちる中、古びたスーツの男が訪ねてきた。名刺には「日向不動産営業部」と書かれていたが、その男の目はどこか泳いでいた。開口一番、彼は「売買代金が未収なんです...

封印された登録簿

封印された登録簿 封印された登録簿 その朝、蒸し暑さにうんざりしながら事務所の扉を開けた瞬間、電話が鳴った。妙に早い時間の電話に、嫌な予感しかしない。僕の予感は、十中八九、当たるのだ。 電話の主は市内の法務局登記官、三浦という中年の男だった...

最後のPDFは語る

最後のPDFは語る 朝の来客とUSBの忘れ物 朝一番、事務所のドアが乱暴に開いた。男はスーツのポケットを探りながら慌ただしく腰を下ろした。 「ちょっとだけ、話を聞いてほしいんです」と、それだけ言うとテーブルの上にUSBメモリを置いた。 机に...

登記簿に眠る死者

登記簿に眠る死者 朝届いた一通の封書 八月の朝は蒸し暑く、扇風機だけが事務所内で健気に働いていた。 そんな中、郵便受けに投げ込まれた一通の封書が、今日の平穏をあっさりと打ち破ることになった。 差出人は「相続代表人 田村」。しかし、添付されて...

未完の移転登記

未完の移転登記 朝イチの電話は静かに狂っていた 「先生、〇〇さんが亡くなったそうです」 サトウさんの言葉に、僕はしばらく理解が追いつかなかった。つい昨日、登記申請の最終確認で話をしたばかりの依頼人。その声が、もうこの世にないというのだ。 サ...

贈与の中に眠る罠

贈与の中に眠る罠 朝届いた一通の内容証明 朝のコーヒーに口をつけた途端、ピンポンとチャイムが鳴った。玄関先に立っていたのは郵便局の配達員で、手には内容証明郵便が握られていた。差出人の名前を見たとき、俺はコーヒーを吹きそうになった。 差出人は...

代理人は嘘をつく

代理人は嘘をつく 朝の着信と謎の依頼 眠気の残る声と妙な言い回し 早朝7時23分、固定電話の呼び出し音で目を覚ました。まだ半分夢の中で受話器を取ると、相手はやけに丁寧な口調の男だった。 「私、後見人を務めております〇〇と申しますが、登記のこ...

朝霧に消えた印

朝霧に消えた印 朝霧に消えた印 朝の始まりはいつも通りだった 午前8時半。外はまだ薄く霧が残っており、近くの山並みはぼんやりとかすんでいた。そんな朝でも、事務所の電気ポットは規則正しく湯を沸かし、サトウさんのタイピング音が静寂にリズムを刻む...

登記簿は語らない

登記簿は語らない 登記所の静寂に潜む影 朝一番の電話 司法書士事務所の電話が鳴ったのは、まだ朝の空気が眠っているような時間だった。眠気まなこで受話器を取ると、相手は地元の法務局に勤める登記官の一人からだった。「ちょっと変な依頼があってね……...

識別情報が残した影

識別情報が残した影 古びた封筒の中にあったもの 事務所の引き出しの奥から出てきた、茶色い封筒。くたびれた紙の質感に、なぜか胸騒ぎがした。差出人の名はなく、ただ「山田家 相続」とだけ手書きされている。封を切ると、中には登記識別情報の通知書が一...