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空欄の所有者

空欄の所有者 謄本の空白が招いた訪問者 不在者所有の奇妙な土地 午前10時。事務所のドアが開き、杖を突いた老人が入ってきた。顔色は悪く、何かに怯えるような目つきだった。 「土地のことで……ちょっと不安なことがありましてね」そう言って彼が差し...

まだ登記されぬ遺志

まだ登記されぬ遺志 旧家の空き家と一本の電話 名義人はこの世にいない? ぽつんと建つ古びた日本家屋。表題登記もされぬまま、何十年も空き家として放置されていたその家に、ついに買い手がついた。 登記申請の依頼が舞い込んだのは、月曜の午前中。だが...

謄本の行間に棲む者

謄本の行間に棲む者 朝の静寂と一枚の謄本 盆も過ぎたというのに、蝉の声は衰える気配を見せなかった。私はいつものように、机の上に山積みになった書類を前に、ため息をついていた。朝の静寂を破るのは、サトウさんが淹れたコーヒーの香りと、ガチャリと開...

登記簿に咲いた恋と虚偽申請の影

登記簿に咲いた恋と虚偽申請の影 登記所の静けさに紛れて 地方の登記所は、相変わらず時間が止まったように静かだった。書類をめくる音と、印刷機のかすかな動作音が響くのみ。ぼくはいつものように、コーヒーの冷めた苦味を舌の奥に感じながら、机に広がる...

抹消登記は別れのサイン

抹消登記は別れのサイン 抹消依頼の女 その日、午後三時。事務所のドアが控えめに開き、一人の女性が入ってきた。白いブラウスにグレーのスカート、目元にわずかな影を感じさせる。名を告げることなく、机の前に立った彼女は、私に一通の封筒を差し出した。...

登記簿に隠された秘密

登記簿に隠された秘密 事件の始まり シンドウはいつも通り事務所で忙しく働いていた。空気の冷たい朝、コーヒーを手にして机に向かうと、ひときわ目を引く封筒が机の上に置かれていた。封筒には「登記手続きに関する重要な書類」というタイトルが記されてい...

後見の帳簿は夜開く

後見の帳簿は夜開く 後見の帳簿は夜開く 書類の山に埋もれた午後 窓の外は夏の陽射し。だが僕の机の上は、まるで冬の山小屋のように紙とファイルに埋もれていた。 「先生、これ、今日中に見といてください」と塩対応のサトウさんに言われ、そっと目を背け...

印影は語る嘘

印影は語る嘘 朝の訪問者 玄関先の不機嫌そうな男 肌寒い朝だった。まだ暖房のスイッチを入れるには早いと感じながら、私は机に向かっていた。インターホンが鳴り、玄関に出ると、分厚い封筒を手にした中年の男が不機嫌そうに立っていた。 「実印が偽物な...

架空住所の資産家

架空住所の資産家 朝一番の固定資産税相談 サトウさんの冷ややかな一言 「朝から固定資産税の話か……胃が痛くなるな」 俺がそう呟くと、サトウさんはチラッと眼鏡越しにこちらを見た。 「司法書士の朝は早いんです。胃薬は引き出しの右です」と容赦ない...

消えた委任状と白い手袋

消えた委任状と白い手袋 午前九時の訪問者 赤いコートの女 その日、事務所の扉が開いた音でコーヒーを口に含んだまま振り返ると、そこにいたのは真紅のコートに身を包んだ女だった。肌寒い三月の朝、見た目には不釣り合いなほど薄着で、目だけがやけに鋭く...

登記簿にない家

登記簿にない家 朝のコーヒーと奇妙な来客 午前9時。ようやくぬるくなった缶コーヒーに口をつけたところで、事務所のドアがきしんだ。誰かが訪ねてきた。予定はなかったはずだ。朝から雨も降っている。こんな天気に来る人間は、だいたいロクな相談を持って...

登記簿の影に潜むもの

登記簿の影に潜むもの 午後の事務所に届いた一通の封筒 薄茶色の封筒と不穏な空気 午後三時。蝉の鳴き声がやかましい中、机の上に投げ込まれたのは、古びた地元の不動産会社からの封筒だった。封筒の中には、手書きで「登記簿におかしな記録があります」と...

朱肉に沈んだ真実

朱肉に沈んだ真実 依頼は静かにやってきた 封筒一つで始まる月曜の朝 事務所のポストに、少しだけ湿気を含んだ薄茶の封筒が差し込まれていた。差出人の名前はあるが、字体が妙にたどたどしい。 中には登記依頼書と簡単なメモ、それに古びた登記事項証明書...

登記簿にいない男

登記簿にいない男 登記簿にいない男 朝のコーヒーがまだ熱いままのうちに、玄関のチャイムが鳴った。依頼人だろうか、少し早すぎる。時計はまだ午前8時45分。9時きっかりを待たないのは珍しい。 俺が玄関に出ると、スーツ姿の中年男性が立っていた。口...

鍵を握るのは不動産屋

鍵を握るのは不動産屋 司法書士事務所に届いた不可解な相談 朝、雨が降りそうな曇り空のもと、一通の封書が事務所のポストに差し込まれていた。中には、印刷された一枚の簡素な手紙と、築50年を越える一軒家の登記事項証明書が入っていた。手紙には「この...