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償いの登記簿

償いの登記簿 償いの登記簿 空の青さがまぶしい土曜の朝、事務所のポストに分厚い封筒が突っ込まれていた。差出人の名前は書かれていない。だが、手に取った瞬間、背筋にひやりとしたものが走る。封筒の隙間から見えたのは、古びた登記簿の写しだった。 僕...

重なるはずのない記憶と境界

重なるはずのない記憶と境界 ある境界トラブルから始まった 「土地の境界がズレているんですよ」と電話口の声が妙に食い気味だった。朝からプリンターが紙詰まりを起こし、封筒の糊も切れていた私は、つい「またか…」とため息をついた。地積トラブルなんて...

抹消申請された片想い

抹消申請された片想い プロローグ 書類のすき間に挟まれた違和感 登記申請書にまぎれた一通の手紙 午後の眠気が襲う中、山のように積まれた登記申請書をめくっていたそのとき、白い封筒が一通、書類の間から滑り出た。差出人不明、宛名もない。誰かのミス...

恋文は執行される夜に

恋文は執行される夜に 不意に届いた恋の書類 「執行文付与申請書」の文字に引っかかる 朝、事務所のポストに差し込まれていた一通の封筒。差出人は見知らぬ女性名、宛先は「司法書士シンドウ様」。茶封筒の角には「執行文付与申請書」と朱字で書かれていた...

登記簿にないひと言の謎

登記簿にないひと言の謎 朝一番の来訪者 午前九時、いつものように事務所のドアが重たげに開いた。寒さの残る春の空気が吹き込む中、地元では名の知れた不動産業者、沼田が現れた。いつも威勢のいい男が、今日はどこか落ち着かない様子だった。 「ちょっと...

境界に眠る未練

境界に眠る未練 はじまりは一本の電話 その日も朝から書類の山に埋もれていた。背中を丸めて登記簿とにらめっこしていたところに、一本の電話が鳴った。 市内の外れにある山林の筆界についての相談だった。依頼人は年配の女性。声の調子から、何かただなら...

隣の庭の死体

隣の庭の死体 隣地からの苦情 突然届いた内容証明 午後三時、事務所のファクスが不穏な音を立てて一枚の書面を吐き出した。差出人は、隣地に住むという男性。内容は「貴所が関与している土地の境界が越境している」との指摘だった。まるで火曜日のサザエさ...

登記簿が語る裏切り

登記簿が語る裏切り 登記変更依頼の朝 旧家の兄弟が訪ねてきた 静かな朝だった。コーヒーを淹れ、まだ机の書類にも手をつけずにいた時、事務所のドアが開いた。 中に入ってきたのは、スーツ姿の年配の男と、その後ろにやや小柄な男性。二人は兄弟だと言っ...

登記簿にない家

登記簿にない家 朝のコーヒーと奇妙な来客 午前9時。ようやくぬるくなった缶コーヒーに口をつけたところで、事務所のドアがきしんだ。誰かが訪ねてきた。予定はなかったはずだ。朝から雨も降っている。こんな天気に来る人間は、だいたいロクな相談を持って...

抹消登記は別れのサイン

抹消登記は別れのサイン 抹消依頼の女 その日、午後三時。事務所のドアが控えめに開き、一人の女性が入ってきた。白いブラウスにグレーのスカート、目元にわずかな影を感じさせる。名を告げることなく、机の前に立った彼女は、私に一通の封筒を差し出した。...

恋を証明した女の最後

恋を証明した女の最後 焼きたてのメロンパンと朝の電話 朝の事務所にはメロンパンの甘い匂いが漂っていた。買ってきたのはもちろんサトウさんじゃない。俺だ。コンビニの袋を見たサトウさんが「糖質、多いですね」とだけ言った。 その瞬間、電話が鳴った。...

締切日の静かな殺意

締切日の静かな殺意 登記申請書の謎 封筒だけが届いた朝 司法書士事務所のポストに、茶封筒がひとつだけぽつんと入っていた。差出人の名前はなく、消印も当日のもの。封を開けると、中には登記申請書が一枚、それと委任状の写しが入っていた。 妙なのは、...

登記簿が照らす影

登記簿が照らす影 午前十時の依頼人 古びた登記簿と怯えた男 僕の机の前に座っているその男は、まるで幽霊でも見たかのような目をしていた。 握りしめた封筒には、くしゃくしゃになった登記簿の写しが入っている。 「この土地、どうしても“何か”がおか...

私道の奥に潜む声

私道の奥に潜む声 登記簿の片隅にあった違和感 「この私道、持分が二人だけなんです」と依頼人は言った。だが、登記簿の端に小さな余白が残っていた。その空白に、私は妙なざらつきを感じた。 実務ではよくあるパターンだ。共有者の一人が亡くなって相続登...

消えた委任状と白い手袋

消えた委任状と白い手袋 午前九時の訪問者 赤いコートの女 その日、事務所の扉が開いた音でコーヒーを口に含んだまま振り返ると、そこにいたのは真紅のコートに身を包んだ女だった。肌寒い三月の朝、見た目には不釣り合いなほど薄着で、目だけがやけに鋭く...